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書籍紹介『授業のユニバーサルデザイン入門』

『授業のユニバーサルデザイン入門(小貫 悟/桂 聖)』という本の紹介です。授業のユニバーサルデザインがこんがらがってわからなくなっていたときに職場の先輩が貸してくれた本です。読み終わってからすぐに買いました笑。

教育のユニバーサルデザインってなんだ?

ユニバーサルデザインはよく耳にする言葉ではないでしょうか。代表的なのがジャンプーのボトルにあってリンスのボトルにはないギザギザでしょうか。

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(画像はHUFFPOSTより)

ユニバーサルデザイン(UD)とは、文化・言語・国籍や年齢・性別・能力などの違いにかかわらず、出来るだけ多くの人が利用できることを目指した建築(設備)・製品・情報などの設計(デザイン)のことであり、またそれを実現するためのプロセス(過程)のことです。

そして、そのユニバーサルの概念は教育にも取り入れられています。教育のユニバーサルデザインは、授業、教室環境、人的環境の3つの要素からなります。

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(画像は日本授業UD学会湘南支部より)

一般に教育のユニバーサルデザインと聞くと、アメリカのTEACCHプログラム(自閉症及び関連するコミュニケーション障がいをもつ子どもたちのための治療と教育)の構造化などの支援を思い浮かべるかもしれません。僕自身も曖昧な理解だったのですが、それはあくまで学習環境のユニバーサルデザインで、授業のユニバーサルデザインとは違うのだと言うことをこの本は気付かせてくれました。

ちなみに人的環境のユニバーサルデザインについては以下の記事で紹介しています。

授業のユニバーサルデザイン化

では授業のユニバーサルデザイン化とはなんでしょうか。下にモデル図を示します。

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(画像は福岡市立城香中学校 学級経営方針より)

参加(活動する)、理解(わかる)、習得(身につける)、活用(使う)の4つ段階があり、それぞれの段階で授業でのバリアを生じさせる発達障がいのある子の特徴とそのバリアを除く工夫が示されています。

「視覚化」「焦点化」「共有化」などのその工夫は聞いたことがあるかもしれません。これらは学習環境のユニバーサルデザインとも関連しますので、僕も混同していたのですが、授業をデザインしていく上で大事なのは、学んだ知識や技能の活用だと思います。

「どんなことを習得して、どんな場面で活用するのか」から授業の山場を決めて(焦点化)、子どものつまずきを想定してた指導の工夫や個別の配慮をし、子どもたちが興味を持って知りたいと思う、そしてわかったと思うように、導入も含めたしかけを考えていく。そんな本質を捉える授業づくりの話を聞いてわくわくしてきました。

桂 私は、授業の山場を最初に決めます。最終的な落としどころですね。それに加えて私が考えていることは、そこでいかに強く落とすかということです。子どもたちが「今まで話していたことは結局そういったことだったのか」と思えるように、山場を印象深くしたいんです。そのためには、授業の導入をどうするかということに気を配ります。大人でも子どもても、人間っていきなり難しいことを言われると理解できなかったり、拒絶反応を示したりしますよね。だから、簡単なことから関心をもたせて山場に向かうというのは、例のハーバード大学の講義なんかと同じかもしれませんね。
桂 わからない子がいるということは、自分の授業を見直すチャンスでもあるんです。「こんな活動をすると戸惑うんだ」とか「同じ指示をする時でも、こんな言い方をすれば子どもたちが動きやすいんだ」とか、私の授業スタイルの多くは、子どもから学んだことです。子どもたちの反応をもとに授業の改善をしていくのが、私のスタイルです。
小貫 特別支援教育の発想も同じです。まず子どもありきなんです。目標から計画、内容、カリキュラム自体まで子どもの実態に合うように変えていくわけです。本来は、この発想を教科教育にいかせばいいんだけど、そんなことできないと思って諦めているから、一人くらいわからなくても仕方がないということになっているわけです。でも、桂先生は、工夫次第で全員をカバーできますよ、と示してくれたわけです。
「習得」「活用」するために「論理」を教える

桂 確かにその通りです。物語文でも説明文でも、内容理解に終始した授業は多いです。でも、そこでとどまっていたら、「ごんぎつね」の内容はわかったんだけど、「それでどんな読み方がわかったの」と聞かれても答えられないということになるんです。昔から言われている「教材を教える」のではなく「教材で教える」ということが大切なんですが、なかなかできていませんね。
小貫 特別支援教育では読み書きだけできればいいじゃないかということで、内容理解まで踏み込めていないのが現状です。どうやって内容理解まで踏み込んでいくかは手つかずになっています。

この本に散りばめられた授業のユニバーサルデザインを表す言葉や桂先生の授業を読むと、それまでとは違う目線で授業のユニバーサルデザインを見て、考えている自分に気付きます。それまで読んでいた本の内容が一気に繋がったのです。

この本を読んでから授業のしかけづくりの妄想がどんどん広がっていきます笑。ユニバーサルデザインの本質を教えてくれるおすすめの本でした。



表紙の画像はAmazon.co.jpより引用しました。