神経科学は私の推し
『カンデル神経科学』はいわゆる「鈍器本」だ。世にいう鈍器本とは,もはや鈍器にもなるくらい厚くて重い書籍のことを指す。1649ページ,2.8キログラムあるのだから,『カンデル神経科学』を鈍器本と呼ぶことに大方の人は賛成してくれるにちがいない。もちろん,揶揄したいがためにそう呼ぶわけではなく,むしろ,大量の情報を生み出した知性や作り手の情熱に対する敬意にウィットを込めていると思っていただきたい。とはいっても,神経科学が生み出してきた知のすべてが『カンデル神経科学』に採録されるわけ