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「やるかやらないか」ではなくて、「どうやってやるか」 一 新しい形のミニ・ミュンヘン

前回、ドイツ・バイエルン州のミュンヘンで2年に1回開催される「こどものまち」ミニ・ミュンヘンについて書いたのですが、今回は2020年のコロナ禍でのミニ・ミュンヘンについて書きたいと思います。

場所の問題や財政難を乗り越えて、40年間、2年ごとに開催されてきたミニ・ミュンヘン。

そんなミニ・ミュンヘンに訪れたこれまでで最大の危機、新コロナウイルス。

ドイツでもウイルス感染者が増えてきていた2020年の3月、一カ所に多くの子どもたちが集まるミニ・ミュンヘンの開催は危ぶまれていました。

ミュンヘン市やスポンサーとなっている企業からも、中止や延期の声が上がってきていたそうです。

この頃ドイツでは、学校や幼稚園、保育園、スポーツ施設、映画館や美術館などの文化施設、遊具のある公園も全て閉鎖された状態でした。

私が働いているベルリンのこどもミュージアムも、3月中旬から状況がよくなるまで無期限の閉館を余儀無くされてしまいました。

それから数ヶ月間、こどもミュージアムのスタッフとして、遊びと学びのデザイナーとして、何ができるのか、この状況下でどうやってチームとしてまとまっていけるのか、何が最善なのか。。。と悶々と過ごしている中で、ミニ・ミュンヘンが開催されることを知り、大興奮で行ってきました。

1990年からミニ・ミュンヘンの主催をしている非営利団体Kultur & Spielraum e.V. Münchenに事前に連絡をすると、とてもフレンドリーな対応で、当日は案内をしてくれるとのこと。

滞在中、たくさんのスタッフさんが本当に快く案内、お話をしてくださいました。

通常のミニ・ミュンヘンでは、開催場所は変わっても、一ヶ所で、3週間の期間中に見える形でどんどんまちができていく、という形態です。

延べ3万人を超える子どもたちが参加するこの大イベント。
一ヶ所にそんなにたくさんの子どもたちが集まることは、コロナ禍では何があっても避けなければなりません。

Kultur & Spielraum e.V. Münchenの中心メンバーは、子どもたちが遊べる環境にどんどん制限がかかり、街も自由に歩けなくなり、子どもたちもとても窮屈な思いをしてストレスが溜まってきている、この状況だからこそ、やるしかない!と決めたそうです。

子どもたちが待っている!
今こそ子どもたちがミニ・ミュンヘンを必要としている!
密接がダメなら、子どもたちが集まれないなら、
ミニ・ミュンヘンが分散して、子どもたちのところへ!
「やるかやらないか」ではなくて、「どうやってやるか」だ!


これまで何回もスタッフとして関わってきているスタッフさんたちは、開催の決定を直接聞いたとき、中心メンバーの思いが伝わってきて鳥肌が立った、嬉しくて泣きそうになった、と話してくれました。

それから、「どうやってやるか」について何度も何度も話し合いを重ね、通常の中心型ではなく、ミニ・ミュンヘンがミュンヘン市内に分散する形での開催となりました。

そして、参加者の登録や給料の支払いや雇用状況の確認のためのオンラインのプラットフォームが立ち上げられ、各箇所を結ぶ流通システムや大規模の電話回線が導入され、7月末に、コロナ禍でのミニ・ミュンヘンが無事にスタートを切りました!

開催が正式に決まった5月上旬からの2ヶ月半、ギリギリまで準備を調整が続けられ、中心メンバーとITチームは眠れない日々を過ごしたそうです。

通常のミニ・ミュンヘンのハイライトのひとつでもあるレストランは今回はなし。屋内は面積によって人数制限あり。
雨が降ると屋外での活動が制限され更に人数が制限されるので、リモートワークも導入されていました。

手洗い場でパーティの準備

各箇所ごとに、手洗い、消毒できる場所が。
写真は、この後のパーティのための水風船を準備している様子。

市議会

ミュンヘン市庁舎内での、ミニ・ミュンヘン市議会会議。

立ってお話をされている白い洋服の女性は、ミュンヘン市の都市計画担当の方。
座っているスーツの男性は、ミュンヘン市の財政担当の方。

赤いスカートの女性は、手話通訳者。
ミニ・ミュンヘンの中でも大きなイベントには、できる限りインクルーシブに計画されているようです。今回ミュンヘン市の各地区に分かれての開催では全てをバリアフリーにすることはできませんでしたが、事前に相談すれば、可能な限り全ての子どもたちが参加できるような努力をされています。

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旅行会社の看板。
ミュンヘン市の別の地区へのツアーが提供されるのは、分散型ならでは。

「子どもたちは、順応して、その状況の中で楽しんでいる。目の前のことに集中している彼らには、中心型も分散型も変わりない。
今回が初めての子どもたちはこの形態を楽しんでいるし、中心型のミニ・ミュンヘンを体験したことがある子どもたちは、中心部があり各地区がある、現実に近い今回の見えない形の「まち」というものを感じている。」

と話してくれたスタッフさんの言葉が印象的でした。

子どもたちも、

「今回は家から近くて1人で来れるから嬉しい」
「大きいところよりのんびりしてるから大きい子たちに負けないで好きな仕事がもらえて楽しい。」
「旅行会社のツアーでミュンヘン市の中で行ったことなかったところに行けて楽しかった」

など、分散型だからこそよかったことも話してくれました。

コロナ禍でのミニ・ミュンヘンの開催は、中止や延期になってしまったドイツ国内や世界中の「こどものまち」から大注目を浴びたようです。

オンラインのプラットフォームの立ち上げや流通システムの導入など、通常の形が可能でなかったからこそ可能になったこと。
街の中に分散することで見えてきたミニ・ミュンヘンの新しい形。

まさに、ピンチはチャンス!ですね。


「やるかやらないか」ではなくて、「どうやってやるか」

子どもたちとミニ・ミュンヘンへの熱い想いによって可能になったコロナ禍のミニ・ミュンヘンは、「こどものまち」だけではなく、「通常」が難しくなっている世界中の全ての人たちに元気をくれて、長いトンネルの先にかすかに光を見せてくれるのではないかと思います。

最後まで読んでくれてありがとうございました!

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