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だいぶ前の就職活動日記 | 読書日記「やりがいのある仕事」という幻想

「仕事のやりがいを人生の充実と捉えない」
この前見ていたYouTubeでそんな議論をしていた。

そりゃもちろん仕事にやりがいがあった方がいいとは思う。だって1日の三分の一以上の時間を費やしているんだから。

でも、どうも全ての人が仕事でやりがいを見出せる訳ではないらしい。大いに運もあるし、遺伝や素質、環境などさまざまな要因が関わってくる。

だから人生の充実を仕事だけに求めるのではなく、なんでもいいから充実感を感じられる活動に出会うことができればそれを大切にする。そういうもので人生が充実するのではないか。仕事だけが人生ではないのだから。なるほどと私は思った。

この本はそんな仕事を初めて選ぶ、就職活動に向かう学生に向けた一冊。

世の中の情報の捉え方について、「どうなるのか」を見ようとする人は少なく、実は「こうあって欲しい」という願望を探しながら見ている人が多いという視点は実に上手いところをつくな、と感じ入る。

たしかに自分に都合の悪いことは目を逸らしてしまうもの。だからこそ自らを律して冷静な目で見て、ありのままを受け入れられるかが大事と説く。

また仕事で人間の価値が決まるものではないという一言は、自分が就活の時に出会っていたら気持ちが救われたかなと思った。でも一方でさらに考えさせられていたかもとも思う。

ここから思い出話を長々と綴りたい。

私は就職活動の終盤、ゼミの教授から推薦をいただいた地元の企業か、それとも自分で探し出し選考の結果内定をもらった東京の企業の二択になった。地元の企業は老舗企業かつ私の希望する職種、一方で東京の企業は希望する職種ではなかった(あなたの英語力では無理とキッパリ言われた)。

親からは当然の如く地元の企業を勧められた。そもそも教授のお墨付き、加えて企業規模も大きい。まあ今振り返ってもこっちの選択が妥当だと私も思う。

でも20代の自分は、生意気ながら将来を誰かに決められるのが嫌だった。さらに東京の企業は自分で調べたという愛着があり、面白そうだと思えたし、面接を通じて何かしら自分が合格ラインに達するものを感じてくれたという手ごたえがあった。

あとはなんといっても東京という新天地で一からスタートを切れるというワクワクがあった。

ざっくり言えば、手堅くいくか冒険するか。
結果、私は冒険する方を選んだ。東京の企業に内定受理の返信をし、地元の企業に丁重にお断りをして推薦してくれた教授にひたすら謝った。

こっちを選んだのは2つの後押しもあったから。
一つは当時お世話になっていたキャリアセンターの方が、「うちの大学には資料のない企業だから良くわかんないけど、東京にいってチャレンジするのもいいんじゃない?」と軽めに応援してくれた。その軽さが東京に行くハードルをぐっと下げてくれた。

もう一つは親父のアドバイス。それまで私の進路について全く興味も示さなかったし口出しもしなかった親父が就職に関してはアドバイスした。
「まあ、ダメだったら帰ってくればいいんだから、やってみたら?」と言ってくれた。そっか、それだけのことか、とこれも悩みの度合いをぐっと下げてくれた。

実は東京に憧れを持っていたのは親父の影響もあった。親父が学生時代に東京の大学で下宿生活をしていた、ということを知っていて、頭の片隅に自分もいつか東京で生活してみたい、という思いもあった。

そんな形で選んだ東京の企業。当初希望の職種には内定が決まっていた人がいたし、内定の際にはっきり「あなたの英語力では無理」と言われていた。
しかし、その人が卒業間近で内定を辞退。入社後それを知り運良く希望していた貿易の職種に就くことができた。それから16年経った今もおかげさまで好きなフィールドで働いている。これもいろいろな運による。運、大事だな。

この選択が本当に正しかったのかどうか?
自分の歩んできた道だったり選択は「良いもの」として美化してしまうから正直なところ分からない。

ただ大学四年生の内定をもらってから返事をするたった数週間だけど、一日中自分の進路のことを悩んだり考えたりできる時間。これはかけがえのない時間だったのではないかと振り返る。働き出したらなかなか自分の今後のことを考えることに没頭する時間をとるのが難しくなるし、走り出したら真っ新な状態で考えることが出来ない。ともあれ、今この選択をしたことに後悔はない。

学生から社会に踏み出すというまさにゴールデンタイムに、一旦真っ新なところから自分の価値を考え直す機会を持つ。これは大変な作業だけど長い社会人人生を考えると貴重だったな、とこの本を読みながら思い出した。

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