第196話 風、起こせし者たち
九頭龍神社を後にすると、そのまま湖沿いを少し走って箱根神社へとやってきた。
たくさんの車に、たくさんの行き交う人……。
ついさっき、私たちの身に何が起こっていたかを知らない人たちがいっぱいいる。それぞれに参拝したり、売店の食事を楽しんでいだり、手を繋いで歩いたり。その、どの顔もみな笑ってた。
知ってる世界に帰ってきた!
嬉しくて、ホッとしてたまらなかった。
一気に緊張が解ける(ほどける)と、神々からも「ご苦労だったね。」とたくさんの労わりの言葉をいただいた。
箱根神社ご祭神、ニニギとコノハナサクヤヒメ、それから彼らの息子であるヒコホホデミ。その彼こそが浦島太郎のモデルのお方、つまりは先輩ツインレイ男性。
ヒコホホデミによると、「今後、あなた方に守りが入る」とのことで、“この小説自体”にも、書いていく上での導きが整うと約束してくださった。
それから境内にいらっしゃった龍神からは、これがさっきの九頭龍と本当に同じ方なのかというほどの優しさを感じて、なぜかスサナル先生のことをほんのり思い浮かべてしまった。
たったそれだけ、思い出しただけでも泣きそうになってしまうほど、今日という日はそれほどまでに疲弊して、弱気も出てきてしまっていた。
参拝を終えて車に戻ると、贄にならずに済んだことには改めてありがたく感謝しつつも、クタクタの体での運転を思ってほんの少しだけ気が滅入る。
箱根の山々に棲む龍や精霊たちも然り、肉体を持たない存在のほうがこの地球においては圧倒的な多数派である。その肉体を持つがゆえの疲労感には乾いた笑いしか出なかったけど、それもまた人間として生まれた醍醐味だと思って諦めた。
チラッと見える湖に最後に軽く挨拶をすると、神社の駐車場を出発した。帰り道もしばらくの間、今朝来た時と同じように後ろにぴったり他の車がついてきた。けれども今度はお見送りを兼ねた護衛、“後ろ盾”がつくサインなのだと気がついて、ちょっぴり元気が戻ってきた。
……
「ただいまー!」
帰宅すると、愛しいあきらが待っていた。
「うっわ、お疲れ。なんかひみも早く休んだほうがいいね。」
昼間の出来事を伝えると、あの子もちょうどその時間帯、喉が痛くて頭もボーッとしていたのだと教えてくれた。
この“試練”の間もずっと、私とけーこの負荷を色んな人が色んな場所から請け負ってくれていたらしかった。帰りにけーこから聞いたところによると、今世、彼女をサポートしている深い縁のある方も、私たちが湖から駐車場に戻ってきた瞬間に「今起きました」とLINEを送ってきたとのことで、それまでの間、眠りの中で一緒にいてくれたことがわかる。
家族や友人、ガイドたち。私が思っている以上に多くの意識に助けられて、今日という日を乗り越えられた。あちらこちらに感謝をしつつ、それほどの援助が入ってまでの『火の柱と水の柱』とはなんだろうかと考えた。
……
その晩は、結局なかなか寝つけなかった。
布団に潜って輾転反側していると、やがてぼんやりと思い出した。もう何年も前にけーこが拾って教えてくれた、火と水を表す富士の紅白の龍の話……。
赤は誕生、白とは死。
産まれる準備の十月十日(とつきとおか)を“刹那”とするなら、誕生から死に向かうその後の何十年が“永遠”に当たる。チャクラもオーラも赤から始まり、様々な色を身につけたのちに全てを含んで白へと還り、再び命の赤を纏って輪廻の世へと産まれ来る。
だからこその、富士とは不死。片やコノハナサクヤヒメ、そして片や、ククリヒメ。
けーこが抱いた違和感の原因である、『太陽の剣である私が水で、勾玉の月であるけーこが火ということ』こそ、エネルギーが交互に螺旋状に反転していく証拠だろう。
あの時けーこが探していた、赤い龍と白い龍。
「見つけたよ。」
ふふっと笑い、心の中で、けーこに言った。
松の世とはミロクの世。私たちこそがまさにその、ミロクの風の台風の目となるその二柱だったのだ。
(参考)
第57話 『記録と記憶』
written by ひみ
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実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。
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なんかこないだから凄いことばかり書かされてますが、しょうがない。書いてるのは私だけど、私が書いてる訳じゃないからそれこそ諦めました。
自分じゃ全く普通の人間ですけどね。
セーターに毛玉が増えれば毛玉取りしたり、寒くて布団から出られなかったり。高校の三者面談にだって行きますし笑
ところで聞いた話ですが、サバンナの動物たちに太陽が当たる時、シマウマの場合は毛が白と黒なので、表面温度の差から微風が発生してその風によって体温を下げるそうです。
両極あるから、風が起こるんだそうですよ。
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