体調管理についての考察
僕は2007年にドイツに移住して以来
風邪らしい風邪をひいたのは、
この2007年のとき以来です。
ドイツ語もままならない中、
ふらふらになりながら
高熱で体の震えも止まらずに、
節々が痛くて病院の待合室でうずくまっていた。
間違いのない風邪だ。
それも悪質なやつ。
診断の結果、「インフルエンザかもしれません」と。
かもしれません?
うん、そうだろうね、と思う。
で、お薬ください。
でもくれなかった。
「換気をよくして、水分をよく取って」
「お仕事は休んでください。とりあえず1週間の Krankenschein を発行します」
で、おしまい。
無力…。
抗生物質ください、という言葉も知らない。
Krankenscheinがどういうものなのかも知らなくて、
それを質問する術もない。
後で知ったけれど、
これを会社に提出すれば、
休んだ期間の給料は保険で賄われて、
しっかり休養をとって体調を整えることができるのだ。
しかし日本を出たばかりの僕は
なんとか熱を下げて仕事にいかなければ、
と思っていた。
体調管理も仕事の一部。
それができない奴が
仕事の成果を上げられるわけがない。
そんなふうに育てられた。
それが僕のいた社会であり、
それが常識であり、責務だった。
幸い翌日が休みだったので、
とにかく眠り続けた。
ものすごく汗をかいて、食べるものも食べて、
休み明け、まだふらつく体をごまかして
僕は出勤して、
何食わぬ顔をして仕事を終えた。
忙しさの中で体調は知らないうちに回復して
どうにかやり過ごしたわけだけれど、
こんなやり方はやっぱりまともではないと
ずいぶん後になって気がつくわけです。
ドイツ人なら、
きっと平気で仕事を休むだろう。
そのためにビジネスプランが停滞しても
理由が理由なので
誰からも咎められることもない。
体調を壊しているのに
無理に出勤することはナンセンスで、
かえって他の人に迷惑をかけてしまうわけですから
休む方も何も恐縮する必要はない。
さいわい、それ以来僕は風邪らしい風邪も引かずに
ドイツ生活15年目を迎えようとしている。
今は巷をコロナが席巻しているわけだが
なんとかサバイブしている。
まだ息をしている。
ウイルスにも
経済にも殺されないように
このサバイバルはまだしばらく続くよね。
どうせなら
「2020 survivor」ってタトゥーでも入れたいくらいだ。