[スタートレイル通信] LHTRPG高難易度のススメ
今回は、LHTRPGの高難易度攻略について解説していきたいと思う。
シナリオで遊ぶ際に、参考にしてくれると助かる。
初めに述べておくと、この文章は普通のシナリオだと一方的にボスを虐殺してしまうような鬼畜冒険者を担当するGMに向けた文章である。
まず、高難易度ってなんぞや?
大前提として、高難易度シナリオはGMの手腕がかなり問われる。その上で、きちんとメンバーに確認を取ること。これがない高難易度シナリオはただのGMのイキリにしかならない。
話を戻そう。高難易度シナリオとは、LHTRPGにおいて「難易度:ハード」以上、かつボスにEXスキルを与えた「強化ボス」状態で冒険を行うことを指す。以下が公式が提示している難易度調整の例だ。
公式準拠の難易度は何を意味するか?
GM因果力が増える。そう書くと一見強そうに見えるが、しかしこれが本当に強い。ゲームブレイカーである。
正直、ベリーハード以上はGM因果力が12~16点ほど与えられるので、手に余る。
とりあえず一般的な使い方として、エネミーの「回避」「命中」に1〜2個ダイスを追加、「振り直し」を大量に行ってみる。全部必中確定回避。当然、冒険者パーティーは易々と全滅するだろう。これではいけない。
ではなぜ公式は手に余るほどの因果力を高難易度シナリオに与えたのか。
「因果力」は「必殺技」であるからである。
PLに与えられる因果力とは、その強い運命力で「本来ならできないことを、運命をねじ曲げるほどの力で奇跡を起こす」という、ドラマチックな展開を生み出すために設計されているように思える。(ここでタンクが落ちたらまずい!という場面で因果力を注ぎ込んでタンクが生存するシーンは易々と想像できるだろう。)
つまり、因果力は「切り札」「最後の手段」に近いのである。
それを、GMは大量に持っている。GMが魔王に見えてくるのではないだろうか。
ログホラTRPG : 戦闘の印象
ボスとしての強さを語る前に、ログホラTRPGの戦闘の特徴を見ていこう。
戦闘システムとしてはグリッドスタイル戦闘で、ダイスはJRPGにありがちなD6達成値判定スタイル。受けた印象としては、「 ドラクエやFF 」ではなく手動で「ファイヤーエムブレム」をやっている感覚に近いだろうか。
特筆すべきはやはり「ヘイト」システムで、このシステムがログホラTRPGの面白さである。エネミーがヘイトの最も高い味方を優先して狙ってくる上に、最もヘイトの高い冒険者には追加ダメージがあるあたり、本当にMMOをやっている感覚になる。
前置きはここまでとして、ここからが本題だ。
戦闘をデザインする上で最も大事なのが「エネミーの強さ」である。
当たり前ではあるが、冒険者が倒せる難易度であり、かつ戦闘に退屈しないのが良いエネミーである。
私はエネミーをデザインする際、そのエネミーを[継戦能力] [脅威度] [戦況掌握能力]という項目で設計、判断している。
冒険者が「危険の予測」を行う際に、まず最初に見るのは [脅威度] だ。
単純に大きな数字(大ダメージetc…)は、冒険者たちに [ 戦闘不能 ] という恐怖を与えるからである。では、デカい数字(ダメージ)を示して冒険者をビビらせればいいのかというと、そういうわけでもない。
このエネミーデザインは運用する際に「事故」を起こしやすいからだ。
このゲームは「ヘイト管理」を行う以上、1〜2ターン目にタンクが集中砲火を浴びることが少なくない。雑魚を引き連れたボス戦では、大概「近接モブ×3、遠距離魔法使い×2、ボス×1」のような構成が多い。
しかしながら、このLHTRPGというゲームは、どんなに強く戦士職を作っても《同CR帯のエネミー2.5発分》程度の防御力にしかならない。ヒーラーの回復を入れても《同CR帯のエネミー4発分》受け切るのがやっとである。
そこで先ほどのボスの構成を見てみよう。このままいけば、ボスの《再行動》も入れて《同CR帯のエネミー6〜7発分》のダメージを負うことになる。およそ、魔法使いや武器攻撃職が頑張っても2体ほどしか仕留められず、《5体分》ほどはタンクが受けるだろう。
もちろんタンクが受け切れるはずもなく1ターン目であっけなく陥落、パーティ崩壊。もしくはうまく攻撃を捌けたら攻撃職が雑魚を散らしてエネミー側の攻撃力が足りずに消化試合。
接敵した1ターン目が最も盛り上がって、山場を越えると試合終了。LHTRPGのよくある戦闘である。これではあまりに短調なゲームになってしまう。
このまま、「因果力」を用いてエネミーを強くすることは「1ターン目の山場」を難しくしているだけであって、戦闘全体が盛り上がっているとは言い難い。
高難易度エネミーのあるべき姿とは。
これは、よく難易度調整に使われる表だ。
この表でGMが目指すべきは[危険な戦場]なのだが、高難度にくるような冒険者がHP30%以下に減らないような戦場で満足するはずがない。なんなら容易に対策して無傷で突破されることも少なくない。(実際にあった)では、エネミー(特にボスエネミー)のするべきこととはなんだろうか。
それは冒険者に「危険の予測」を行わせ、その「予測」を狂わせることだ。
つまり、冒険者たちに対して「この技を喰らったら、戦線が崩壊して全滅しかねない」という脅威を抱かせ対策させる。その上で「奥の手」を出し、(冒険者たちがその場で対処できうる範囲内で)戦況をかき乱すことが、良いボスであると言えるだろう。
高難易度に配られる大量の因果力は「戦況をかき乱す」ためのより強い、より大規模な [エネミーEX] を抱えているという暗示なのであろう。
高難易度のボス作成について
高難易度でシナリオを回す際は、既存のシナリオボスを用いるにしても自らボスを作り出すにしても、ポイントを押さえてエネミーデータを改変する必要があるだろう。個人的に、ボスに大切なのは[継戦能力] と[戦況掌握能力] であろうと考える。
エネミーの基本データを決める
まず、GMとしてエネミーの基本データを決める必要がある。
これは、公式がログホラウェンズデイ23でディベロッパーに向けて述べている「戦闘は、危険そのものではなく、危険を感じるデザインにするべきである」という内容に沿ったものだ。
例えば、例の中にある[ 追撃:100 ]というデザインは「危険は感じる(一撃で戦闘不能になりうる)が、容易く対処できる(因果力1点で解除できる)」デザインであろう。
これに従うと、単純にボスのダメージや効果範囲を上げるのは好ましくない。
パーティ全体を容易く戦闘不能にする事故が起こりやすくなってしまうからだ。
同じダメージであっても上の例のようにBSを加えるなどして、冒険者が関与できる余地を残しておくべきだ。
またボス戦であるからして、ボスが序盤で退場しては面白みに欠ける。
高難易度と宣言した時点で冒険者たちは気を引き締め、ガチガチのビルドを組んでくるに違いない。
実際、パーティー単位でガチビルドを組むとCR2程度でも魔法職は平気で30点オーバーの攻撃魔法をぶちこんでくるし、暗殺者なんてアサシネイト込みで一撃78点も出してくる。(実話)並大抵のボスでは総攻撃2ターンで簡単に沈んでしまうだろう。
そのためにも、上記のような工夫を施して簡単に死なないような工夫をするべきだ。
1.切り札を準備しよう
概して冒険者は、耐久が高いボスよりも[ 脅威度 ] の高いスピアータイプのモブから各個撃破することが多いため、戦闘序盤のボスは無視されがちである。
そのため、ボスの存在感を示すために、冒険者に「リソースを多少削ったとしてもボスは早く対処しないとまずそうだ」と思わせるための手段が必要である。これは、直接的に「敗北」を導くものではなく、「対処可能だが、対処しないと大きな被害が出る」というデザインにするべきだ。
上の例のように、目に見えて対処すべき「ハマると怖いコンビネーション」を提示することで、戦闘前半に1ターン目の攻防戦以外の緊張感をもたらすことができる。
2.奥の手EXを準備しよう
一度、ボスの仕掛けてきた「危険」を対処し切った冒険者たちは安心する。
「このままいけば、ボスを削り切れるだろう」と。
(実際、そのまま終わるシナリオも多い)
このような場合ボスの側から「戦況をひっくり返す奥の手」を繰り出すことで、冒険者側の「危険の予測」を狂わせ、戦闘後半に緊張感を与えることができる。
上の例のような因果力を惜しげもなく使った大規模技を打つと、ボスの必殺技っぽくて面白い。また、下二つのように行動パターン変化なんかもMMOのボスっぽい動きになるだろう。
因果力を3〜4点投げうって使ってくる [ エネミーEX ] は冒険者から見たら安定した戦況を一撃でひっくり返す「魔王の一撃」に見えるかもしれない
ここで大事なのは、冒険者が対処しきれない苦難を与えないことだ。
冒険者は「1.ボスの切り札対処」の段階でリソースの半分近くは消費してしまっている。そんなときに、「モブエネミー全員をHP全快で復活」「盤面全体に100ダメージ」など理不尽な困難を与えてしまっては対処しようがない。
「最後のリソースを出し切れば、ギリギリ対処のしようがある」程度の難しさにしておくほうが良い。
のような展開が理想だろう。
3.移動を強制させよう。
ログホラTRPGの戦闘がグダる要因として【戦況が動かない】ことが一番に挙げられる。色々な要因があるが、最も大きいのは「移動の有無」だろう。
ログホラTRPGはグリッドシステムを採用している以上、「ポジションどり」がかなり大事なゲームである。一度良いポジションを取ってしまった場合、冒険者側から動くことはほとんどない。(一方的に攻撃が届く位置の魔法攻撃職や、ボスに張り付いた戦士職など)
特に、後衛からダメージを飛ばしてくる魔法職をどう動かして、HPを削るかが鍵になってくる。しかし、エネミーは【ヘイトの高い敵を優先して狙う】というログホラの大前提がある以上、タンクを無視できないし、してはならない。(それはログホラの大前提を崩すものだし、何よりタンクの見せ場を奪うことになる)
だからこそ上の例のように、ポジション取りを難しくする技をボスエネミーに付与することで、エネミー側から「冒険者が移動しなければいけないアクション」を嗾け、戦闘に動きを生み出すことができる。
シナリオ開始!高難易度キーパリングについて
シナリオが開始して最も大切なことは「GMと冒険者は仲間である」という意識である。概して、高難易度シナリオのGMは殺気を抑えられず冒険者を全滅させてしまうことがままある。
GMは助演であって、主役ではない。
全滅して喜ぶ冒険者はいないはずだ。いくら高難度を冒険者が望んだとしても、彼らが体験したいのは「全滅するかどうかの瀬戸際を、悪知恵を生かして生き残ること」なのだ。
GMは適切に殺気を放ち、考えた奥の手で愉悦し、最後には全力を出し切った冒険者にボコボコにされ泣き叫ぶのが筋というものだろう。美しく負けられるGMの元で遊ぶ戦闘系TRPGは特に楽しい。
大量の因果力で愉悦しよう
これがシナリオ開始の挨拶みたいなものである。モブ戦闘で1回くらい因果力を使って、因果力余ってるアピールをしよう。ボス戦の恐怖が増し、入念に準備をしてくれるようになるはずだ。
殺気を隠さない
ダイスを振る時は冒険者を倒すつもりで振ろう。絶対に手は抜かない。
(ここで手を抜くと結構バレる)
特に、デバフを振り撒く系のボスの場合は回避されたらたまったものではないので因果力2つぎ込んででも絶対に当てる決意を見せることで冒険者は恐れ戦くぞ。
1回はタンクを[戦闘不能]にしよう。
このために、蘇生呪文や蘇生アイテムはパーティに1つは持っておこうと私は冒険者に通達してからシナリオを始めることが多い。
タンクが倒れることが盤面に与える影響は大きい。
たとえ《インドミダブル》や《リバースセルフ》を持っていたとしても、「もう倒れられない」というプレッシャーは思ったより大きいのだ。
持っていない場合、サブタンクとのスイッチやタンクを起こすタイミングなど、盤面に対処するために戦闘にダイナミックな動きが生じる。
ログホラは「タンクが倒れたら終わり」というイメージがあるが、
実はどの職業も「ボスの攻撃を1発なら耐えられる」程度の防御力はある。
蘇生手段さえあれば、意外となんとかなったりするものだ。
冒険者たちの提案を聞き入れる
いくら戦闘システムでガチガチに縛られたTRPGといっても、プレイヤーからの提案は面白いものである。特定のダイスで命中増加(知覚)や庇う提案などは受け入れてもいいだろう。
奥の手を発動する時は愉悦しながら使おう
一旦、ボスの切り札を捌ききった段階で冒険者はニヤニヤし始める。
「こんなもんで終わり?」と。
「エネミーEX使用宣言。……因果力、4点支払います。」
そこで奥の手を切りながら宣言するのがいい。
「まだ、本気出してませんよ?」
そこからは冒険者たちのアタフタする姿を見ながら攻撃を仕掛けていこう。
奥の手は出さなくても構わない
特に、HP半分以下などのギミックを持っている場合、対策されてHPを半分ギリギリまでしか削ってくれない場合がある(何回もやられた)
GMとしては悔しいが、それはGMを上回った冒険者の勝ちだ。素直に負けを認めて、泣いて喚き散らそう。
反対に、思ったよりPLが弱くて殺しかけてしまうかもしれない。
その場合、別に奥の手は使用せずに負けても構わない。(個人的な意見です)
動作不良だった、とかボスが慢心して使うのを忘れてたとか言えばなんとかなる。
この難易度調整を行うために、「奥の手」は基本情報としては公開しないほうが良い。(冒険者が)勝てばよかろうなのだ!
美しく散る
やはり冒険者にボコボコにされて、泣いて喚くのはGMの華というものである。
負けた時は「(魔法攻撃職)のダメージ高すぎだろぉ!」「勝てるかぁそんなもん!!」「はーい無理でーっす!!避けれませーーんっ!」「ま、まだクリティカル出れば避けれるもん…」ちゃんと情けない声を出して喚き散らそう。
終わりに
こんなにクソ長い記事を読んでくれてありがとう。
いつも鬼畜冒険者に蹂躙されてばかりのGMは、この記事を読んで冒険者をギャフンと言わせ、最後にGM自身がギャフンと言おう。
以上、スタートレイル通信でした!
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