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健康保険証からマイナンバーカードへ 〜マイナ保険証で何が変わる?〜

メドレーのGR(ガバメントリレーション)担当の篠崎です。行政や国会議員などとの対話を積み重ねながら、必要なルール作りや規制緩和を推進することで、事業環境を整えていくことを担っています。
今回は現在大きな話題となっている「紙の健康保険証の廃止と代わりとしてのマイナンバーカードの利用」について、詳しく説明したいと思います。

健康保険証としてのマイナンバーカード?

さて皆さんはマイナンバーカードが健康保険証として利用できることをご存知でしょうか。今年6月に公表された「骨太の方針2022」では、以下のような方針が示されました。

  • 医療機関・薬局がマイナンバーカードを保険証として利用できるシステムを導入することを2023年4月から原則義務化する(以下、保険証として利用できるマイナンバーカードのことを「マイナ保険証」と言います)

  • 従来の保険証を原則廃止する

そして、先日、河野デジタル大臣が従来の保険証は2024年秋に廃止すると公表しました。つまり、将来的にはほぼ全ての医療機関・薬局でマイナ保険証を利用することができ、従来の保険証は姿を消していくことになります。
しかしながら、多くの方はまだマイナ保険証を利用したことがなく、身近なものではないのではないでしょうか。

このマイナ保険証は2021年10月に運用開始されましたが、利用できる医療機関・薬局がまだ全体の3割程度(2022年10月時点)と少なく、マイナンバーカード自体の普及もまだ国民の5割程度(2022年9月時点)に留まっています。

マイナ保険証のメリットとは?

ではマイナ保険証により皆さんが受けるメリットは何でしょうか。また政府がこうした政策を進める背景は何でしょうか。

まず、医療機関・薬局や患者さんのメリットとしては、患者さんが同意すれば、これまでの患者さんのお薬情報やメタボ健診の結果などの医療情報を医師・薬剤師が確認できるためより安全で適切な医療を提供(受診)することができます。
患者さんとしては、他院で処方された薬の名前を覚えていない方もいるでしょうし、数が多いとなおさらです。そうしたときに医師・薬剤師が正確な情報を確認してくれるのは心強いですよね。

また、こうした医療情報を事前に医療機関・薬局に共有することにより、これまでの治療や内服中のお薬、アレルギー情報などを、毎回問診票に記入したり口頭で答えたりしなくて済むといった、患者さんの負担が減るメリットも出てくると思います。

今回マイナ保険証の導入に伴い、医療機関・薬局・患者を繋げるネットワークができました。患者さんを繋げるというのは、医療情報の提供について患者さんの同意も確認できるという趣旨です。
現在はまだ共有できる医療情報はごく一部ですが、政府は今後その範囲を広げていく方針です。それに伴い、より安全で適切な医療を受ける環境が整ってくることになります。

また、検査結果やお薬情報の共有などにより、重複している検査やお薬をなくしていくことが可能です。そうすれば医療費をこれまでより抑えることもできるようになります。こうしたことが今回の政策を進める背景にあったと思います。(マイナンバーカードをマイナ保険証として登録することで、7500円分のポイントが貰えるというのもこの後押しですね!)

マイナンバーカードを持ち歩いても大丈夫?

一方で、そもそもマイナンバーカードを持ち歩くことに抵抗感がある方もいるのではないでしょうか。マイナ保険証の携帯は危険なことなのでしょうか。

結論から言いますと、持ち歩いても大きな危険はありません。紛失や盗難の心配は最もですが、

  • マイナンバーカードには、氏名・住所・生年月日・性別・マイナンバーが記載されていますが、12桁のマイナンバー自体を他人に知られることでの危険はありません。マイナンバーだけで個人情報にアクセスすることはできないからです。

  • マイナンバーカードのICチップに入っているのは、氏名・住所・生年月日・性別・個人番号・顔写真のほか公的個人認証の電子証明書であり、税や医療等のプライバシー性の高い個人情報は入っていません。そのICチップの読み取りにも暗証番号が必要で、不正に読み取ろうとするとICチップが自動で壊れる仕組みになっています(暗証番号はご自身の生年月日など分かりやすいものは避ける必要があります)。

  • 顔写真入りのため別人が対面で悪用することは難しいです。なお、紛失した場合は24時間365日マイナンバーカードの一時利用停止を受けつけています。

といった理由から、過度に不安を感じる必要はなさそうです(お時間あればこちらのサイトもご確認下さい)。つまり、マイナンバーカードを落としたとしても、氏名・住所・マイナンバー等の情報は見られてしまいますが、他人がそれ以外の税情報や医療情報といった個人情報にアクセスすることはできないようになっています

我々が普段持ち歩くものとしてクレジットカードがありますが、クレジットカードは顔写真がついておらず、店舗によっては暗証番号も不要であるため、紛失した場合、他人が悪用することが簡単です。それこそ身分証としても利用されることのある従来の保険証も顔写真がついていないため、他人のなりすましが容易です。実は、日頃よく利用しているこれらのカードを紛失した場合の方が悪用されるリスクは高いと言えそうです。

10月からマイナ保険証のほうがちょっとだけお得に!

この10月に診療報酬改定(医療費の価格改定)があり、マイナンバーカードを活用すると、従来の紙の保険証よりもちょっとお得になりました。
初診の際に他の診療費とは別に支払う金額が、マイナ保険証の場合は6円なのに対し、従来の保険証の場合は12円になります。
実は今年の4月から9月まではマイナ保険証の方が従来の保険証より支払い金額が少し高かったのですが、マイナ保険証の普及に繋がらないということで10月から金額が変更されたのです。

これまでは、日常生活でマイナンバーカードのメリットを感じにくいところでしたが、医療という我々に身近なところでのマイナンバーカード利用の影響は大きそうです。

今はまだ多くの方が従来の保険証で医療機関を受診されていると思いますが、皆さんも2年後にはマイナ保険証を持って医療機関を受診しているはずであり、そのとき今よりも医療が便利になった未来が訪れていることを期待したいですね。


( 2022.12.27 追記 )
2022年12月23日に厚生労働省は、2023年4月から12月までの時限的な措置として、以下のように従来の保険証の場合の金額を引き上げる方針を示しました。マイナ保険証のお得感を強めて利用を後押しするようです。

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