Dentisリリースの裏側聞いてみた「再出発編」
こんにちは。メドレー広報の近藤です。
先日リリースしたクラウド歯科業務支援システム「Dentis(デンティス)」リリースの裏側を聞いてみた「開発初期編」に続く後編です。
↑開発初期編はこちらから
Dentisのあるべき姿とは?を検討していたところに、コロナ禍での社会的要請を受けてオンライン服薬指導などを支援する調剤薬局向けのシステムPharmsの開発をするべく、大きな計画変更を決断した開発チームのみなさん。
2020年9月にPharmsが無事リリースされたあと、一体どうなったのでしょうか。続きをご覧ください!
再出発で立ち返った地点
—Pharmsの立ち上げが落ち着き、Dentis開発計画が再始動していくわけですが、オンライン診療や予約などの先行開発ではなく、方向性の修正が必要だということになってましたよね。
牧さん:
Pharms開発を経た結果、そこで得た設計思想を取り込むことで、悩んでいたポイントが解決されていくんじゃないかと思ったんです。なので、一旦ゼロベースであるべき姿と進むべき道を考え直してみることにしました。
前田さん:
もちろん、ここまで開発を進めたプロダクトではあるんですが、現状の改善ではなくプロダクトデザインを最初からやり直すことで、よりよいプロダクトづくりができるのではないかと。もちろん簡単ではないことは理解していましたが、中途半端な改善よりも、時間をもらったのだからよいものに仕上げたい気持ちが強かったです。
ー思い切った決断ですね…!
立花さん:
たしかに驚きました。でも、その意図だったり、方針だったりはメンバー全員が不思議とすっと理解できて、納得のいくものだったんですよね。
前田さん:
今振り返ると結果的にここで考え直したことは、Dentisにとってよいターニングポイントだったはずです。ここまで作ったから…ではなく、どうしたら顧客や患者さんに真の価値提供ができるのか。新しい患者体験と業務効率化を支援するにはどういうプロダクトを提供して活用してもらう必要があるのか。妥協せずに考え抜くことができました。
牧さん:
新しい医療体験を実現していくには、今までのCLINICSやPharmsで得た知見は十分に活かしつつ、現状の延長線ではないなにかを提案していくことが重要なんだと思います。それをやるのがメドレーのプロダクト開発なのではないかなと。
ー具体的にはどういうことなんでしょうか
牧さん:
メドレーには臨床経験のある医師、看護師、薬剤師などが所属しています。彼らが中心となって現場目線を持ったプロダクト開発に携わっている。そのおかげもあって、既存オペレーションの効率化をするための設計は高い精度でやれてきていると思います。Dentisでいえば立花さんは歯科衛生士、山本さんは歯科助手の経験者です。
前田さん:
でも、「いまある業務の効率化をする」だけでは足りないと思っています。効率化って色々目的がありますが、新しい業務に取り組む時間が作れるっていうのが大きいですよね。そうやって次の一手として新しい業務を追加した先には「こういうことができたらいいな」っていう未来があるはずです。メドレーもその未来を描いて取り組んできています。未来と現在地を結びつけていくのが、プロダクト開発としてあるべき姿なんじゃないかと。
山本さん:
ただ寄り添うだけではなく、橋渡しみたいな役割ですよね。やっぱり医療現場の最前線で働く方々は患者さんに日々向かいあっているのだから、そこまで先のことを考える余裕もないかもしれない。そういったところには寄り添いながらも、もっともっとよい医療の未来をつくるために一緒に変わっていくことができたらいいなって思っています。
立花さん:
今開発に関わっているメンバーはメドレーのさまざまなプロダクト開発に関わってきた人たちです。いろんな経験があるからこそ、他のプロダクトの学びとか反省をみんなが共通認識としてもっている。ドキュメントもたくさんある。そういうところにチームとしても強さをとても感じました。
そういえば、牧さんがPharmsと並行してDentisの基幹システムの開発を進めてくれていましたよね。そのおかげもあって、再結集からはすごいスピード感で進んだ記憶があります。
牧さん:
そうですね、やっぱり時間がかかるものなのでDentis再開も視野に取り組んでいました。2021年春の時点でもUIがまだ固まりきってないくらいだったかと思いますが、新しいDentisの構想が固まって、それぞれ開発を分担して進めて。それからは一気に進んでいきましたね。
新しい業務支援のあり方を提案する
—個々の力とチーム力の賜物だったんですね。再構築のポイントはどこにあったんでしょうか?
前田さん:
UIを設計するにあたり、情報設計からやり直しました。CLINICSでは患者が予約順に並んでいる「受付一覧」の画面が起点になっています。歯科の場合は患者と医師だけではなく、ユニット(治療をする椅子のこと)を考慮することが必要です。そこで業務を行う受付スタッフ・歯科医師・歯科衛生士が共通の情報を一元管理でき、一貫性のある操作性を追求するため、すべての業務の起点を「スケジュール画面」に集約することにしました。
–これがそのスケジュールの画面ですよね。変更前と全然違いますね。
前田さん:
そうですね。この画面ですべてのスタッフが業務の進行状況を把握できますし、受付・カルテ・会計などへの導線も集約しています。
牧さん:
これ、前田さんがさくっと言ってますけどだいぶ画期的なんです。というのは、医療システムって、何よりも安定稼働が求められる一つのポイントではあります。そうすると、今までの習慣や積み重ねの延長線で設計せざるを得ないといった事情もあるんですよね。そこを根本的に設計しなおしているんです。
—なんとなくわかるような気がします。そう考えるとDentisのUIは相当斬新なんですね!ちなみに、前田さんが言ってた「患者さんの予約順の画面起点ではフィットしない」というのはどうしてですか?
前田さん:
シンプルに業務フローが違うからですね。医科の場合は病気や症状にもよりますが、薬をもらったりしたあと、症状が改善されれば、継続して通院しないこともありますよね?で、必要であればまた予約して診察を受けにいくと。一方で歯科の場合、虫歯治療でも定期メンテナンスでも、一回で治療や処置が終わることは少なくて、継続して通院することが割と前提にあるんですね。
立花さん:
次回の予約をとるのは当たり前、2〜3回先まで決めたりすることもある世界なんですよね。
山本さん:
ほかにも、詰め物とかの技工物を院外に発注することもあるので、この日以降じゃないと予約が取れないとか、患者さんが都合のよい時に来ても治療できないこともあります。なので、スタッフやユニットのスケジュール確認や予約管理がしやすいことが重要なんです。
ー予約に対する考え方が、医科と大きく違うんですね。だから全体のスケジュールを起点にしたのだと。
現場のニーズを昇華させるデザインのちから
—他には、Dentisならではの機能や特長はありますか?
立花さん:
カルテ画面の歯列のところですかね。
ーシレツ・・・ちょっと聞き慣れない言葉・・・
前田さん:
この画面の左の上下に歯が並んでいる部分ですね。ポイントとしては、カルテの各種機能と患者情報を一画面で表示したことなんですけど、他社のシステムを調べてもあまりないレイアウトだったんですよね。
これまでだと、必要な情報を見るためにはポップアップでウィンドウをどんどん開いていかないといけない。その点、Dentisではここを並列で見れる。派手な機能や仕様ではないかもしれないんですが、一画面で必要な情報を俯瞰できるのはこれまでにないプロダクトとしての強みなのかなと思っています。
立花さん:
入力という視点だとこれも!歯科医師や衛生士さんが複数いるのに基本的にクリニックにあるレセコンって一台だから、入力の順番待ちが発生してしまうことも多いんですよね。Dentisならインターネットさえつながっていれば医院のどの端末からでも入力できるので、誰かの入力を待たずに複数人で同時に利用もできるところもうれしいポイントです。
—結果的に患者さんの待ち時間も削減されるということですよね。
山本さん:
それでいうと、次回予約機能も歯科助手視点ではすごくありがたいです!空き枠がわかるところ、かなり感動しました。
前田さん:
ほんと?改めて言われるとうれしい(笑)。
山本さん:
さっき話したみたいに歯科って次回予約を取ることが多いのですが、空き枠を探すのが結構面倒なんですよ。
先生の空いているスケジュール、空きユニットをそれぞれ別画面とか紙台帳で照らし合わせないといけなかったり。処置の内容によって次回はいつ頃予約を入れるのがいいか、所要時間はどれくらいなのかも患者さんの状態によってまちまちです。いろいろな条件を考慮して、スタッフがお会計の時スムーズにその空き枠を探せるようになっているんです。
—なるほど、カレンダー画面をカチカチクリックして2週間後に飛んだりとか、紙の予約台帳ペラペラめくって、先生から指示された所要時間に見合った空き枠を見つけだして、…っていうことをいちいちやらなくて良いってことなんですね。
立花さん:
かゆいところに手が届く感じ。テスト運用に協力してくれた歯科医院にも、「すごい!」っていう反応をいただけました!(嬉)
あとはやっぱり、メッセージ設定機能はハガキでリコール(定期メンテナンスのお知らせ)をしている人や、電話で前日リマインドをしている人たちにとってはすごく喜ばれると思います。設定すれば予約の3日前や前日とかに自動でリマインドメッセージを一斉送信できるし。無断キャンセルというステータスになってしまったら予め設定したメッセージを送って再予約を促すこともできます。
—予約管理が重要で絶対に外せない業務だからこそ、仕組み化できるのはインパクト大きそうですね…!
立花さん:
総合的には、今まで散り散りになってたシステムがこうやって全部Dentisひとつでまかなえるところが評価されている大きなポイントですね。
—歯科現場で働いていた経験を持つメンバーと、プロダクトデザイン・開発のエキスパートがいるからこそ、派手じゃないけど現場にありがたいと思ってもらえるプロダクトが生まれるんですね。
「納得できる医療」の実現
—最後に、今後の展望をお伺いしたいんですが、まずビジネスサイドから尾割さん、お願いします!
尾割さん:
プロダクトチームがこんなに想いを持って作ってくれたプロダクトなので、Dentisの価値をしっかり正しく分かりやすくお客さまに伝えて、利用し続けてもらうことが自分の役目です。機能や使いやすさの他に、DentisはCLINICSやPharmsと同じくSaaSなので、「進化し続ける」ことができるのは大きいポイントだと思っています。この強みを活かすために、顧客である歯科医院や患者さんの声をしっかり拾って開発チームに共有し、さらにDentisを進化させていきたいです。それと同時に、顧客を驚かせるような新たな価値も、内なる想像力を働かせて、創って提供していきたいですね。
ー尾割さんは昨年末まで経営企画室長としてM&AやIRなどを主導されてきた中で、今回、強い希望でDentis事業部長を志願されたと聞いてるんですが、なぜそこまでしてこの事業に直接関わりたかったのでしょうか?
尾割さん:
いろいろ理由はありますが、ひとつには、自分は歯並びにコンプレックスがあって。コロナが流行してオンライン会議が増えて、自分の歯を見る機会が増えてちょっとショックで。写真を撮るときもそうですよね。
そういったのを気にしないで思い切り笑えるような世界を作りたい。カラダの健康とともに、ココロの健康も実現していきたいんですよね。けどそれって早めの段階から歯に対する意識を高めないといけないと思うんです。
ー実体験に基づく想いなんですね
尾割さん:
次の予約客が詰まっているからということで、急かされて、流れ作業のように扱う歯科医院もあるかと思えば、かなり丁寧に説明や指導をしてくれるところもあってすごく嬉しかったんですよね。それで歯の健康への意識がぐっと高まりました。たまたまその時は余裕があったのかもしれません。でも、業務を効率化したり、インターネットを上手に活用することによって、こういった歯科の方と患者が向き合える時間が増えるといいなと。
そんな自身の体験からくる想いと、これまでの経験を活かしながら「自分をアップデート」したい想いが重なって、社長の瀧口さんをはじめ、社内のいろんな方にDentisへの異動願いをしました。みんな異口同音にびっくりされましたが、私のチャレンジを応援していただける形になりました。他事業のノウハウやコツなどを積極的に吸収しつつ、Dentisをとおして、メドレーや歯科業界を盛り上げていきたいです。
ーありがとうございます。最後にプロダクト側から牧さん、今後の展望いかがでしょうか。
牧さん:
「納得できる医療」っていうものをもっと伝えていきたいです。歯科医院って、患者みんなが納得して行ってるかっていうと全然そんなことはないと思ってて。自分が何故この治療を受けているのか理由も分からず、言われるがままになってしまっている人も多いと思うんですよね。
でも、本当は専門家の知見にもとづいた診断と治療計画を立てたうえで治療を進めているので、そのあたりが適切に患者に情報提供されて、お互い納得できる形で進められるといいなと思いますね。
患者自身が今日はどういう治療を受けてて、今どういう状態なんだっていうところが、ちゃんと腹落ちした状態で医療を受けている、そういう世界に歯科を変えていきたい。それで初めて患者が主体的に医療に関われるようになって、またひとつ、納得できる医療の実現につながってくのかなと。
そこはやっぱり既存のシステムでは絶対にできないと思っているので、メドレーがやっていくところなんじゃないかなと思います。
ー皆さま、本日はありがとうございました!
※写真は感染対策に配慮しながら撮影しています