『ゼロからマスター 脊椎超音波ガイド下ブロック』
メジカル裏ばなし 編集:高安正和先生、竹内幹伸先生/担当脳神経外科 担当K
刊行に至るまで
とある本にご執筆をいただいた縁から,後に本書を編集いただくことになる竹内幹伸先生に「脳神経外科の先生に向けた超音波の本を作りたいんですけど,どんな内容が必要でしょうか?」といったようなことを訊ねた際に「超音波装置の電源の入れかたから」とお答えいただいたのがはじまりでした。
「そこから!?」と思いましたが,こうして本の形になった今では「そこから」が載っていることこそ本書の魅力と断じられます。
まったくのゼロから超音波ガイド下神経ブロックをはじめた竹内先生だからこそ感じた「壁」とその乗り越えかたにぜひご注目ください。
編者からのご紹介
本テキストは超音波ガイド下ブロックをまったくのゼロからはじめたい人のために書きました。整形外科医,脳神経外科医にとって超音波機器は非常にunfamiliarな領域です。私も実際,医学生のとき以来,触ったこともありませんでした。
「プローブ? プローべ? ってどっちなの?」
「電源はどこにあるの? 電源を入れたらなにをするの?」
というまったくのゼロからはじめましたので,どこにどのような壁があるのかを十分わかっています。
超音波ガイド下ブロックを完璧に行うには,超音波装置の7つのボタン(ダイアル)を使うのみです。簡単に安全に5分で,外来で行うことができます。本テキストはできるだけ文字を減らし,イラスト・写真を多くしました。まずは総論から眺めて,このテキストを持って超音波室に行き,1つめのボタン(電源)を入れてみてください。確実に,あなたの役に立つテキストになっています。また,超音波ガイド下ブロックの簡単な練習方法も載せましたので是非やってみてください。(高安正和先生)
赤ゲラお見せします
超音波ガイド下の神経ブロックの「売り」はなんといっても実際に針が目標に向かって進んでいき,そこで麻酔薬が注入され広がる様子をリアルタイムで確認できるところにあります。
そのためには目標となる神経などの対象物を超音波ビーム上に的確にとらえ,モニタに描出させなければなりません。
というわけで,適切な描出には欠かせない体位やプローブの位置・向きを紙面に落とし込むことに悪戦苦闘していた名残です。こんな赤まみれのゲラを根気よく直していただいた著者の先生方の優しさとご協力で本書の半分はできています。
メジカルこぼれ話
この本以前にも画像診断の書籍などで超音波画像を送っていただくことがありました。「このようにはっきりと神経と周囲の組織が描出され」と添えられた解説文を読むたびに「どこに? 先生にはなにがはっきり見えてるの?」としばしば額にしわを寄せていたものです。
苦肉の策でエコー像に写っているものすべてを細々と蛍光ペンで塗り分けし,「ここは筋肉,ここは血管,こっちが脂肪でこれが神経。で,また筋肉……この黒いのなんだろ? 次の写真にはないし」と丸覚えを試みたりもしていたのですが,本書の作成中にある先生から「必ずしも全部見えてなくてもいい」とお言葉をいただいて衝撃でした。
「合併症を避けて対象物に麻酔薬を送り込むためにはもちろんエコー像を正しく読む必要があるけれど,例えば頚神経ならランドマークをみつけられればそれで的確にブロック注射ができる」「エコーに写るものすべてを確認しようとすると『(個人差などで)この組織がみつけられないから不安で注射できない』となりかねない」というお話に得心しきりだったのですが,これも「まったく超音波装置に触ったことがなくても,神経ブロックをしたことがなくても,外来で,5分で,簡単に選択的神経根ブロックができるようになる」を標榜する本書を裏打ちするエピソードだったと思います。
とはいえ,それも肝心のランドマークがきちんと読める先生方だからこそ。間違ったキャプションをつけたりすることのないよう「ここの薄暗いところが神経かな? なんで超音波には異方性があるんだ……」と相変わらず超音波画像の前で確認のための蛍光ペンを握る日々です。
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