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コロナワクチンによる心筋炎の論文

こんにちは、今日は朝から曇りで雨もちらほら降ってます。
またコロナネタです。
新しい論文があったので紹介します。

Cytokinopathy with aberrant cytotoxic lymphocytes and profibrotic myeloid response in SARS-CoV-2 mRNA vaccine–associated myocarditis.
SCIENCE IMMUNOLOGY. 5 May 2023.

Scienceは3大学術誌の一つで、
Science ImmunologyもImpact Factor30超えです。


『Cell』、『Nature』、『Science』(CNS)は、現在世界のトップの学術誌とみなされ、掲載論文も基本的に関連分野のトップの研究成果を代表している。

題名を直訳すると、
SARS-CoV-2 mRNAワクチン関連心筋炎における異常細胞傷害性リンパ球と線維化進行性骨髄応答を伴う細胞変性」
というところでしょうか?
ちょっと専門的すぎて何をいっているかわかりにくいんですが、
一流雑誌にまで「mRNAワクチン関連心筋炎」という言葉が普通に載るようになったんだなあと、感慨深いです。

内容も難しいのですが、
以下要旨のみをかいつまんで紹介します。

SARS-CoV-2 mRNAワクチンなど、ワクチン接種後にまれに免疫介在性の心筋組織炎症が起こることがある。しかし、この病態を引き起こす根本的な免疫細胞および分子機構は、まだ十分に理解されていない。ここでは、SARS-CoV-2 mRNAワクチン接種直後に、トロポニン、B型ナトリウム利尿ペプチド、C反応性タンパク質の上昇や心臓画像異常を伴う心筋炎や心膜炎を発症した患者群について調査した。

ワクチン一般でまれにおこりますよ、という前置きですが、
mRNAワクチン接種後の心筋炎症例の検討です。
23例の心筋炎・心膜炎の症例での検討です。
87%が男性、平均年齢16.9歳(13~21歳)と若年男性が多いようです。


初期の仮説に反して、患者は過敏性心筋炎の特徴を示さず、免疫過剰の液性メカニズムに一致するSARS-CoV-2特異的または中和抗体反応の免疫過剰を示さなかった。さらに、心臓を標的とした自己抗体の証拠も見つからなかった。
その代わりに、インターロイキン(IL-1β、IL-1RA、IL-15)、ケモカイン(CCL4、CXCL1、CXCL10)、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP1、MMP8、MMP9、TIMP1)が上昇した。

トロポニン、C反応性蛋白(CRP)、B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の上昇を認め、心電図、心エコー、心臓MRI(CMR)で異常所見がありました。症状軽快し、退院2か月以上してから再度CMRを行っています。
コロナ関連の抗体検査等では、健康なワクチン接種者と比較して、特に変わりないようですが、免疫系の検査では上昇する項目があったようです。

細胞障害性T細胞およびNK細胞の活性化の拡大が明らかになった。さらに、炎症性および線維化進行性CD163+単球の特徴を示し、血清可溶性CD163の上昇と相まって、心臓MRIにおける後期ガドリニウム増強(LGE)に関連していると考えられた。


→がLGEの所見(左:急性期、右:回復後)

ここも難しいですが、免疫細胞の活性化があり、心臓MRIの検査でLGEの異常に関連していることがわかったそうです。
LGEとは、「遅延造影MRIにて高信号を示す部位で線維化と関連している所見」のようです。
「LGEの有無と広がりは、肥大型心筋症の突然死および心臓死および全死亡と強く連関している」という報告もあります。

これらの結果から、炎症性サイトカインおよび組織障害能力を有するリンパ球の発現が増加し、サイトカイン依存性の病態が示唆され、さらに骨髄系細胞に関連した心筋線維化を伴っている可能性があることがわかった。これらの知見は、mRNAワクチンによる心筋炎について、これまで提唱されてきたいくつかのメカニズムを否定し、ワクチン開発や臨床治療に関連する新たなメカニズムを指し示すものであると考えられる。

「中和抗体による異常反応」というよりも、
「炎症性サイトカイン、細胞障害性リンパ球が増えて障害をおこす」
という結果のようです。

ここで疑問ですが、

①若年男性に多い理由は?

 心筋の量が多いから?
 骨格筋ならともかく、13歳の子供の心筋量が特別多いとは考えにくい。
 若年男性は運動など活動量が多いので症状がでやすいのでしょうか?

②発症する人としない人の違いは?

 若年男性は危険?
 若年男性の中でも稀なようですが、
 発症した人はたまたま?

③コロナ後遺症の方の中には、心臓MRIで所見がある人もいるのでは?
 
 この研究では、退院2か月後も心臓MRIで、
 LGEの所見が残っていることもあるそうです。
 日常の臨床での検査では、心臓MRIはめったにしないのでは。
 (まず保険適応なしと査定されるので気軽にはできません。)

LGEなんかは、
すぐ結果でそうなので、
これからいろいろと新しい論文が出るかも。


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