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「臨床検査技師」コンテンツのデザイン 第2話(全3話)

第1話 テーマカラーの決定
第2話 SNS販促キャラクターの作成(本記事)
第3話 『QB検査』のカバーデザイン

メディックメディア メディカルイラストレーターグループ(MIG)のエイリアンです。

▼前回の記事はこちら。

第1話に続いて、「臨床検査技師」コンテンツ関連のデザイン制作についてお伝えします。

第2話のテーマは「SNS販促キャラクターの作成」です。
2021年春、臨床検査技師国家試験問題集『クエスチョン・バンク臨床検査技師(QB検査)』販促のため、オリジナルキャラクターが誕生しました。
名前は「臨犬(りんけん)スッピー」です。

スッピーです!

時は遡り2020年夏、『QB検査』担当者から医学系編集部(※)全体に
「SNS販促を見据えて公式キャラクターを作りたいので、公募します!」
というメールが届きました。
メールにはテーマカラーの「薄い紫」と、「動物または物品をベースにしたキャラクター」という要望が記載されていたほか、「臨床検査学生がよくみる物品」として顕微鏡や心電図の胸部電極などの参考写真が一式添付されていました。

医学系編集部:主に、医師国試問題集・参考書と『病気がみえる』シリーズを制作している編集部。臨床検査技師コンテンツも作っています。

その半年前、『病気がみえる』チームで公式SNSを立ち上げる際に関係者間でキャラクターを公募していたのですが、
当時業務が立て込んでいてキャパオーバーだったエイリアンは自部署の企画にもかかわらず応募を見送ったので、今回こそはと応募することにしました。
みえる系SNS公式キャラクター「みーさん」誕生の経緯についてはこちらの記事をご覧下さい。

初案までに考えたこと

まず、臨床検査学生は多くが20歳前後で7割が女性、医療系専門職を志す堅実な集団…というイメージのもと、
「かわいくてもいいけどかわいすぎない、ちょっとシュール」
な方向性にしようと考えました。

メディックメディアにはすでに動物をベースにしたキャラクターが複数存在していました。ネコ・ウサギ・ゾウが使われていたため、新たに作るとしたらイヌとかネズミとかかな…と考え始めました。

「臨床検査学生がよくみる物品」の参考写真を眺めていると、採取した血液を入れるために使う「スピッツ」が目に留まり、「そういえば『日本スピッツ』っていう犬種のイヌがいるなあ」と思い、
採血スピッツと融合した白いイヌのキャラクターを考えることにしました。

応募した案はこちらです。

メディバンペイントで手書きしました。

テーマカラーの「薄い紫」をスピッツのフタの色にしたので、これは血算用スピッツ! と、透明な胴体に血液が入っているバージョンも入れました。

ちなみにこの時点でいろいろと調べて知ったのは、「スピッツ(spitz)」はドイツ語で「尖っている」という意味の形容詞であり、検体を採る「管」の中でも底が尖ったものを本来「スピッツ管」とよぶ、ということです。
アレ…? 病棟では真空採血管のこと「スピッツ」って呼んでいた気がするな…? まあ、いいことにしよう…。

鼻が尖った日本スピッツ・底が尖ったスピッツ管・スピッツでない採血管

ともあれ、キャラクター案を受け取った担当者からは
「スピッツ(管)もスピッツ(犬)もすでにいただいた案にあったんですが、両者が結合しているのは、はじめての試みです…! つぶらな瞳のイッヌがとてもかわいい…!」
との好感触な返信がありました。

その後、編集部内での投票を経て採用が決まり、12月頃にデータ化に取りかかりました。

イヌに…みえない!?

『QB検査』担当者からの要件は、

  • SNSで使用する度にMIGに依頼しなくてもいいよう、予め顔や体のパーツをたくさんPNGでストックしておき、それを組み合わせて使えるようにしたい

というものでした。

原案をIllustratorでトレースしてデータ化し、ポーズパターンをいくつか作成して担当者に送りました。

すると担当者からは…

お疲れ様です!
とっても可愛いです!!
1点ご相談なのですが、
特に後ろ姿が、人によってはイッヌよりもネコちゃんに見えてしまうという意見がでました。
私は完全にイッヌを見る目で見ているので、特に気にならなかったのですが…

な、なんだってー!? いや、確かに…。

というわけで、担当者と膝をつき合わせて様々なイヌ・ネコの写真及び世間のイヌのキャラクター画像を見比べ、「イヌっぽい要素とはなにか」を研究しました。その結果、

  • 手足を大きくする

  • 顔を縦長にする

  • 首を長くみせる

  • (日本スピッツの場合)耳と顔の段差を無くし、サイズを大きくする

  • (日本スピッツの場合)首回りのモフモフ感を増やす

という知見を得て、パーツのバランスを検討しました。

一番右のバランスのものを担当者を通じて改めて関係者に回覧し、
「イヌっぽくなった!」と感想をもらい、無事にデザインが確定しました。

データ面について

Illustratorでデータ化した際のポイントは、自由にパーツを動かしてポーズや向きを変更できるように、耳・顔・毛・胴体・手足は個別に作成し、パスファインダーで複合シェイプ化しているところです。
また、ベクターデータのままでは線が均一で単調な印象になるので、アピアランス>ラフを適用して手描きっぽい風合いにしました。

境界線を表示したところ。全体をグループ化してからラフを適用しています

なお、スッピーはSNS用のキャラクターではありますが、テーマカラー同様に印刷物に使用する可能性も想定し、予めCMYKモードで作成しました。

スッピーのデザイン確定後、各種SNSのアイコンやヘッダーに使用したイメージを数パターン作成し、見栄えのいい拡大率を検討して、切り出すサイズを決定しました。

データ納品時、『QB検査』チームの皆さんが投稿時に画像を自由に使え、かつエイリアン以外のMIが新しいポーズを作るときでも違和感が出ないように、「スッピーのガイドライン」を作りました。

  • 使用するカラー値、線幅

  • 拡縮しても線幅と効果の比率が変わらないような環境設定

  • 「みーさん」と並べたときのサイズ感

などを記載しました。

ガイドラインの一部

2021年の春、『QB検査』第1版の発行に合わせて公式SNSアカウントが稼動しました。現在もスッピーは各所で活躍してくれています。

公式Twitter:臨検スッピー【QB臨床検査公式】
公式Instagram:【公式】QB臨床検査技師┃メディックメディア

スッピーが『QB検査』担当者の手によって、星座になったり、てるてる坊主を飾ったりと自由に展開されている姿を見るのは嬉しいです。

エイリアン、ネコ派だったのにイヌも好きになっちゃった。

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