飲み会で自由に席移動できる人に憧れるが、なりたくはない

大勢の飲み会が嫌いだ。

盛り上がってる席とそうでない席ができてしまい、格付けされているような気分になるからだ。そして、私の周りは大抵が盛り下がっている。最終的に私の周りには誰もいないガラパゴス諸島が誕生する。「このままだと独自の生物に進化してしまう……」と心の中でボケつつ、冷えた唐揚げを口に入れている。新種の生き物 ハジッコ デ モリサガルの誕生である。

大勢の飲み会にいると、「俺たちは盛り上がってるぜ!みんなはどう?」と明るい人たちのコンサートを見させられてるような気分になってくる。

自分の席の周りが明らかに盛り上がっていないときが20代の頃から多々あり、「俺が悪いのか?」と悩み続けたが最近は諦めている。「私が悪いのではなく、私を活かせない貴様らが悪い」と周りのせいにすることにした。その方が気が楽だから。

あと、お酒を飲んでる人たち特有の「え?ソフドリ?」みたいなマジョリティが醸し出す空気感にも耐えられない。ダサいのは大学生の時点でアルコールに浸かりきったお前の脳みそだ。

これらの事象には10万字くらいの長文で悪口を書けるほど、恨みや鬱憤が溜まっている。しかし、こういった感情が生まれてくるのは嫉妬であり、憧れであるのは私も自覚している。私は高校生まで明るい少年だったので、真っ当にいけば飲み会で大暴れするような人間になるはずであった。大学生活さえうまくいっていれば……!

私が大勢の飲み会が苦手なのには理由がある。社会人になってからのとあるオフ会で心を折られたからだ。

当時20代前半の若造だった私は、とあるパーティーに誘ってもらう機会があった。50〜60名ほどの参加者がいるそれなりに大きいイベントだった。

当日、立食形式の飲み会経験などほとんどなかった私は、どこにいればいいのかわからず会場をオロオロとしていた。

さまようよろいのごとく会場を右往左往していると、パーティに誘ってくれた知り合いの顔をテーブル席に見つけた。私は迷いなくまっすぐそこに向かった。

あ〜、これで落ち着ける!!と思い、そのテーブルに座ろうと近づいた。

しかし、急にシャツの首根っこをグイと引っ張られ、

「お前にここはまだ早い」

と耳打ちされ、私は後方に押しやられた。私の首を掴んだ男はするりとそのテーブル席に入り込み、「いや〜!〇〇さんと会えてよかったですわ〜!ガハハ!」と大口を開けてゴマを擦っていた。

(あとで知った話しだが、その席にはインターネットの著名人などが何人か座っていたらしい。クソくだらねぇ。大人の飲み会は、「いえーい!俺らのメンツ最高〜!」と心から言えて、自分をルフィだと思ってる人たちが繋がる場所なのである)

私はその場で立ち尽くした。盛り上がってるテーブルを見て、怒りよりも悲しみよりも、ただただ虚しさが全身にまとわりついた。意味がわからなかった。なぜ初対面の男にあんなぞんざいな扱いを受けなければならなかったのだろうか。

私は気付けば会場の外にいた。

何も食べず、何も飲まず、男に首根っこを掴まれて嫌味を言われただけで6000円を支払った。

この出来事があった日から、もともと苦手だった大勢の飲み会をさらに嫌悪するようになった。大勢の飲み会が得意にはなりたいけれど、あの男のようにはなりたくないなと思ってしまう。

というか、今考えればであるが、30代以上の大人が「お前にここはまだ早い」ってセリフを吐いていると考えると笑ってしまう。天空闘技のヒソカかよ。今その男に出会ったら「うひょ〜〜〜〜〜〜!草すぎる人がいるんだがwwww」とめちゃくちゃテンションが上ってしまう。速攻でXに書き込むわ。【悲報】ヒソカさん、パーティ会場でイキってしまう

嫌な思い出ではあるが、個人的には良い経験だったなとは思う。もし、そのパーティで成功体験を積んでしまっていたら、「いえーい!俺らのメンツ最高〜!」と心から言い、繋がりをつくるのに夢中な大人になっていた可能性が高い。20代の失敗は貴重である。まあ、本音を言えばぶん殴りてぇけどな!!!!!!

ただ、やっぱり大勢の飲み会に慣れていきたい気持ちはある。なにせ仕事で行く機会があるからだ。今は参加しても辛すぎてすぐに帰ってしまう。私は知らない人と立食パーティで話す話題を持っていない。ファミレスで延々と、「ピザにパイナップルはありか?」みたいなくだらない話がしたい。ちなみに私は入れて欲しい。むしろ追加トッピングする場合もあるくらいだ。食べ物は甘ければ甘いほど美味い。

知らない人がいる飲み会でもうまく立ち回れるようになりたい。難しい。ハジッコ デ モリサガルの生きる場所は東京にはないのかもしれない。実家がある神奈川のガラパゴス諸島に大人しく帰るか……


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