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好きを生きる| 凡人が箱根花柳界から学んだこと#4

箱根芸者を世界へ、箱根花柳界のリタッチに挑戦するMeet Geishaの小山麻未が凡人として知ったこと、凡人なりに気づいた大切なことをちょっとずつシェアします。

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「好きこそものの上手なれ」

きっとこれを実感したことがある人は少なくないはず。

ただ、趣味の領域と異なり仕事においては、自社ファンはいらない、
という場合もあれば、自社愛や誇りがないとダメという場合も
あり必ずしも「好きなことを仕事にする」ことを正として決めつけることはできない。

だが、琴音さんのお話を聞いていると、「好きなこと」と「仕事」の関係はやはり切っても切れないものだと知った。

箱根の現役芸者でありながら、置屋の女将でもある琴音さん。

彼女の美声とお三味線の奏でる力強く繊細な音色は聴けば、きっと伝統芸能にゆかりのない人でも「素敵だな」と惚れ惚れするだろう。

実は、琴音さんは箱根花柳界唯一の音大卒の芸者なのだ。

ピアノのレッスンを幼い頃からずっと受けてきており
音大に通いながら、卒業後もずっとピアノと音楽が生活の中にあって、自身でピアノ教室をひらいていたこともある。

そんなピアノ漬けの琴音さんが芸者の世界に足を踏み入れたキッカケは
10代の頃、小田原でお気に入りのお店の女将さんが置屋をやっていて、
声をかけられたことだった。

なんとなく始めた芸者のお仕事がやっていくうちに楽しくなって
当時、唄や踊りのできない芸者もいた中、琴音さんは
「芸のできない芸者はだめだ!」と強く思っていたという。

「音に関わってるのが楽しい」という琴音さんの言葉から、芸事へのこだわりの理由が見えた気がした。

自身の芸を磨いていくと、29で独立して置屋を始める。
「人の下で働くのは無理なタイプだから」と言っていた(このセリフ聞いたことがある、MeetGeishaの西村もそんなことを言っていた)ので、琴音さんにとって独立は必然だったのかもしれない。

人生のターニングポイントがあるとすれば、この独立のタイミングだったらしいが、これまで壁にぶつかったことはなかったのだとか。

けれど、関わってきた周囲の人にはいつも恵まれていたと言っていたから、たちはだかる壁を壁とは感じなかったのだろう。

受けてきたサポートへの感謝の気持ちをとても大事にされている琴音さんは、明るく前向きで、強いこだわりとプライドに包まれている。

「メロディー通りに歌うことも、譜面通りに弾くことも誰でもできること」

琴音さんにとって「芸ができる」というのは、きっとそこに
プラスアルファの抑揚や感情をのせ、相手に観せたい情景を届けることができ、付加価値を創出する、ということなのだろう。

芸へのあくなき追求心だ。
ここで終わり、と自分で自分にリミットを設けないその生き方に美しさを感じた。

関わっていたいと思えるものがあるのは幸せだろうし、
好きなものの延長に仕事があり、人生があるのだろう。

琴音さんの人生を通して、「好きなこと」と「生きること」の
深い関わりに触れることができた。

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