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これからの未来を担う子どもへの政策を!【幼児教育の経済学】

こんばんは。
いきなりではありますが、みなさん、ECEという言葉を聞いたことはありますか。

Early Childhood Education(ECE)について初めて知ったのは、現在所属している大学のサークル「国際医療研究会(KIK)」で一昨年まで顧問をしてくださった先生とサークルのメンバーで食事をしていたときのことです。

将来医療に携わる身として教育分野にも関わりたいという思いを先生に伝えたときに教えてくださった言葉で、ECEについてより深く学ぶためにも、今回紹介する「幼児教育の経済学」は前々から気になっていたので読んでみることにしました。

ECEは日本語で就学前教育を指します。

この就学前教育の重要性、有用性について語られているのが今回紹介する本である、

「幼児教育の経済学」

なのです。

なぜ就学前教育が重要なのか。

この疑問を解決したのが、ノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマン氏の40年以上にわたる追跡調査です。

この調査によって分かったことをこれから紹介します。

まず、教育というのは学力検査やIQテストによって測ることができる認知的スキルを身につける、というのはもちろんのことですが、それだけでは1人の人間として社会生活を送ることはできず、この認知的スキルに加えて、肉体的・精神的健康や根気強さ、注意深さ、意欲、自信といった社会的・情動的性質といった非認知的スキルも欠かせません。

これら人生の人生の好機を得るために重要な役割を果たす認知・非認知能力の格差は、どの社会経済的集団でも非常に早くから開くと言われます。

例えば、子どもの18歳時点での認知的到達度(大学へ進学するかどうかの強力な予後因子)を母親の学歴別にまとめてみると、子どもが小学校へ入学する6歳の時点ですでに格差が明白だということが言われています。
遺伝的な理由も考慮されて思春期の学習到達度試験スコアを遺伝子の違いに遡って分析されましたが、そうした試験の成績が、実は部分的には学校教育や家庭環境によってもたらされるものであることが明らかにされました。

また、大卒の母親はそうでない母親よりも育児に多くの時間を割き、子どもの情操教育の熱心であるという結果や、両親が揃っている家庭と比較して、一人親家庭は子どもへの投資にあまり積極的ではないという研究結果もあります。

このような状況を考えると、十分な教育への投資が出来ないことで生まれる格差は世代を超えて広がっていくことが分かります。

さらには、家庭内暴力や虐待、ネグレクトといった幼児期の悲惨な体験が成人してからの病気や医療費の多さ、うつ病や自殺の増加、アルコールや麻薬の濫用、労働能力や社会的機能の貧しさ、能力的な障害、次世代の能力的欠陥などと相関関係があると分かっている他、幼少期の親密なふれあいが脳の機能をつかさどる重要な部分の発達に関連していることも、幼児期からの教育支援の必要性は高いと考えられます。

実際に、幼少期の介入がこれらの状況に変化をもたらす例として、恵まれない家庭の子どもを対象に幼少期の環境を実質的に改善した複数の研究があり、その中でもペリー就学前プロジェクト、アベセダリアンプロジェクトという2つの研究は無作為割り当てを利用し、こどもが成長するまで追跡調査をしたことから意義深いと言われています。

その中のペリー就学前プロジェクトをかいつまんで説明します。

(ペリー就学前プロジェクト)
経済的に恵まれない3歳から4歳のアフリカ系アメリカ人の子どもたちを対象に、毎日毎日午前中は学校で教育を施し、週に1度午後に先生が家庭訪問をして指導にあたるというもので、2年間にわたって続けられた就学前教育終了後、この実験の被験者となった子どもたちと、就学前教育を受けなかった同じような経済的境遇にある子どもたちとの間でその後の経済的状況や生活の質にどのような違いが起きるのかを約40年にわたって追跡したもの。
40歳になった時点でIQの大きな差は見られなかったものの、就学前教育を受けたグループでは高校卒業率や持ち家率、平均所得が高く、また、婚外子を持つ比率や生活保護受給率、逮捕者率が低いという結果が出た。

このような結果が示すのは、幼少期に親から受けるしつけや教育が子どもに決定的かつ永続的な影響をもたらすこと、さらには、そうした影響がIQの変化ではなく、意欲や継続力などの非認知的な要素の変化によって生じるという極めて重要な点です。

さらに、就学前の幼児教育という形で公的投資をすることは経済学的に見ても非常に収益率が高いと言われ、就学前教育に恵まれていない貧困層の子どもたちに投資することは、彼らの将来の所得を高めるだけでなく、健康も向上させることから、将来の社会保障費の軽減にもつながり、租税負担力も高めるという意味で、公平性と効率性の両方に効果があると考えられると言われます。

しかし、この調査にもいくつかの問題はあり、100人に満たないサンプル数でこの調査が行われていることや経済水準による効果の違いなど様々に挙げることができます。また、幼少期の不平等をもたらす原因もはっきりと特定することはできないという点もありますが、

子どもが成長する上で家族が重要な役割を果たす

という点は確かなことです。

これらの調査ではサンプル数が少なく、これを日本の人口に置き換えて考えると、ペリー就学前プロジェクト同等の就学前教育をするには経済面から考えて現実的ではないですが、この事実が分かった以上、就学前教育やそれに関わる親への教育に対する支援が必要であり、今後も議論の余地が十分にあると言えます。

現在日本でも相対的貧困率は上昇傾向であり、この現状をもっと身近なものとして捉え、社会全体でこの課題に取り組んでいくべきだと思います。

記事を習慣をつける前に読んでいた「学力の経済学」も今回の話題に密接に関わっているので改めて読み直してみようと思います。
それでは。

p.s. 本日よりSHIPというヘルスケアのオンラインコミュニティに正式参加できました!話したいことがたくさんあるのでまた別記事にしたいと思います笑

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