サッカーにおける審判とは

息子がサッカーチームに入ったのが年長さん。それから6年以上の月日が流れ、いつしか居住地のチーム・川崎フロンターレ、妻の地元のチーム・大分トリニータ、自分自身が青春時代を過ごした場所のチーム・ファジアーノ岡山を追いかけるようになった。そして、自分は4級サッカー審判の資格保有者でもある(もう笛を吹くことはないけど)。

息子が小学生の時、公式戦に出るためにはチームから審判を出さねばならず、町クラブは、保護者が有志で審判を務めるところが多い。サッカー経験がほぼない自分も、資格を取得した。

練習試合の審判、というのはとても気が楽だ。特に低学年の頃は。しかし、公式戦ともなると訳が違う。周りには全然知らないお父さんお母さんが応援に駆けつけている。自分は審判服を着てジャッジをしなければならない。外から見ているお父さんたちからは「オフサイド!」とか「ファール!」とか「服引っ張ってるよ!」といった声が飛んでくる(悪気があるわけではない)。学年が上に上がると、4審制の公式戦が増えるが、低学年の時は1審制で行われることもある。不思議なのは、6年制の県大会、準決勝・決勝だけなぜか1審制。その上の全国大会もなぜか1審制だったりする。特にオフサイドは取りづらくなるので、審判目線から見ても副審を入れるべきだと思うのだが・・・まあ、その辺は何か理由があるのだろうから置いておこう。

さて、なぜサッカーの審判についてつらつら書いているかというと、サッカーの審判に対する見え方が、本当に大きく変わっているからだ。これには、2つの大きな理由がある。1つはDAZNの登場。もう一つは、VARの導入。

DAZNの登場に関しては、言わずもがなである。現地で観戦していても、ハーフタイムなどに気になるシーンを誰でもプレイバックできてしまう。しかも何度も。これまでのサッカーは「ミスジャッジも含めて」サッカーだった。しかし、DAZNがそれを許さなくなってきた。これはDAZNが悪い、といっているわけではないので誤解して欲しくない。DAZNが日本でローンチされる前から、例えばスマホで撮影された動画がネットに上がったりしていたわけで、そういった意味ではインターネット、SNS、スマホの普及、といった方がいいのかもしれない。

もう一つ、VARの導入。今シーズン、Jリーグに関しては第2節以降はVARが入っていない(密を避けるため)。このVAR、ミスジャッジを全て是正するシステムではない。VARが介入するのはいくつかの条件が存在する。

しかし、VARはあらゆるジャッジをチェックする、というような感じになってしまっていないだろうか。上の動画を見てもらうとわかるが、VARが介入できるのは限定的である。とはいえ、得点に関わるジャッジ(オフサイドやボールがラインを割ったかどうか)に関してはVAR介入対象なので、どうしても「VARがあったら・・・」という思いを抱いてしまうことはあるだろう。

我らが川崎フロンターレは、第1節、サガン鳥栖戦でレアンドロ・ダミアンのシュートが一時ゴールと判定されたが、VARのゴールチェックでオフサイドと判定、ゴールが取り消された。一方、VARが入らなくなった第2節、鹿島戦の先制点は、おそらくDAZNで見ていたほとんどの人(川崎サポも含め)が、「あ、オフサイド」と思ったはず。「運」で片付けるのはもちろん納得いかないだろうが、運が悪かったと思ってもらうしかない。

もちろん、審判の方々には、しっかりとジャッジしていただきたい。見るべきところをしっかりと見て、ジャッジする。それが審判。さっきのオフサイドのところも、明らかにオフサイドだった。こうしたジャッジがあると、その後のジャッジに関しても、例えば「川崎寄りだ」といったバイアスがかかってしまうことになりかねない。これは、審判団にとっても、実際にプレーする両チームにも、サポーターにも良いことは一つもないのだ。

しかし!ここからが本題。サッカーの審判って、本当に難しいのだ。僕は4級審判として小学生(2年生くらい〜6年生)の試合をジャッジしたことがある。小学生のサッカーの審判でさえ、色々と難しいことがある。まずはファウルの基準。こんな基本的なことさえ難しいのだ。そして、先ほども出てきたオフサイド。攻撃側の選手がシュート、これを守備側キーパーがブロック、攻撃側の別の選手が押し込んだ。こんなシーンのとき、最後に押し込んだ攻撃側の選手が、最初のシュートのとき、どこにいたのか、正直覚えてないことが多い。

ある公式戦で、副審を担当したのだが、自分とは反対側のエンドでセットプレーからゴールが決まった。しかし、決められた方の監督が激昂し、「オフサイドだろぉ〜!キーパーの前に選手がいただろ〜!何見てんだ〜!」と怒鳴り散らしてきた。ふむふむ、オフサイドポジションにいた選手がキーパーの視界を遮った、というオフサイド反則・・・いやいや、そんなの、本職でもない審判が見れますか??なかなか見れないですよ?もちろん見るべきなんでしょうが。でも、そこは審判に対してのリスペクトを持って、やって欲しい。こういった、ジャッジに対する意見、というのはコーチが「?」と思うこともあるのは確か。その対応で、その人が見えてくることは多々ある。別の試合で、大きく蹴り出したボールがバウンド、守備側キーパーもブロックに行くのと同時に攻撃側の選手が足を出した結果、キーパーはブロックもキャッチもできず、相手ゴールとなった。決められたチームのコーチは、「ハイキック」の反則をアピール。副審をやっていた自分も、「あ、ちょっと危ないプレーかな?」と思った。しかし、主審は笛を吹かずゴールを認めた。ハーフタイムに、決められたコーチが審判団に歩み寄り、説明を求め、主審が説明してそれで終わり。(実際、接触はなかったのでゴールを認めてもよかったと、今は思う。)

審判に対してのリスペクト、というものが大事なんだ、ということをとても厳しく説くコーチもいた。ある地域の「ドン」と言われているようなコーチで、自分のチームの子供達には試合中、とても厳しい声をかけ続ける。そんなコーチが審判をすると、ジャッジに対してコーチが不満を言おうものなら鬼の形相でコーチを叱責するのだ。あるとき、そのコーチの方が言っていたのは、「コーチが審判に文句を言ったり不満を言ったりしたら、そのコーチを見ている子供達も審判に対して不平・不満を言うようになってしまう。だから審判に対する不平・不満は許さないんだ」と言うことだった。

これ、今思えばとっても大事。小学生も高学年になれば、審判に普通に文句を言う子も出てくる。自分はカードを出したことがないが、カード出してもいいだろう、と言うような態度を取る子もいた。先日、J2東京ヴェルディの選手が、判定に不服だとして抗議。その抗議の中で「もう一生笛吹くな」と言う言葉が飛び出たそうな(これ、私が実際に聞いたわけではなく、ネット上でそう言った記事を見た。)

これね、本当に思うのが、サッカー選手を夢見る子供達が見てるんですよ?プロの選手はそうやって不満を審判にぶちまけて、言うに事欠いて、一生笛吹くなとか言ってもいいんだ、と思われ兼ねないんですよ?(もちろん極端な話ですが)。選手の皆さんもオフシーズンとかに審判講習受けて、小学生でも草サッカーでも、試合の笛を吹いてみればいい。どれだけ大変なことか。それに対してリスペクトも持てないなら、サッカーやる資格ないですよ。

大人は子供を見て、マネから入ります。自分も観戦しているとついつい、文句を言ったりしてしまいますが、いかんいかん、と思い、息子が近くにいたら、反省して、「今のはこうだったんじゃないかな?」と、議論するようにしている。

人がプレーして、人がジャッジする。そこにはミスは付き物。これは大前提。その上で、審判は審判の技術を向上させる。選手やサポーターは全力でプレーして応援する。そしてお互いがお互いをリスペクトすることがもう一つの大前提だろう。さらにいえば、協会は審判の地位向上をしっかりすべきなのかもしれない。最後に、こんな審判と選手の関係って素敵だな〜と思ったシーンを。

色々と物議をかもすジャッジもした審判らしいが、最後の試合、選手たちが花道を作り、クアドラードがバニシングスプレーをぶっかけると言うイタズラを敢行。それに対して、寂しげな表情を見せつつ、レッドカードを提示すると言う、とても微笑ましい光景が見られる。誇りを持って笛を吹き、時にはぶつかることもあっただろう選手たちが花道で送り出す。Jリーグもこう言ったリーグになって欲しい。きっとそのためには、育成年代から、サッカーに対する考え方をしっかり教えていかないといけないんだろうなと思う。

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