meetALIVE Vol.19 meetALIVE 緊急特別企画!出版記念イベント!「その仕事、全部やめてみよう」│イベントサマリー
『その仕事、全部やめてみよう 1%の本質をつかむ「シンプルな考え方」』を出版された、株式会社クレディセゾン常務執行役員CTOの小野和俊さん。プログラマとしての顔と経営者としての顔両方を持ち、国内外での経験を重ねた小野さんが考えるビジネス・パーソンに通底する重要な考え方とは? 本書に描かれたエッセンスを理解するヒントとなる、小野さんの横顔に迫るエピソードを聞きました。
【スペシャルゲスト】
小野 和俊 氏
株式会社 クレディセゾン
常務執行役員CTO デジタルイノベーション事業部 管掌(兼)デジタルイノベーション事業部長(兼)テクノロジーセンター長
1976年生まれ。1999年慶應義塾大学環境情報学部卒業後、サン・マイクロシステムズ株式会社に入社。米国 Sun Microsystems, Incでの開発などを経て2000年に株式会社アプレッソを起業、データ連携ミドルウェア DataSpiderを開発する。同ウェアでSOFTICより年間最優秀ソフトウェア賞を受賞。2004年度未踏ソフトウェア創造事業 Galapagos プロジェクト共同開発者。2007年~2010年日経ソフトウェア巻頭連載「小野和俊のプログラマ独立独歩」執筆。2008年~2011年九州大学大学院「高度ICTリーダーシップ特論」非常勤講師。2013年にセゾン情報システムズHULFT事業CTO、2014年 他事業部も含めたCTO、2015年 取締役 CTO、2016年 常務取締役 CTOを務め、2019年に株式会社クレディセゾンへ入社。取締役 CTOなどを経て、2020年6月18日より現職。
2020年7月29日に出版された『その仕事、全部やめてみよう 1%の本質をつかむ「シンプルな考え方」』(ダイヤモンド社刊)。著者であり、株式会社クレディセゾン常務執行役員CTOである小野和俊さんに、まずは本書が生まれるきっかけを聞きました。
小野和俊(以下、小野) 「2004年から書いていたブログを一冊の本にしないか、とお誘いいただいたのがきっかけです。
昨今GAFAの興隆を経てエンジニアに注目が集まるなか、エンジニアの書いた関連書籍も増えています。技術の専門書は多く目にすすものの、エンジニアとビジネスの関係性について語る本はなかなかありません。ちょうど私のブログに書かれた内容がまさにそれだということで、書籍にまとめることになりました」
CTOになってからは経営者視点での言及について求められることも多い小野さん。その集大成とも言える今回の書籍で、一番伝えたかったことは何なのでしょうか。
小野 「私は企業規模や事業領域の異なる複数企業を経験してきましたが、仕事で大切なことはベンチャーも大企業も共通していると感じています。世の中に良いものを届けることで企業が成長すること。社員の幸福を追求することが大切であるということ。当たり前かもしれませんが、こういう根本的な部分は変わりません」
次に、そういった体系にたどり着くまでの小野さんの経歴について振り返ります。慶応義塾大学卒業後サン・マイクロシステムズの日本支社に入社した小野さんは、そこで希望していたシリコンバレーへの切符をつかみます。
小野「僕は当時会社のなかで一番XMLに詳しい人材になることを目標にしていました。
これは書籍内で“ラストマン戦略”として説明していますが、組織のなかで、ある領域について最後に質問される人間になることはビジネス・パーソンのキャリアにとって重要です。これは『この人が知らないんだったら誰も知らない』と言わせるような専門性を身につけることとも言い換えられます。
そういった努力を重ねた折に、アメリカでXMLのプロジェクトがスタートすることになり、たった一つの日本枠にお声がけいただきました」
その後、小野さんは日本国内で株式会社アプレッソを起業することに。しかし、もともと起業という選択は小野さんにとって縁遠いものだったといいます。
小野「学生時代から周囲に起業家が多かったのですが、起業家って火の玉みたいに生きている人たちだなぁ、大変そうだなぁ……と遠目に見て思っていました。
僕は当時プログラミングの技術を学びたいという明確な目標があり、シリコンバレーに行きたかったのもそれが理由でした。だから、起業なんてこれっぽっちも考えていなかったですよ。
プログラミングってある種の魔法のようなもので、プログラマは魔法使いに例えられると思います。もしも自分が魔法使いだったら、より上位の魔法使いがいる国があるって知ったら絶対に行きたいでしょう?シリコンバレーはそういう場所だった。
このシリコンバレーでの人々とのめぐり逢いや経験は、僕から遠かった起業の道を拓きました。紹介を機に出会ったエンジェル投資家と意気投合し、個人資産から10億円出すという申し出を受けたのは大きな出来事でしたね。
それでもまだ起業には後ろ向きだった僕に、ある人が言葉をかけてくれました。シティバンクからベンチャーへとキャリアチェンジしたその方は、『この道に後悔はない、リスクをとるのが楽しい』と話してくれたんです。
資金やキャリアの面では十分すぎるほどの成功を収めている方でしたから、その人と比べて、成功しそうな道を選んでステップアップしようとしている自分がやけにちっぽけに感じられて……。せっかく投資家との関係性も築けているのだからやってみよう、と起業を覚悟しました」
アプレッソは、小野さんを社長に迎えることでリスタートを切ったベンチャー企業です。ミドルウェア『Data Spider(以下、データスパイダー)』の提供を開始し、社内メンバーのスキルを高めつつ、小野さんはみずからデータスパイダーを販売するための営業を始めました。
小野 「名もないベンチャーが商品の機能性をいくら説明しても、信頼性がなければ受注につながりません。まずは先方の希望をヒアリングして、その希望を直接データスパイダーのスクリプトでメモしていきました。『……で、普通に開発したら2~3か月かかる内容だけど、君のところならどのくらいでできるの』って訊かれたら、『だいたいもうできましたよ』って、その画面を見せるんですよ(笑)。そういうサプライズ営業で、最初の受注をつかんでいきました」
創業後2年間は1度も休まず働いていた、と振り返る小野さん。泊まり込みが続くメンバーのために、福利厚生に銭湯のチケットを採用したというエピソードも、まさに“火の玉”のように燃える日々を走った小野さんとチームの姿が垣間見えます。
そして2013年、アプレッソはセゾン情報システムズと合併する形になりました。大手企業、ベンチャー企業双方の経験を活かし、小野さんはCTOという立ち位置から事業成長と技術革新に関わるようになります。
小野 「ベンチャーといえばスピード感、ピボットを重ねる柔軟性などに目がいきがちですが、なかには大企業と同じように安定性が強みとなる領域も存在します。私たちはミスを絶対に許さないカルチャーがあったからこそ、スピードだけを売りにする企業とは異なる商品の強みを持っていたのでしょう。
要は、ベンチャーらしい事業展開が必ずしも正解というわけではないということです。大企業とベンチャーのやり方の相違が問題視されることもありますが、それぞれのビジネスの良さを理解して尊重しあい、シーンに応じて戦略を使い分けることが大切ですね」
このように、攻めと守りの両軸を使い分けて勝ち抜いていく方法をバイモーダル戦略と呼びます。これについては書籍内でも詳しく書かれていますので、ぜひご覧ください。
また、このバイモーダル戦略は、他社との“横”のつながりに展開するだけでなく、チーム内の“縦”に対しても応用することができます。
小野 「上司が変わらないから組織が変わらない、という言説をよく耳にしますが、こういうふうに現場が決めつけてしまうと、チーム改善の道は遠くなります。上には上の言い分や考え方があるということを理解したうえで、現場がどのように寄り添っていけるか。尊重を前提に改善を検討するほうが、チームの成長には効果が出ると思います」
小野さんの著書『その仕事、全部やめてみよう 1%の本質をつかむ「シンプルな考え方」』には、このほかにも経験をもとに描かれたさまざまビジネスのヒントが描かれています。ベンチャーと大企業、上司と部下、業界の違い……。ビジネスにはさまざまな二項対立が存在しますが、もっともプロジェクトを成功させるのは、双方の信頼と尊敬をもとに、謙虚な姿勢を保つことです。事業成長をもたらす組織や働き方を模索している方は、ぜひ本書をご覧ください。
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