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【Netflix】『セックス・エデュケーション』多様性に振り切った青春ドラマに出てくる大人たちのことを考える(後編)

前回の記事でテレビNetflixのテレビCMでも紹介されているイギリスドラマ『セックス・エデュケーション』のご紹介をさせていただきました。

今回は、予告させていただいた通り『セックス・エデュケーション』に登場する大人たちについて書かせていただきたいと思います。

基本的に物語の主軸は高校生の成長物語なので、出てくる大人は登場人物の保護者と学校の先生ですが下記人物紹介にはわたしの主観も入っています。

主なわたしが気になるメイン大人たちは以下(ネタバレします)

・ジーン

主人公・オーティスの母。オーティスの父とは離婚してシングルマザー。思春期の息子との距離感に悩んでいるものの息子に対する愛情は深い。心理学(?)の博士でセックスセラピストとして仕事をする傍ら、性についての著書などを執筆している。自身は性に奔放で基本的には特定のパートナーを作っていない。

・ヤコブ

オーティスの同級生オーラの父で、シングルファーザー。オーラの母とは死別。配管工として働き家の水道管の工事でジーンと知り合い、関係を深める。しかし奔放なジーンと保守的なヤコブで意見が対立することもしばしば。物静かなヤコブは明るい性格のジーンのとりこになるが、その性格の違いがのちのちの軋轢を生む。


・マイケル

オーティスたちの通う高校の校長。家庭でも学校でも厳格で一人息子のアダムにもきつく当たり、妻が自分の意向に従うのは当然と思っている。ある日妻に三行半を突き付けられ家を追い出される。それまでは、自分を間違っていると思っていなかったが、生育環境や妻や息子にしてきた今までの自分の行動を反省するもなかなか言動や行動に移せない。

・モーリーン

マイケルの妻。マイケルとのセックスレスを悩んでいたことをジーンに相談してから、ジーンと友人となる。無口で不器用なアダムが夫に厳しく当たられているのを優しく見守るも強くは言えない。夫のモラハラ的言動にも我慢していたがある日我慢の限界が来て夫を家から追い出す。


・ホープ

マイケルの後任でオーティスたちの高校の校長になる。自由な校風で話題になりがちな学校を保守的な考えのもと厳格に取り締まり、学校の信用を取り戻そうと奮闘する。

・エリン

メイヴの母。薬物依存症を克服できず、子どもたちに愛情を持ってはいるが、依存症克服できないためトラブルを引き起こし、家庭的にも経済的にも子どもを不安定な境遇で育てる羽目になる。


以上がメイン人物のご紹介。ドラマを知らない方はだいたい把握していただけると嬉しいし、ドラマをご覧になった方は顔を思い出していただると嬉しいです。

このほかに、学校の先生である比較的若い大人であるコリンとエミリーの二人や、個性的な娘の対応に苦慮するリリーの母。ゲイの息子のアイデンティティーは尊重しながらも母国の親戚には息子のことを隠すエリックの母、息子を一流のスポーツ選手にしたくて厳しくしてしまうジャクソンの母などが差し込まれますが、こうして並べてみるとイギリスのドラマでありながら「母ばっかりやな(笑)」となっている。わたし個人は性自認は女性なため、どうしても女性に感情移入しがちなので女性の話題になりがちなのはご了承いただきたいのですが、実際に作品に登場する大人に【母が多い】ということもまた事実ではあります。


オーティスの母のジーンは美人で明るくて太陽のような人です。心理学の権威でありながら息子との距離感が掴めないかわいらしいところがあってわたしは大好きです。しかし、性に奔放で特定のパートナーを作らないところと、息子をその知識で懐柔しようとするところを息子に嫌がられていますが思春期の反抗期としてはかわいいものだし、作品の中の役どころとしてはみんなの悩みをおおらかに受け止めるのが中心のシーズン2まででしたが、シーズン3では48歳での突然の妊娠に悩むことに。しかも別れることを決意したヤコブとの子。高齢出産で早産なのに自然分娩で生死の境をさまよったのには度肝抜かれました。イギリスでも帝王切開しないんだ・・・という驚きもありましたが、ドラマを観ている若者には出産は命がけということが伝わったのではないでしょうか。母を失うかもしれないというオーティスの恐怖が丁寧に描かれていました。

ジーンの恋人であるヤコブは作品自体が子供中心の物語なので、ものすごく大人でかっこよく見えます。実際吸い込まれそうな瞳の色で色気がすごいのですが、その傷つきやすい性格に今は若干イライラしていてめんどくさいなと思っている。わたしはどんなに見た目が好みでも「でも、顔が好みだから・・・」とはならないタイプなため、観ていて言いたいことがあるならはっきり言ってほしい感じにはなりました(笑)

ジーンとヤコブの二人を観ていて思ったのは、なんだろう、歩み寄れる部分もあると思うんだけど、【恋愛の相性は最高だけど、家庭を築くには向かない二人】という感じがします。決定的な価値観の相違がある二人です。出会った時点で若ければお互い妥協点みたいなものも見つけられたと思うのですが、色々経た後の大人の恋愛と結婚はものすごく難しいな、と。しかも子どもも生まれたばっかりで、子どもが巣立つ頃にはシニアになっているので恋人としてというよりも家庭としてやっていかなければいけない。「いつまでんも恋人のように」はロマンチックではありますが、家庭運営は話し合いとすり合わせと決断の連続です。価値観の違いはお互い補い合える部分もたくさんあるということですが、当然衝突も多くなる。シーズン3の最後に明かされた重大な事件のこともあり、どう解決していくのかわたしには想像もつかないですが二人だけの問題でいえば週末婚みたいなのが理想なのかなぁとも思うけど子育てワンオペはきついし。最終的な着地がどうなるのかまだ作品では描かれていないのでは気になるところです。


そして、新たな家庭やパートナーシップを模索しているジーン&ヤコブとは逆に【長く継続した家庭を崩壊させてしまった】マイケル&モーリーンの夫婦。マイケル自身も親や兄から虐待を受けており、自我をうまく築けず大人になってしまったことが明かされました。息子のアダムは心根は優しいものの学習障害のようなところがあり、さらに口下手で思っていることをうまく表に出せない性格。マイケル自身の教師としての自分の立場からも息子を過剰に厳しく育ててしまったことで、うまく感情を表に出せないアダムは家庭の反動か学内で暴力やいじめをすることになり、母であるモーリーンもそんな息子と夫の関係に悩みつつも結局は夫に従ってしまっていました。でも罪悪感もあった。息子の成長や変化とともに横暴で自分を女として見ない夫に不満が爆発し夫と別居とあいなりました。マイケルはマイケルで【夫】や【父】としての【義務】は果たしているつもりだったし、【妻】が自分を捨てるなどということは夢にも思ってなかった。妻のことを愛していないわけではなく愛情もそれなりにあったにもかかわらず表現してこず、妻の存在が当たり前になっていた。マイケルは家を追い出されホームレスになりいろいろな人と接っする中で、自分にも他人にも厳しすぎた自分の人生の過ちに気づき修正しようと試みます。だけど妻のモーリーンはマイケルのこと受け入れなかった。ちょっと意外だったけど、今はそれでいいと思いました。モーリーンは新しい人生の一歩を歩みだそうとしているし、そこにマイケルは不要だと判断している。そして、モーリーンはマイケルの息子に対する仕打ちを許してない。息子に対する件に関しては正直夫婦連帯責任だと思いますが、「反省して譲歩してるのに許さない方が悪い」みたいな流れになるの個人的に過去に傷つけた事実をなかったことにしようとしてるようで疑問なので、この二人も着地点がどうなるのか気になります。結果的にはよりを戻す気もするんだけど、どうなるかな。

そしてシーズン3で登場したホープ。冒頭の説明文でドラマを見たことないままこの記事を読んだ方、性別はどちらだと思いましたか。ホープは比較的若い女性なのですが、その比較的若い女性が高校生を自由から遠ざかったところでガチガチに締め付けようとするという意外性でした。ステレオタイプでいえば男性ですよね。確かに若い人にも男女かかわらず保守的な考えの人はいるし、その人の考え方や思想なんかは見た目で判断できない部分もあって目から鱗の気持ちでした。実際問題女性でも女性差別する人はたくさんいます。彼女は不妊に悩む女性でしたがそれは彼女の側面の一部で、学校の校長として学校を守ろうと奮闘もしていました。女性の生き方は、仕事、結婚、出産、育児など一側面に偏った見方をされがちですが、女性も男性も多面的な面があることを考えさせられました。


最後にメイヴの母、エリン。

薬物の依存症を克服できず、依存症治療のため子どもたちと引き離されている。わたし、個人的にnoteに恨みつらみを書いている通りヤングケアラーだったので、正直この親子を観ているのが一番つらいです。母のエリンは子供たちに愛情はあって、でも何か気に食わないことがあると娘を責める。そして「全部わたしが悪いっていうんでしょ」っていいつつ娘の人格を攻撃したりする。辛くて見てられない。見た目は大人っぽくてもまだ高校生の子どもなのに親子の立場が入れ替わる状況を強いられているのを見るのは過去を鮮明に思い出します。実際メイヴは人に甘えたり頼ったりするのが下手。逆は問題ない。母を見捨てられず、甘えたい気持ちがよくわかる。そんな風な気持ちを抱えて育ってしまったわたしが思うのは、メイヴの母みたいに子育てまで手が回らない母親たくさんいると思う。通常は夫が手を差し伸べるところだけど家みたいに父もダメだったりそもそもシングルだったり。そうなるともう個人では無理だから周りや社会が子どもを守るようにサポートするしかないなと思いました。わたし、母のお葬式のとき「ここにいる大人たち、ほとんどが父と母のやっていたことしらないし、知っていた人もいるけど誰も子どもを助けなかったな」って思ってたんですよ。時代はわたしが子どもの時と変わって日本でも虐待への目は厳しくなっているし、子どもが大人になるまでの間には親はそうそう変わらないし、一瞬改心したように見えてもダメだったりする。子どもの1年と大人の1年は時間の価値が違う。子どもは1年失ったら本当に大変です。幸いエリンには依存症を克服するサポートと子育てをかわってくれる里親がいる。日本でもそういうセーフティーネットがたくさんあることをもっと世に広めて、追い詰められている親側もそのことに気づきやすく、子のほうも助けを求められるようにもっともっと社会が追い付いていくといいです。


以上、最後は少し湿っぽくなってしまいましたが『セックス・エデュケーション』の大人たちでした。シーズン4では教師カップルの結婚がみられるかなぁー。お似合いだと思うので楽しみにしています。

海外ドラマのレビューはひとまず本家ブログに戻ります(笑)

それでは、また。

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