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女性放射線科医のリアルライフ~聖マリアンナ医科大学救急医学救急放射線部門│昆 祐理~

はじめに

 私は青森県出身で、外傷診療が好きな地方の救急医でした。IVRを迅速に行えずに患者さんを失ったことからIVRを学ぼうと2011年に聖マリアンナ医科大学放射線医学・救急医学救急放射線部門の門をたたき、放射線医学の修練を開始しました。
救急専門医、放射線診断専門医、IVR専門医を取得し、現在は聖マリアンナ医科大学救急医学救急放射線部門で、救急診療、救急診療における画像診断、IVRを行っています。
 通常の放射線科勤務とは若干異なる、私のリアルライフをちょっとだけ教えます。
 まず、私の年間スケジュールとして平成31年度のスケジュール予定をみると、現段階で予定しているものを含め表1のようになります。

DIRECT研究会との出会い

私は、救急画像診断とIVRの普及と質の向上から救命率の改善に関与することを目的としているDIRECT研究会という会に所属しており、この表にもあるようにDIRECT研究会に関連するセミナーに多く参加しています。DIRECT研究会は、救急画像診断・外傷画像診断・外傷IVRのセミナーを開催し、国際的
な学術活動にもかかわっている団体です。そのため、海外の学会やセミナーに参加させていただく機会をいただいています。
DIRECT研究会には複数名の女医さんが参加しており、同じ志をもって働いている女医さんは私の大きな支えとなっています。症例の相談はもちろん、仕事にまつわるいろいろな悩み、恋愛のことや家族のことなど何でも相談で、私の心の支えになっています。どんな立場であっても、いろいろ相談できる仲間がいるっていいですよね。


人生を変えた聖マリアンナ医科大学での研修

 DIRECT研究会に所属するには、聖マリアンナ医科大学で放射線診療の修練を開始したことがきっかけとなっています。聖マリアンナ医科大学の救急医学には、歴史的に救急放射線部門があり、救急外来の隣にある救急読影室で24時間365日オンタイム読影を行っています。多くの救命救急センターや救急外来で夜間や休日に画像が撮像された場合、救急医が読影していることがほとんどで、私も昔はそういう勤務体制で働いていました。
 皆様の施設ではいかがでしょうか?
 翌日画像を読影するようなシステムの場合、前日の夜に撮像された画像を読影して見落としに気が付くことも経験されると思います。そういったとき皆様はどう思いますか?
① 大変!早く知らせないと!
② また救急医の見落としか ┐(´д`)┌ ヤレヤレ
③ 管理加算取れればいいからとりあえずレポートには記載するけど、レポートをチェックするのは救急医の役目でしょ(-。-#) っっったくもう、これだから救急医は。
④ 救急医が見落とさないようにレクチャーを企画しよう!
⑤ 忙しい救急医のために、放射線科医も積極的に夜勤しよう(^▽^)
いかがでしょうか? おそらく、積極的に⑤が選ばれることはないと思います。放射線科の夜勤が行われ、夜間でもオンタイムに読影レポートが作成される施設は全国的に非常に少ないと思います。多くは夜間や休日は翌営業日にレポートが作成されると思います。
 この状況を救急医の立場で見てみると、翌日に放射線科のレポートが上がって見落としに気が付いてもその時には患者さんは帰っている。放射線科医には冷ややかな目で見られるし、見落としていたら後日患者さんにも信頼を得られないかもしれない。けどやっぱり忙しい状況で画像だけを集中して読むことができない。ストレスですよね。そのストレスを少しでも軽減するために、救急医はよく「翌日画像診断の専門の先生に見てもらって後で異常が見つかることがあるかもしれない」ということを患者さんに必ず言い添えるようにしています。
 ではさらに患者さんの立場に立ってみたらどうでしょうか。翌日になって異常が見つかるかもしれないなんて、安心できませんよね。けど、そういわれたから翌日改めて文句を言うこともできない。自分が患者さんの立場だったら嫌ですよね。もちろんIVRに対しても似たようなことが当てはまります。IVRが必要かもしれないと思ってIVR医を呼んでもすぐに来てくれない、来たところで適応が違うといわれたり、呼ばないなら呼ばないでなんで呼ばないんだといわれたり、、、働くほうも幸せで、患者さんをより幸せにできる方法はないものでしょうか?
 余分な話が長くなってしまいましたが、だから今こういう立場で仕事をしています。

プライベートをちら見せ

 救急放射線だなんて、なんだか忙しそうで、肉食系の放射線科医で、なんだか大変そう、とお思いかもしれません。次にそんな私のプライベートについてお話しします。
 女医の1/3は未婚、1/3は既婚、1/3は離婚経験ととあるデータにあると思いますが、私はこの中の最後の離婚経験者です。お相手は非医療従事者で、1年の結婚生活と1年の別居生活を経て、2年間の婚姻関係を解消しました。若いころは漠然と他者に倣うように結婚したいと思っていましたが、今はそうは思いません。大切な友人もいますし、離婚してはじめて男女の友情を信用できるようになりました。
 しかし、さすがに離婚当初はすがすがしい反面、寂しいと思うこともあり、犬を飼い始めました。読者の皆様の「あ~そうきたか」「もう終わりだな」という声が聞こえてきそうですが、ご想像通り、すべてのストレスの癒しとなってくれる彼女の存在は、非常に大きな存在で、そのため別に結婚しなくてもと思っています。痛いですか(笑)? 当の本人は仕事も楽しく、
プライベートも結婚時代より何倍も充実しています。
 この年(39歳)になっても友達ができますし、最近、日本にいる外国人との国際交流パーティーに参加する機会があり、意外に学びがあったので、できればまた行きたいなと思ってはいます。人生様々で、良い旦那さんに出会って、良い家庭を作ることも非常に大事な人生の一部分だと思います。私はそういう能力が少ないので、自分なりに人生を楽しみながら、自分が持っている医師免許という資格、過去に自分が診療したすべての患者様のことを考え、今の道に進んでいます。ただまぁ、人生何があるかわかりませんから、めちゃくちゃイケメンのお金持ちと恋に落ちたら仕事をどうするかはわかりません。けど、万が一そんなことがあっても結局は仕事すると思いますがね
(笑)。


おわりに

 女性救急放射線科医のリアルライフは女性放射線科医のものとは少し異なるものだと思います。正直、少しつらいなと思う時もありますが、そういう時は、失った患者さんやその家族、元気になって笑顔を見せてくれた患者さんをいつも思い出しています。たくさんの患者さんが自分の信念の支えになってくれています。
 放射線科医の多くを占める画像診断医は、おそらく元気になった患者さんが、退院後読影室に訪れてくるということはないと思いますが、私が修練した聖マリアンナ医科大学の放射線医学は、臨床⇄放射線科側の風通しが良いこと、画像でも経過をかならずfollowしてよくなった喜び・悪化した場合の治療方針を臨床医とともに悩んだりする、臨床に近い医局だと思います。
 IVRという治療の武器に長けているという面も関与しているからかもしれません。積極的に臨床に参加する、そういう放射線医学の良い医局の雰囲気もあって、じゃじゃ馬救急医でも気持ちよく修練でき、今の立場があります。
 私のような生き方・働き方は決して多くの人にお勧めできるものではありませんが、救命の喜びに触れたい、そういう稀な気持ちをお持ちの先生や、私みたいな突然変異の働き方にご興味のある先生は、お気軽にご連絡いただければと思います。また、何かに迷われている場合など、聖マリアンナ医科大学放射線医学は私のような人間でも受け入れてくれたオープンな医局ですので、いつでも見学・修練は受け入れてくれると思います。


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