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書籍紹介『キミヤーズの教材・教具 知的好奇心を引き出す』

『キミヤーズの教材・教具 知的好奇心を引き出す(村上 公也/赤木 和重)』という本の紹介です。

この本はTwitterで紹介されているのを見かけて購入しました。

読んでみて…その内容は、衝撃の一言でした。

一見するとわけのわからない、イロモノと呼ばれてもおかしくない教材・教具の数々。そして毎度仮装姿の村上公也先生…でも読み進めていくと止められなくなる。

その理由はいくつかあるのでしょうが、僕が思うのは面白い授業づくりへのあくなき探究心です。

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(画像はこくちーずプロより)

特別支援教育では、子どもの障がい特性に配慮した、シンプルでわかりやすい構造化などの側面からの授業づくりの実践があふれています。

なにをするのかが子どもにわかる、それはそれでいいのでしょうけれども、じゃあその整えた環境で同じドリルを繰り返し続けることが本当に良いことなのでしょうか。

…現在、「障害特性に応じた教育」の重要性が盛んに言われています。自閉症の障害特性(視覚優位・他者の心の理解の困難さなど)を踏まえて教育を組み立てる必要性が指摘されていますし、そのような視点から多くの実践が行われていますり確かに、障害特性をふまえることは重要です。しかし、一方で、子どもの視点からみた場合、違和感を覚えてくるのも事実です。
 子どもは、障害特性を配慮されたくて学校に来ているのでしょうか。なかには自分の障害をわかってほしいと思って来ている子どももいるかもしれません。しかし、そういった子どもも最終的な目標はそこではないと思います。どの子どもも、おもしろい授業を受けたいし、勉強をしっかりがんばりたいと思っているはずです。当然、教師もそうです。子どもが目を輝かせるような授業をしたいとすべての先生が思っているはずです。そんな素敵な授業をするために、障害特性や発達段階に配慮するのでしょうし、TEACCHやABA、RDI、SCERTSなどから指導技法を学んでいるんだと思います。ところが、障害特性や発達段階で指導技法を学んでいるうちに、いつの間に家実践の基本単位が逆転してるような印象を受けます。

そうではなく、子どもたちが楽しみながらいろいろなことに興味を持つ、発見するためのしかけに溢れているのが村上流、この本にはそんな魔法が満載です。

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(画像は京都大学 こころの未来研究センターより)

等身大の自分自身のレプリカ「もうひとりの自分」、先生と子どもが同じ立場で第三者の判定を待つ「ピンポン先生」、シンプルな教材の進化を体感できる「ローテーションカード」、ビニール袋に入れると範囲が限定できてわかる?!「見えない積み木」、長音を学ぶチョーンゴムや語尾の入ったごび箱などの「見える文法」、視覚的なイメージから広げ、子どもたちがストーリーを語る「創作熟語」、よく見なさいを具体化する「指さし帽子」と「魔法の賢くなる双眼鏡」、子どもにゾッとした怖さをつたえる天井裏妖怪「なめはち」など、読んでるだけで訳の分からない、でもなぜか引き込まれる教材がたくさん紹介されています。教材の紹介だけでなく、赤木先生の解説を読めばその気持ちはさらに深まります。

支援学校では、どうしても卒業後の働くことや生活することが取り上げられ、そのために必要なスキルを身につける、言い換えると「できるようになる」という側面が大きいのではないかと思います。もちろんそういった視点も大切です。

でも、そうではなく、「どうすれば子どもたちが楽しんで学び、発見するのか」を突き詰めた授業づくりをしていくこと、そうしてやらされるのではなく「自ら学ぶ意欲を引き出す(そのためにこちらが工夫を重ねていく)」こと、そして「子どもたちが楽しみながら考えていくこと」の積み重ねこそが、「できること」へとつながっていくのではないでしょつか。

百番は一見にしかず、僕の言葉ではこの本に掲載されている知的好奇心を引き出す魔法のしかけをうまく伝えることができません。ぜひ手に取って読んで欲しい一冊です。

村上先生と赤木先生はキミヤーズ塾というイベントも開催されています(パンフレットを見るとこの本のイメージがわかるかもしれません笑)。案内はブログでもされていますので、覗かれてみてはどうでしょうか。

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(画像はキミヤーズブログより)

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(画像は小田原短期大学より)




表紙の画像はAmazon.co.jpより引用しました。