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安全安心だけでいいのか?今あえて考えたい「安心」と「信頼」の違いについて


お店や施設を選ぶとき、「安心かどうか」というのは、たぶん以前から選択基準のひとつになっていたかもしれませんが、今ほどには意識されていなくて、日常の行動範囲のなかでは無意識の領域に近かったような気がします。
反対に人を迎え入れるという立場になったときは、来訪者の安心感を大切にしようという気持ちが自然に働いて、「安心」について考える機会が増えたのではないでしょうか。                       何をもって安心かというのは人それぞれだということをふまえたうえで、いま改めて安心の先にある「信頼」について考えてみる、そんなタイミングだと考えます。

クリニックにおける安心

クリニックではもともと安全安心が大前提みたいなところがあります。
改めて外からの視点で「安心」について考察すると、今までの自分たちの当たり前を(患者さんの安心のために)「あえて伝えよう」ということになったりします。その多くは目に見える範囲の安心です。

一方で、来院する患者さんの多くは不安な気持ちだろうという想像から、患者さんの不安を取り除くためのコミュニケーションを心がけています。
例えば、患者さんの様子を観察して、そこから想像力を働かせて適切な声かけをするなどの対応です。

「安全」であることを伝え、不安な気持ちを取り除くことは大事。
でも、それだけでいいのだろうか?
以前から私たちが取り組んできたことは、治療や施術の先にある未来の希望につながることではなかったか?
歯科クリニックのメンバーと「安全安心」への配慮に捉われる日々を経て、最近そのように思うようになりました。

そこで、メンバーと「安心」と「信頼」の違いについて考え、対話をするという機会を作りました。

安全安心を土台とした「信頼」に至る働きかけ

各々がなんとなく持っている「安心」と「信頼」という言葉に対するイメージを出し合ったあと、自分たちが実際に診療の場面で行っていることをピックアップして、それらの働きかけを他者視点で考察してみました。
たとえば、
・患者さんの態度や話したことで、気になることがあったらスルーしないで質問してみる。
・患者さんの職業に興味を持つ
など、コミュニケーションにおいて工夫してきたことは「信頼」につながっていると考えられます。
さらにわかったことがあります。
それは一言でいうと「自分たちには、患者さんに信頼してほしいという強い思いがあった」ということです。                   そして「信頼につながる働きかけをたくさん工夫してきた」ということにも改めて気づくことができました。

信頼関係を築くことで期待できる未来の可能性

「医師と患者の両方が、医学的な意思決定のプロセスに参加する」という意味の「シェアード・ディシジョン・メイキング」(Shared decision-making in medicine)という言葉があります。

患者の立場で私も「自己決定」の意志を持ちたいと思います。
けれども、「医療という専門分野のことを自分だけで決めるのはムリ」
なので、専門家と一緒に納得したうえで決めるのが理想的です。
決めるにあたっては、じっくり腰を据えて取り組まなくてはならないものであったり、最新の治療であるがゆえにリスクを伴うものであったり、治療費が高額であったり、患者側からするとハードルが高いと感じられることがあります。
ではどうすればハードルを越えられるか。

ハードルを越えるための一つの重要な要素が、お互いを信頼する気持ちではないでしょうか。
良い治療をするうえで信頼関係を築くことが大切だということを、経験上わかっているからこそ、クリニックのチームメンバーは信頼につながる働きかけをしてきたのです。

安心は安定的な状態を作るけれども前に進むエネルギーがいまひとつ。
そこに信頼がプラスされると「確信が持てない未来に対しても挑戦してみよう」というエネルギーが湧いてきて、医療者と患者が一緒に治療に取り組むことを可能にします。

今回の「安心」と「信頼」の違いの考察から始まった対話では、信頼への取り組みが自分たちのやりがいにもつながっていることが確認できました。
簡単なことではないけれど、自分も相手も信じることができる、その先にはお互いをさらに豊かなものにしてくれるモノやコトとの出会いが待っている、そのように思います。

“コミュニケーションの土台を整える”
スタッフ教育のための動画教材                          『チーム作りができる クリニックコミュニケーション講座』    clinic-communication.jp


教材提供
株式会社メディカル・ブランド・デザイン
http://www.medical-bd.com

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