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袖パワー年代記 ユディト

筆者は以下の文に、ユダヤ教徒キリスト教徒の尊厳の否定・侮辱の意図を全くこめていないことをおことわり致します。


…. 黄々泉よゝみ の世界が、今度は左のガラス器にむかって妄念の美貌を膨らませ始めた。


第2部 ユディト


 血に飢えて情に乾ききったアッシリアの将軍ホロフェルネスの行く手にユディトの香り高く怖いほど品格の良い舞い姿がひろがり映る。
 エルサレム倒壊攻略を指揮する星廻りが一散にアッシリアオオカミ千頭の死の気色を帯びて航路を綴り帆がしろい胸乳むなぢのやわらかさに沿って高揚を膨らませた。 
 ユディトは「テロリズムが爛熟した十九世紀末なら防弾馬車に乗らっしゃるほどの御身分の、横顔も気高いホロフェルネスさま!」四日間の断食ののちに舞いを披露する。
 巨匠の幻想暗美をつかさどる脳の皺がひとすじ残らず水流に染まり体じゅうが毛孔けあなの満開でアールヌーヴォー渦巻き文様を呈する。大気にはバロックリュートの弦奏が宴を取り巻いて充満した。
 [ 第2部 ユディト ] の中心に築かれたのは、モノクルを嵌めたホロフェルネスを閉じ込めた、厚織りの樽。

Lucas Cranach der Ältere, Judith with the head of Holofernes

【フレスコ画4コマ漫画『黒ひげ危機一発』作画:筆者 
中世ヨーロッパ写本が人物の口から空中へと吹き出す巻き物に文字を躍らせる様子を、おおあわてパイレーツのすちゃらか三昧に合流させ、目も綾な国際ゴシック様式のフレスコ画で写し取ってみせる】
  
 
巨匠の目が追いかける、ホロフェルネスとユディトの時代にはまだ無い機械式時計のかわりを勤めていた蝋燭がひとすじ照り尽くす夜の旋動せんどうと、樽に差し込まれる5本目の剣の刃に映ったよゝみの横顔の唇のうごきが、「御意でございます先生、古い時代・・・金、銀、青銅が最も気高く純壁だった時代には奇跡がしばしば起きました」

黄々泉よゝみ の眼は、巨匠の水気あふれる空気に浮かぶ工藝ゴシック船の、奇天烈な乗り心地の柔らかさで包み込んで、モノクルと、黒い眼帯の蠢く船体に抜き身の刃のうえをいちゃいちゃち走り回る。
「ゴメンよゝみ、音読よりも、早く挿入してくれんか。ワシは飛びたいのだ」

巨匠の視界は、ホロフェルネス将軍がつくった航路を這い進み、言葉が綴られる。
「樽のすがたは、唯我独尊のねじ曲がりの結び目が固い引き締まりの幻影だった。ユディトから発汗し風呂おけにくみあげるほどもの香油にひたした、ひだりの袖の刺繍と一体になったバロックリュートの弦奏でぐるぐる巻きにされていた。」

黄々泉よゝみの視界は、
「からころもすそ野のいほの旅まくら袖より鴨の立つここちする」血の気の多い公家文人、捻りの効いた妖艶体を綴る貴種墨客の定家卿は、袖から鴨が飛んだりするものかと作歌を侮辱され怒りを通りすぎてキレちゃったあまり錫の華瓶を蹴っ飛ばしたらそのショックだけが時間を超えて、よゝみのベッドの横腹に突き刺さった。その勢いで、王朝時代のこがねづくりの麗しい太刀がゼンマイ巻きの鍵になってしまうとよゝみの恢復が、早送りになって、「明日から、いやこれからすぐにでもできます、オシゴト」
 

 いまや病院はその全域が、淫蕩なガラス質万華鏡から青い空に放つ大砲の歓声を呈し、もはや病める者など誰もいないような印象を織りなした。
 

 筆者註:この病院、黄々泉よゝみの蘇生?を、こんなにハシャギ過ぎたから大日本医師会から問題にされちゃって、爆破解体されたみたいよ。めっちゃ設備にカネかけてたのに。
そして改まりましてアオキさん、第2部がこんなにも遅くなっちゃいまして失礼しました!!!



2024年12月24日の夜、
よゝみと巨匠は、お揃いの装いに
手をつないで街のイルミネーションに身も心も包まれて

クリスマスプレゼントの交換 。いちばんの幸福をかみしめる。プレゼントは
ポケット付きの袖におさめる、お揃いの懐中時計・・・袖中時計???
よゝみの横顔の唇のうごきが、袖中時計の
量の勝利を圧倒する質の勝利を
ショーウィンドウにさらすと、
巨匠はモノクル顔の自賛をショーウィンドウにさらして見せた。 
えっ片メガネの顔が?誰とそっくり?
時計の丸蓋の円周に刻印されてる、
格言の作者?ググってみましょっと。ユリウス・エヴォラ?
よゝみ違うよ。作者はフリッツ・ラングで、格言ではなく
ボルジア家の野望と失墜物語を創案した1行詩だ。
14時間越えの大作にして撮ろうとして、頓挫したけど。




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