世界最大のテクノロジーとカルチャーの祭典『SXSW』の魅力と未来を語ろう!
テキサス州オースティンで開催されている世界最大規模のカンファレンス『SXSW (サウスバイサウスウェスト)』。
新しい音楽や映画、最先端のテクノロジー、変革するカルチャーなど、さまざまな出会いを求め、世界中から毎年約40万人が集います。
2021年は『SXSW 2021 Online』として、サイバー空間上にオースティンの街を再現し、VRインタラクティブなイベントとして開催。
今回は、『SXSW』を深く知る有識者の皆さまをゲストに迎え、改めてSXSWの魅力と未来についてお話を伺いました。
【ゲストスピーカー】
Audrey Kimura 氏
SXSWエバンジェリスト
2019年まで20年間SXSW Japan Repをつとめ、もっとも多くSXSWに参加している日本人のひとり。SXSWの日本人アーティストショウケース、Japan Niteのプロデューサーとしてこれまで200組以上のアーティストを世界に紹介してきた。SXSW Trade Showで名物となったJAPAN ITスタートアップ旋風のフィクサー & SXSWのエバンジェリスト。
岩佐 琢磨 氏
株式会社Shiftall 代表取締役CEO
パナソニック株式会社を経て2008年に株式会社Cerevoを起業。30種を超えるIoT製品を70以上の国と地域に販売する。2018年、株式会社Shiftallを設立し、2021年にはVRメタバース・ビジネスへと参入、Lumixのデータ販売やフルトラ機器‘HaritoraX’を発表。
菅原 岳人 氏
東京大学産学協創推進本部 ディレクター Todai To Texas 統括
東京大学産学協創推進本部にて、2009年よりインキュベーションおよびアントレプレナーシップ教育担当ディレクターとして、東京大学のスタートアップエコシステム構築に従事。2013年にTodai To Texasを立ち上げ以来、50社以上をSXSWのExhibitionへ送り込む。
菅原さん:
SXSWは、いわゆるビジネス展示会とは少し違う。「フェス」なんですよ。学生の出展もあれば、マッキンゼーの出展もある。だから本当にいろんな人と出会えます。
――通常は完成品を売り込むところを、SXSWではプロトタイプを出して、ユーザーのヒアリングを一気にもらえたり、足りない技術を補ってくれるパートナーや投資先が見つかったりする。そんな面白さがありますよね。
岩佐さん:
「ビジネスサイドの匂いが若干する文化祭」みたいな(笑)。偶然の出会いやハプニングもある大人の文化祭色が強い印象です。アートやミュージックなどのカルチャーや、最近だとSDGsやLGBTにまつわる話もある。
今僕がやっているビジネス的に、今年はご縁がないかなと思っていたところにXR開催ですよ! すぐに参加を決めました。
Audreyさん:
岩佐さんが言い出してから、私のまわりでも最低6人はOculusを買っていましたよ。私も前日に買いましたが、SXSWのコミュニティで事前に情報のシェアがあったのですんなり入っていけました。VR酔いで初日は3回も吐きましたが…(笑)。
岩佐さん:
VRってハードルが高いけど、どうしても参加したいイベントをきっかけに買う人が多いんです。今後そうやってVR世界へ入ってくる人は増えてくると思いますね。
――実際に体験してみてどうでしたか?
岩佐さん:
僕のなかではめちゃくちゃ評価が高いです。1番のポイントはSXSW独自のノリがVRゴーグルのなかの世界で再現されていたこと。
僕は「ソーシャルVR」と呼んでいるんですけど、たとえば、SNSは自分の投稿に対して、誰かと会話することによって盛り上がりますよね。
それと同じで、大人の文化祭も双方のコミュニケーションと人との出会いがあって初めて成立する。
実際のSXSWでは、ビールを持った兄ちゃんがふらっとブースに来て、実はその人がすごいエンジェル投資家だった! …なんてことが起こるんですけど、それがVRのなかでもできた。目の前で喋っている人たちの会話を小耳に挟んで、参加していったりとか。
Audreyさん:
相手がそこにいる感じがすごいリアルでした。オースティンの街が再現されていたのも良かったですね。アーティストのVincent Massonが担当された幾何学的でカラフルなビジュアル。入った瞬間、遊園地のような楽しい雰囲気もあり、オースティンに帰ってきたような懐かしさもあった。
この世界を2ヶ月で作ったというのも驚きですよね。
▲引用元:SXSW Online XR Trailer
岩佐さん:
ルーフトップやパラマウント・シアターも良かったですね。VRの感覚は、VRチャットに入っていただくといつでも体験できるので、実際に体験してみてほしいですね。
――やはり実際の展示とも違った部分はあると思うのですが、苦労したことはありましたか?
菅原さん:
「Swapcard」というイベントツールを使って展示をしたんですけど、ここではビジターは出展者のページに行って、チャットでコミュニケーションを取るんですね。
最初はチャットも全然来なかったです。訪問者は4日間で1000人以上あるのに、声を掛けてくる人は1日数人。
そこで僕たちは作戦を切り替えて、同じ思いをしている200社以上の出展者側にメッセージを送り、コミュニケーションを取るようにしました。そこから共通の話題を見つけたり、コラボが決まったりして商談に繋がりましたね。
――出展者側にアプローチをかけていくのは面白いですね。
菅原さん:
それに、普通の展示会だと時間調整に追われて成約は少ないんですけど、オンラインだと何回もミーティングをして仕様を詰めることができるのが大きかったです。
Audreyさん:
今回は「Sōseki」という面白いのもありましたね。
引用元:Sōseki
菅原さん:
最先端の自然言語処理技術を搭載したAIモデルですね。
SXSWのセッション情報を取り込んで、検索できたり、セッションをレコメンドしてくれるbotなんですけど、SXSWの中の人が興味を持ってくれて。
そんな偶然の出会いで話が進んでいくのもSXSWの良いところです。目に見える同士でスタートするのとは勝手が違うので、スターティングポイントの違いで苦労した人もいると思いますが、出展側から話しかけることでSXSWっぽいところが回り出したと思いますね。
2021年はSXSWの存続が危ぶまれた年で、だからこそセレンディピティ的な出会いが起こりやすかった。挑戦した価値はあったと思います。
――今年の出展の目玉は何でしたか?
Audreyさん:
今年は音声メディアが久々に来た印象です。耳の専門家に聞いたら、コロナの影響も含めて今みんな異常に聴力が敏感になっているらしいです。
Audreyさん:
2015年には一度「スマホで圧縮した音源を聴くのはやめよう」というムーブメントが一瞬あったけど根付かなかった。Neil Youngが出した『Pono』というハイレゾ音楽プレーヤーも2年程度で消えてしまったんです。
でも、今年こそオーディオが第一線に来た感覚がありました。たとえば、VR空間では基本的に自分視点の1カメだけがあれば良いけれど、音はどうしても気になった。もう音が良くなければダメだなと! 今年はオーディオ業界が活気づいてますね。
――他に気になったものはありましたか?
岩佐さん:
今回のチケットは399ドルだったんですけど、XRのアート作品の展示だけで元が取れるんじゃないかと思うぐらい良かったですね。トップXRアーティストが作ったコンテンツをたった4万円で見れるのは衝撃でした。
岩佐さん:
仮に来年リアルで開催されても、XRのムービーは見れないじゃないですか。オンライン開催によって現実の劣化版にならざるを得ないところを、XRでしかできないことをやったのが本当にすごいこと。
最後に、XR演出が得意なDJ・Jean-Michel Jarreとフランスのスタートアップ『VRrOOm』がタッグを組んで、今は焼けてしまったノートルダム寺院を3Dで再現してライブをしていて…。これは現実じゃ絶対見れないような演出。XRは展示会の未来のひとつだと思いましたね。
菅原さん:
今回は出展者に加えて、東大生30人に参加してもらったんですけど、テクノロジーやカルチャーがMIXされている感覚に刺激を受けていましたね。
『イノベーションに対する恐怖をどうとらえるの?』というセッションを聞いた、工学部の学生が、「『新しい』だけでは価値はなく、それを使ってどうするのかを自分たちで考えていかなきゃいけない」という感想をくれて嬉しくなりました。「SXSWは幅が広くて懐が深いんですね」とも言っていましたよ(笑)
学生チケットは69ドルだったので、日本の学生はみんな買ったらいいと思いましたね。
――「文化祭」なので誰でも参加できますから、来年はぜひ参加してほしいですね。本日はありがとうございました!
…
ライター いしかわゆき / ゆぴ(17) @milkprincess17
meetALIVE プロデューサー 森脇 匡紀 @moriwaking
meetALIVE コミュニティサポーター 植田成美 @763community
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