エピソード8:キミの好きなものをパクパクと

「やっぱり美味しい♪」

キミのお気に入りのベトナム料理のお店。こじんまりとした店内にオリエンタルな雰囲気の雑貨やポスター等がところ狭しと飾られていて、でもそれが不思議と雑多ではなく感じられるお店。

夏の終わり頃にここで一緒にご飯を食べてからフラッペを飲んで、キミのことを書いておきたいと思った。
あれから半年くらいかな?
すっかりと寒くなった年明けの1月。

パクチーがふんだんに使われているベトナム料理は昔からのキミの好みで、初めてパクチーさんをボクに紹介したのも遠い昔のキミ。残念ながらキミとご飯を食べる時以外にパクチーさんとご一緒する機会が全くないので、なかなか距離は縮まっていない。

でもキミとここでご飯を食べる時は、ボクもパクチーを食べるようにしている。決して美味しいとは思わないのだけど。キミが好きなものを一緒にパクパク食べたい一心で。

そろそろ仕事を始めなきゃとか、小さい頃に通っていた幼稚園の池の話とか、ボクたちが同級生になる前にお互いのお姉ちゃんが先に同級生だった話とか、とりとめもないようなことをおしゃべりしていたら、時間はあっという間に過ぎてしまった。

今日はフラッペにはちと寒い。

少し離れた所に停めた車まで戻るわずかな時間に、またボクはキミの手を捕まえた。

車の中で少しだけお話をしてから、最後に多分キスをしてお別れした気がする。舞い上がってしまって記憶が曖昧なのだけれど。


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