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とうふやさん

小学生になったので、月ちゃんはお母さんに「ひとりでこうえんに いく」と言うつもりでした。

でも、ひとりはこわかったので、おにいちゃんとおねえちゃんにおねがいして、いっしょに団地の公園へ行くことにしました。

せいいっぱいのえがおをつくってお母さんに

「おにいちゃんと、おねえちゃんがいるから、だいじょうぶ」

お母さんはおにいちゃんとおねえちゃんに

「ちゃんと月ちゃんのことみるんよ」

と言いました。

「いってらっしゃい、5時にはかえるんやで」

おかあさんは、ろうかから見ていました。


おにいちゃんがニヤニヤしながら言いました
「しっとうかぁ、とうふやがこどもさらうらしいでぇ」
おねえちゃんも
「カランカランいわしながらおっかけてくるねんで」
ちょうど公園についたのに月ちゃんはピタッと止まってしまいました。
「まいにちこないからだいじょうぶ」
とおにいちゃん
「それにトイレ行って手を洗わずにとうふ売ってるらしいで」
と言いながらおにいちゃんは友だちのほうへ走って行きました。
月ちゃんはおねえちゃんと砂場であそぶことにしました。

でも、月ちゃんはとうふやさんの事であたまがいっぱいです。



とうふやさんがきたらどうしよう!

とうふやさんをたおさないといと!



「おねえちゃん、おおきなあなをほろうよ」

「おとしあな?」

「とうふやさんきたら、おちてもらうねん」

ふたりで穴をほっていましたが、おねえちゃんは水をもってきて、お団子をつくりはじめました。

月ちゃんもお団子づくりにむちゅうになりました。すなばのまわりにおかしがいっぱいできました。


カランカラン!カランカラン!
こうえんのこどもだちがさわぎだしました。
「みんなぁ、にげろぉ」
カランカラン!カランカラン!
「にげろっ!とうふやにさらわれるぞぉ!」
とうふやさんが、カランカラン!カランカラン!とかねをならしながらこうえんにはいってきました。

おにいちゃんたちが楽しそうな顔でさけんでいることに、月ちゃんは気づいていませんでした。
すな場にとうふやさんが近づいてきました。

おねえちゃんがいない!

半べそになりながら月ちゃんはおにいちゃんとおねえちゃんをさがしました。
おねえちゃんが水道のところから、てまねきしています。
とうふやさんがちかづいています。

どうしていいかわからず、固まっている月ちゃんの手をだれかがにぎりました。
「もう5時じや、かえろかぁ」
おにいちゃんでした。
月ちゃんはおにいちゃんとおねえちゃんに手をつないでもらい公園をあとにしました。

うしろで、とうふやさんが
「はやくいえにかえれよ~」
と言っていました。
カランカラン!

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