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「女の子はみんなアボカドが好きだよね」という風潮

いきなりですが思いの丈を叫ばせてください。


すーはー


\私はアボカドが大好きだー!/


こんにちは、アボカド大好き人間こと私です。「好きな食べ物は?」と聞かれたらアボカドと答える生活を、かれこれ20年ほど続けております。


そんな私がアボカド好き(通称アボラー)(今日初めて使ったしおそらく誰も言っていない)になったのは小学生の頃、晩ごはんに出てきたアボカドを食べた時からだと記憶しています。

確か最初に好きだったのは妹で、なぜか私は食わず嫌いをしていたのですが、家族に促されて恐る恐る食べたあの日あの時の衝撃は一生忘れないでしょう。

柔らかな口当たりにまろやかな味わい。そして鼻に抜ける醤油の香り……(醤油につけて食べたからです)。一番最初に森のバターと例えた人間をここに褒め称えたい。トロにも似たこの食べ物に、私はすっかり虜になってしまったのです。

その日以来、母の買い物に付き添っては美味しいアボカドの目利き力を磨き、今ではほぼ100%の確率で最高のアボカドを見つけ出せるようになりました。

悲しいことに私の唯一の特技です。

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(惚れ惚れするくらいに素敵な色合い)

アボカドの美味しい食べ方はなんといっても「醤油につけること」ただそれだけ。シンプル イズ ベスト。シンプル イズ デリシャス。

マグロ丼に乗っていても美味しいし、サラダやハンバーガーに入っているのも素晴らしいですが、"アボカドが主役である"この食べ方が何よりも好きです。

シンプルだからこそ、アボカド選びに失敗した時の衝撃は計り知れず、「私が食べているのは青くさいバナナ?それとも醤油を含んだティッシュ?」というくらいに地獄の食べ物と化すため、そんな日が来ると私は半年くらいアボカドと距離を置いて生活をしてしまうのでした。


***


さて、そんなアボカドライフを過ごす私に変化が訪れたのは社会人になりたての頃。

会社や出会いの場でよく聞かれる「好きな食べ物ってなに?」の質問に対して「アボカドです!」といつも通り元気に答えたある日のこと、今までとは異なる返答がきました。


アボカドかぁ。女の子はみんな好きって言うよね


…そうなん?

声には出さなかったけれど少し驚きました。今まではアボカドが好きだと言ったら「へぇ〜」とか「あんまり食べないな〜」が常だったのに、知らない間にメジャーな食べ物になっていたのです。

栄養価が高くサラダに入れると美味しい上に、美容にも良いと持て囃されるようになったのはいつからでしょうか。私が世間の流行りに疎かっただけでずっと前からそうだったのかもしれませんが、気づいたら「アボカド=女の子が大好きな食べ物」になっていました。


「まあ私も女子だしな〜間違ってはいないわな〜」と思いつつも、なんとも言いがたい寂しさと戸惑い。

「女の子ってみんなアボカドが好きだよね」と言われるたびに(言った人たちに他意も悪気もなく、適当な会話の一つでしかないと認識しつつ)、「そうなんですよ〜ブームに乗っちゃいました。がはは」と返す日々。

そして、そんな風にあたかもノリが良い人間を演じているうちに、いつしか「私にとってアボカドは何?」と、迷走していくのでした。


昔も今も、ただ美味しく食べてきたことに変わりはないはずなのに、「私=アボカドが好き」から、「女の子=アボカドが好き」と、私という主語が消えていく感覚。

結局は、大勢の中の一人にしないでほしいというある種の承認欲求からくるものだと自覚しつつ、その他大勢の中に消えていく「私の好きな食べ物」…。

多くの女性が好む食べ物を、「私はその人たちよりもこのくらい好きなんです!!なぜなら~…」と反論できるほどのエピソードを持ち合わせているわけでもなく、その場の空気を壊すようなこともしたくない。

私のアボカドへの愛はこんなものだったのか……と嘆く日々。いつしか好きな食べ物にアボカドを列挙することをやめてしまいました。


***


そんなある日、noteでこのような記事を見つけました。

生クリームが大好きな人が書いたこの記事に感銘を受け、「私も!!私も何か好きな食べ物について書きたい!!!」と思った瞬間、すぐに頭に思い浮かんだのがアボカドの存在でした。


あれ。何やかんや言って、結局私はアボカドが好きなんだ。どのくらい好きだとか、今までいくつ食べてきたとか、アボカドの育て方にめちゃくちゃ詳しいだとか、アボカドヲタクのごとく誇らしげに語れるものは特にないけれど、それでもやっぱり私はアボカドが好きなんだ。


それはアイドルヲタクにも言えることで、

握手会にたくさん行ったからヲタクとか、生写真をたくさん集めているからヲタクとか、昔から知っている古参だからとか、推しメンに認知されているとか、それは好き度を測る一つの指標になるかもしれないけれど、そうでない人が「好きではない」わけではない。


そんな当たり前のことをすっかり忘れ、私は好きな食べ物に「アボカド」を挙げることすら躊躇してしまっていたんだ。


それに気が付いた時、私は何かから解放されたように、近所のスーパーへ足早に向かいました。




さて、最後にもう一度叫ばせてください。


\私はアボカドが大好きだー!/



終わり。

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