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【ポイントは2つ】麻酔導入直後の呼吸器設定

昔、人工呼吸器がなかった頃
麻酔中は麻酔科医がずっとバックをもんで「手動で」換気をしていました。
今はこれを自動でやってもらうわけです。

その為には指示(呼吸器設定)をしなければなりません。

挿管直後の人工呼吸は「とりあえず」の設定でOKです。

なぜなら呼吸器設定はバチっとはじめから決まるものではないからです。
患者さんの状態をみながら調整していきます。

とりあえずスタートしてみて、それから調整をする。

初期設定で人工呼吸器をはじめたら、
麻酔科医はその間に必要な作業をします。
挿管チューブのテープ固定をしたり、胃管をいれたり、メパッチをはったり、、。
一通りのことをやっている間に人工呼吸器の調整をする必要がでてくるので、そこで改めて調整します。

「とりあえず」の設定として、見るべきポイントは2つです。

どのくらいの力加減で換気をするのか?
酸素濃度はどうするのか?

です。
それぞれ考えていきましょう。

この記事は約1500文字、2分半 程度で読めます。


15cmH2O以下にPmaxを設定する。

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人工呼吸器には大きく分けて2つの換気モードがあります。

従圧換気(PCV)
従量換気(VCV)

詳細は教科書に譲ります。
モードはなんでも構いません。
過剰な圧がかからない設定にするのが大事です。

理由は2つあります。

肺胞のストレスになる
胸腔内圧があがって静脈還流量が減ってしまう

呼吸にも、循環にも悪影響だからですね。

では、過剰な圧とは具体的にどのくらいのことでしょう?

結論はありませんが、
この初期設定を決めるにあたって、私の考え方を示しておきます。

tweetをひとつ紹介します。

マスク換気は15cmH2Oを超えないように、という内容です。

人工呼吸器は挿管後に使うのが一般的ですが、
マスク換気のときにも使えます。
決められた圧と回数で換気するのは大得意。
優秀なマスク換気の助手がついているようなものです。
ちょっとマスク換気が難しい患者さんではバックをもむ係は人工呼吸器に任せて、
麻酔科医は気道確保に専念する考え方もあります。
あいた手を使ってtriple airway maneuverができます。

以上のことをふまえて、
私は成人の特別なことがない症例では

PCV Pmax12 f15 I:E=1:1.5 PEEP5 

で設定しています。

これでマスク換気が難しかった場合でも
すぐに人工呼吸器に切り替えて対応ができます。

患者さんによっては換気量が少なくなるかもしれません。
が、圧が高くなりすぎることはない。
量は呼吸回数でカバーする。

という考えです。

問題があれば、落ち着いたところで変更すればいいのです。

肺高血圧や脳圧上昇などで
厳密なPO2、PCO2の管理が必要な症例ではこの限りではありません。
アドバンストな内容なのでこの記事では割愛します。


吸収性無気肺を防ぐため、酸素濃度を40%程度まで下げる。

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なぜ酸素濃度を下げるのでしょう?
高濃度酸素が肺胞障害をきたすのは有名な話です。
活性酸素の発生、アラギドン酸代謝産物の増加、腫瘍崩壊因子の増加などで肺胞障害を起こします。

理由をもうひとつ。

「吸収性無気肺」

を知っていますか?
麻酔・集中治療領域でしかでてこない概念だと思います。
解説したtweetがあるので貼っておきます。

酸素化を良くするために投与した酸素。
それが無気肺を作ってしまうなんて、皮肉な話です。

具体的な酸素濃度に答えはありません。
私は手術室退室時の酸素投与が40%のことが多いことから
それに合わせています。


まとめ

●麻酔導入直後の呼吸器設定は15cmH2O以下となるように設定する。
●吸収性無気肺を防ぐため、酸素濃度は40%程度まで下げる。
●とりあえず人工呼吸をはじめてみて状況を見ながら設定変更する。

最後までお読みいただきありがとうございました!
また次回もよろしくお願いします。


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