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B2Bマーケティング > セールス・マーケティング なんですけどね。(別題:B2B取引におけるマーケティング対象者についてちゃんと考えようよ)

今朝方、某有名メディアにて6月くらいからB2Bマーケティングの特集?連載?がスタートするということで、インタビューを受けていた。

90分ぐらいかな、そのくらい話をした中で、「日本の今のB2Bマーケティング界隈は、B2Bマーケティング=セールス・マーケティングになってしまってる」って話になった。

「プロダクト・マーケティング」の話が出てこない、と。

最近では、「プロダクト・マーケット・フィット(PMF)」と言った話が急に出てくるようになってますけれど、そういう新語・バズワードに飛びつく前に、もっと基本から考えようよ、というのは私と私が周辺(私塾生やゼミ生)に求めるもの。

で、B2Bマーケティングには、ヴァーチカル・マーケティング、フィールド・マーケティング、パートナー(チャネル)・マーケティングとか色々あるんだけれども、どうしても日本の今の「B2Bマーケティング界隈」は、「セールス・マーケティング」をすなわち「B2Bマーケティング」と言っているきらいがある。

「B2Bマーケティング」(あるいはB2B取引)とは何か?

これは次の2つの見方でそれが定義される。

  1. 取引が、2社以上の企業(法人)間で行われる

  2. 取引されるものが、産業財・生産財である。

念のため、「B2Cマーケティング」についても同様に書いておくと

  1. 取引が、企業と消費者の間で行われる

  2. 取引されるものが、消費財である。

となる。

さて、上記が定義であるとして、B2Bにおいて買い手側の購買活動の特徴を挙げるとすると、

  • 購買活動が組織的に行われる(=組織購買)ので、購買の意思決定に関わる人が多様で複雑である。

という点が挙げられる。

さて、このB2Bマーケティング(or B2B取引)の定義や特徴から考えると、売り手企業の営業が最終的に対峙するような「購買担当者」というのは、買い手企業の購買の意思決定に携わる一メンバーに過ぎないという理解に至る。

実際には、ある産業財や生産財が購入されるときには、買い手側の企業が“生産”する何かに使われる。つまり、そこには設計や製造・組み立てに関わる設計者や技術者などが意思決定が存在しているはずであり、購買の意思決定のプロセスにも関与しているDMU ( Decision Making Unit 組織購買の決定者の塊)の一員である。

こうした理解がB2B取引において必要なのであり、特に製造業の世界においては、設計や製造に関わる人と購買担当者がすなわちイコールではなかったりするため、マーケティング的なアプローチは両方に必要なことがある。

後者(=購買担当者)がいわゆる“リード”となる対象者で、こちらは営業に引き渡すための見込み客リストを構築するためのマーケティング活動が主たるものとなる。これが「セールス・マーケティング」である。

一方で、(買い手企業の)設計や製造にかかわる人たちには、自分たち(=売り手企業)が提供するプロダクトがどのように使えるのか、どのように(買い手企業の)製品に埋め込むことができるのか、それによって何が改善できるのか、といったイメージや信頼を持ってもらう必要がある。そうしたプロセスの結果、自社商品が選ばれるようにすことにフォーカスしたマーケティング活動が「プロダクト・マーケティング」である。こちらも「B2Bマーケティング」において、重要な役割・活動なのだ。

例えばの例だが、東京に本社を構えるオリエンタルモーター株式会社の場合、

といったページを設けているのだが、これなどは、オリエンタルモーターのモーターを使って、設計者や技術者にとって何が可能になるのか?の情報を提供している「プロダクト・マーケティング」の視点からの「コンテンツ・マーケティング」となっている。

さすがに「バズる」コンテンツを出して、コンテンツ・マーケティングといってるB2Bマーケティング実務家はもういないと思うが、しかしながら、B2Bコンテンツ・マーケティングが「セールス・マーケティング」のためだけ(=リード獲得)に行われるケースというのはまだまだ多いように思う。しかしB2Bマーケティング全体で考えると、それも偏ったやり方をしてるに過ぎない。

以下に簡単にまとめると、


B2Bにおける、

「プロダクト・マーケティング」と「セールス・マーケティング」の違い。

そもそも「セールス・マーケティング」という概念自体がB2Bマーケティング特有のもの。

「セールス・マーケティング」の対象となるのは(=リード)、購買の実際の担当者(=営業が対峙する相手)である。

一方で「プロダクト・マーケティング」というのは、プロダクトの使い手(設計者・技術者など購入されたプロダクトの実際の使用者)が対象となるのであって、製品仕様や設計や組み立てに関わるような人が、当該プロダクトを使ってどのような製品を作れるか、改良できるかなどをイメージできるようにするのがそのマーケティングの目的。

以上を考えたときに、「B2Bマーケター」や「B2Bマーケティング・コンサルタント」という仕事をしている人たちは、本当に「B2Bマーケティング」をカヴァーする仕事ができてるのだろうか?という疑問。

実際は「セールス・マーケター」や「セールス・マーケティング・コンサルタント」なのではないだろうか。

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