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リメイク/リマスターは三方よし

近年ビデオゲーム業界では、過去に発売した作品を現世代機に適応させて売り出す手法が多く見られるようになってきました。
基本のシステムは変えずにグラフィックや操作性を改善させるリマスターや、根幹のストーリーや世界観以外を一新し、時にはゲームジャンルを変更するほどに作り直すリメイク等の手法です。それ以外にもコンセプトのみを残しストーリーを含め一から作品を再起するリブートも出てきました。
近年で有名な例としては、リメイクではバイオハザード4やファイナルファンタジーVII、リマスターではグランドセフトオートやメトロイドプライム、リブートではゴッドオブウォーやセインツロウと言ったところでしょうか。勿論これ以外の作品も多数リリースされ、発売予定の作品も続々発表されています。
英語版のWikipediaに、今までに発売されたリメイク、リマスターゲームの一覧が載っています。これを見ると2014年頃から多くのゲームがリメイク/リマスターの形で販売されていることが分かります。それ以前にも採用されているようですが、主にPS4世代から活発になった印象を受けます。

理由は色々と推察できます。
人口推移と同じように高齢化するゲーマー向けに、昔馴染みのゲームを発売すれば一定数の売上は期待できるとか、外注できるから低コストで済むし、その間に新作の開発が出来るとか、単純に新規でブランドやipを立ち上げるのにかかるリスクが大きくなったとか。理由を考えればキリがありませんが、結局「売れるから」というのが一番大きい理由だと思います。

売り手としては一度作ったことのあるゲームやシリーズの手直しのため、一から全て立ち上げるよりは負担が少ないと思われます。昔販売したデータやレビューがあれば何が好評で何が不要かも分かりますから、手を加える際にも役立つはずです。ゲームエンジンごと変えるような大規模なリメイクならコストはかかるでしょうが、Bluepoint Gamesのような移植やリメイクを得意とするスタジオと協力すれば人員は確保できると思われます。

買い手としては自身が一度プレイしたゲームという事実は強く刺さるでしょう。自身の体験は他者のレビューよりも色濃く記憶に残っているはずです(多少美化されている場合もありますが)。特に近年はインディーも含めるとかなり多くのゲームがリリースされていますから、多すぎて選べない場合には自分が良い思い出を持っているゲームに傾倒するのも無理はありません。設備的な面でも現代機やPCでリリースされた方が便利です。赤白黄の3色ケーブルをブラウン管テレビに刺してゲームをする人は稀でしょうし。

世間(将来的な購買層)としても、過去に好評だったゲームは全く前評判の無いゲームを買うよりも安心できると思います。そもそもリメイクやリマスターは原作がある程度売れていないと発売されないでしょうから、当時は世代では無かったゲーマーにとっては、過去の名作をプレイするのに最適な方法と言えます。しかし、レビューに求められる水準が発売される年代によって異なる点には注意が必要です。改良が加わったとはいえ、20年前の85点が現代の75点より優れているとは限りません。

このようにリメイク/リマスターが市場に多く出回るのは悲しいことではありません。むしろ関係者全員にメリットがあるとも言えるでしょう。そもそもトロフィーや実績を確認すれば分かりますがゲームを買ってもクリアまで辿り着く割合の方が少数派なんですから、過去の遺物を買ってもらって積んでもらう方が売れるか分からない新作を発売するより余程マシでしょう。
あるマンガのセリフを思い出します。曰く「ノスタルジーは金になる」。

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