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第170話 春雷

(ハルノイカヅチ)


 冷えた体に温かい食事をいただくと、けーこと二人で少し通りをひやかして歩いた。小町通りをぐるっと回って若宮大路に差し掛かると、彼女がこんなことを言い出した。

「さっきからなんか、もう調整始まってるのかなぁ。神社の途中からさぁ、新しいガイドが付いたっぽいんだよね。沖縄の……シーサーとか、あー、あとは、ジーニーみたいなムキムキっぽい人。あんまり言うと怒られそうだけどね。あ、ちょうどこんなかんじの。」

 長い参道の途中、三の鳥居の交差点にはマスクをつけた一対の大きな狛犬像があった。けーこの説明から、何となく体躯のいい、腕力のありそうな男の人だということは伝わった。

「これさぁ、またきっと私、帰ってからこの人との調整でしょ?この人なんか、人間に付くの初めてっぽいんだよね。神社の外に出られてすごく楽しそうなんだけど、帰ってから私、今日はうまく寝れるのかなぁ。」

 そんな会話をしながらクルマまで戻ると、なんとなく帰りは有料道路なしのナビ画面を選択した。指し示された、国道1号線方面を目指す。
 すると出発して間もなくゴロゴロと大きな音が鳴り始め、あっという間に土砂降りの雷雨となってしまった。これほどの急な悪天候は、現実世界と高次元のエネルギーが大きく移動した際に起こりがちだった。
「上に乗らずに、1国(いちこく)からで正解だったね。」と二人で話しながら、どの車もスピードを抑える中を辿って帰路に着いた。


 次の日の朝、私の夢に現れたのはタケくんだった。というか厳密には夢ではなく、どこまでも広がる真っ白い空間にタケくんのほうからやってきたのだ。

 唐突にポイッと寄越されたのは、手のひらにすっぽり収まる程度の立方体。プレゼントの小箱のようだけど、開封するまでもなく、中に蛇が入っているのが透けて視えてしまっていた。

「え、やだ。私これは受け取らないよ。」

 一度は箱を突き返し、その場から立ち去ろうとしたけれど、何も説明のないまま行ってしまうのもどうかと思われ再び彼の側まで行った。

「ねぇタケくん。いきなり腹を立てて悪かったけど、私にはこの中に、あなたの闇が入っていることが視えてしまったの。
これは“あなたの学び”でしょ?それを私が取ってしまうことは私にはできないよ。けーこはどうかわからないけど私は人の学びは取らない。
一度私に依存しちゃうと、次々私のところに持ってくる癖がついちゃうでしょ?そうなってくると、今度またその分、あなた自身が膨れ上がった闇の学び直しをしなくちゃいけなくなるでしょ?
ごめんね、だから、意地悪で受け取らないんじゃないってことをわかってほしいの。」

 そんなことを伝えると、彼は頷いてから引き返していった。意外な組み合わせの異空間の接触は、こうしてお開きになった。

……

 後になって思うのは、この時の小箱の元凶はけーこだったと考えられた。

 鎌倉からの帰り道、けーこも有名ガラスメーカー製の小槌をいただいて持っているのだと教えてくれた。小槌といえば、最後に小槌を振るったことで、お椀サイズだった一寸法師が青年の姿まで大きくなった昔話が思い浮かんだ。
 その話をすると、「タケくん、もうちょっと身長あってほしいんだよね。」と話し出した彼女はその晩、八幡宮からやってきたパワー型ガイドの“カルさん”と共に、なんとタケくんの頭を小槌で思い切りぶん殴っておちょくっていたのだとのことだった。

 ツインレイであるにもかかわらずその相手から殴られ、以前もけーこに道端に置き去りにされてしまったタケくんに不憫を感じざるを得なかった。彼女は笑って話していたけど、聞いてる私は笑えなかった。心が段々冷えていった。


 それにしても。

「……トカゲ、あなただったのね!」

 こちらは嬉しい発見だった。
今回、箱の中身が蛇だと一発で見抜けたことで、私に一つの確信が生まれた。
 スサナル先生の脳味噌の部屋でもイグアナの正体を見破れたのは、私自身のサイキックではなくトカゲという強力な味方がついてくれたことに他ならない。「蛇の道はヘビ」と言うけれど、あの時、この子の守りが私を助けてくれたのだ。


 自分と闇とが統合されるとはこういうことかと実感した。あれほど憎しみ合った敵だったトカゲが今や、私の大切な一部となってくれていた。
 そうして分離から統合へ。改めて、ツインレイという宇宙の妙に関心しながら、剣と勾玉を乗せた船旅が再び始まったのだった。




written by ひみ

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実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。

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もうトカゲちゃんかわいいでしょ?(最近ゴリ押しばっかり笑)
あの時この子が彼の脳の部屋に一緒についてきた理由は、ひとつにはようやく理解に至った私の愛に応えるためだったんだけど、もう一つには、この子、苦しんでいるイグアナのことを私に救ってほしかったからなんです。

ちなみに以前アメブロに書いたんですが、低い次元に囚われている何らかの意識体に対しては、愛して昇華してあげるのもひとつ、バトってやっつけて昇華してあげるのもひとつです。いざとなったら私でも斬ります。退治であっても善悪はありません。(斬る→亡くなる→一段上の多次元宇宙に移行する。)

そしてこの時のタケくんのヘビちゃんは、けーこが龍神に食べさせたことでめでたくアセンションとなりました笑
「タンパク質だ。胃酸で消化される。」って言われながらヘビ食わさせるけーこの眷属笑

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←今までのお話はこちら

→第171話 人生でいちばん受け入れ難い日

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