デング熱について。その②。

すっかり朝晩冷え込んできた今日この頃です。
通勤には快適な気温になっています。

前回から引き続きデング熱です。

Denque and sever Denque.
WHOより

感染経路
ウイルスは感染した雌の蚊、主にアカイエカに刺されることでヒトに感染する。アカイエカ属の他の種も媒介することがあるが、アカイエカに比べれば二次的なものである。
蚊はDENV(デング熱ウイルス)に感染している人から感染する。これは、症状のあるデング熱感染者、まだ症状のない感染者、同様に病気の徴候を示さない人(無症状者)を含む
ヒトから蚊への感染は、病気の症状が出る2日前から熱が下がってから2日後までに起こる可能性がある。
蚊による感染のリスクは、患者のウイルス血症が高いことと高熱に正の相関があり、逆にDENV特異抗体が高いことは蚊による感染のリスクを低下させる。ほとんどの人のウイルス血症は約4~5日間だが、12日間も続くことがある。

デング熱にかかった人の血を吸った蚊が媒介します。
グローバル化が進み、流行地域から、
飛行機などで短時間で往来する人が増えているのも、
世界的な感染増加の一因でしょうか。


危険因子
DENVに感染したことがあると、重症デング熱を発症するリスクが高まる。都市化(特に非計画的)は、人口密度、人の移動、信頼できる水源へのアクセス、貯水習慣など、複数の社会的・環境的要因を通じてデング熱感染と関連している。デング熱に対する地域社会のリスクは、デング熱に対する住民の知識、態度、慣行、地域社会における日常的で持続可能な媒介蚊対策活動の実施状況にも左右される。その結果、熱帯・亜熱帯地域の気候変動に伴い、疾病リスクも変化・移行する可能性があり、媒介虫も新たな環境・気候に適応する可能性がある。


デング熱ウイルスには、
4種類の異なる血清型(DEN-1、DEN-2、DEN-3、DEN-4)があり、
それぞれの型が密接に関係しています。



ひとつの血清型のウイルスに感染して回復すると、
その血清型への免疫力が生涯にわたり続きます

しかし、回復後、他の血清型への交差免疫は部分的かつ一時的となります。他の血清型ウイルスに続けて感染すると、
重症型のデング熱になるリスクが増加
します。
(厚生労働省検疫所より)


デング熱にかかって、治った後の回復期の間に、
たまたま違う型のウイルスに、
もう一回かかると危険なようです。



予防と対策
デング熱を媒介する蚊は日中活動しています(昼行性)。以下の方法で蚊に刺されないようにし、デング熱にかかるリスクを減らしましょう:
・体をできるだけ覆う服装
・日中寝る場合は蚊帳を使用し、虫除けスプレーをかけた蚊帳が理想的。
・窓の網戸
・蚊取り線香(DEET、Picaridin、IR3535を含むもの)
・コイルや気化器

デング熱に感染したら、以下のことが重要です:
・安静にする
・水分を十分にとる。
・痛みにはアセトアミノフェンを使用する。
・イブプロフェンやアスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬は避ける
・重篤な症状に注意し、気づいた場合はできるだけ早く受診する。

現在までに1種類のワクチン(Dengvaxia)が承認され、一部の国で認可されています。しかし、このワクチンで予防できるのは、過去にデング熱に感染した形跡がある人のみです。この他にもいくつかのデングワクチン候補が現在評価中です。


蚊帳とかは最近は見かけませんけど、
蚊が多くいそうな所に外出するときは、
虫よけスプレーとか準備しましょう。


ちなみに、
Dengvaxiaは弱毒化した生ワクチンであり、
その作用機序は4種のデング熱ウイルスに反応して免疫応答する。
感染例のない人への投与はデング熱の重症化のリスクを高める可能性があるため使用が制限される。投与法は1年に3回の注射である(Wikipedia)。


今回のQDENGAも4価弱毒生ワクチンのようですけど、
感染歴などのチェック不要です。
NS1抗原(重症化に関連)に着目しているのが、
従来と違う点でしょうか?


Dengvaxiaで有名なのは、以下の事件です。
62人死亡? 比デング熱ワクチン導入の“失敗”:毎日新聞より

2016年4月、フィリピン保健省は一部の地域の公立学校に通う約73万人の子供に対し、デング熱ワクチンの接種を開始しました。この時点ではまだ世界保健機関(WHO)が正式に推奨しておらず、これが導入反対派の理由のひとつでした。約3カ月後の7月、WHOはこのワクチンを条件付きで推奨することになります。ところが、ワクチンをうった子供がデング熱に感染すると重症化し、なかには死に至るケースが相次ぎました。サノフィ社は「Dengvaxiaをデング熱ウイルスに感染歴のない子供に投与すべきでない(詳細は後述)」と発表しました。これを受けて、フィリピン保健省は2日後の12月1日、直ちにこのワクチンの予防接種プログラムを停止しました。 同時に、ワクチンの販売を中止しました。すると、その4日後の12月5日、今度はWHOがワクチンの中止を決定したフィリピン政府を支持すると発表しました

今回のQDENGAは、
4-16歳の健康な子供2万人に、
3年間の第3相試験を行ったようですけど、
実臨床では、(未診断の)健康ではない子供も含まれるでしょうし、
2万人どころではない人数が対象になるかもしれません。
Dengvaxiaの件を考えると、
ちょっと、お勧めする気にはなれません。


なぜディズニーランドには蚊がいないのか。日経ビジネス。
2019.5.31なんて記事もありましたけど、

蚊に刺されないようにするとか、
ボウフラが発生しないようにするとか、
環境整備に力を入れる方が健全な気がします。


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