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小説「人体を捨てた日」

(3分くらいで読めるSFファンタジー小説です)

カラン、カラン。
土砂降りの冷たい雨が降る夜、少女はそこにやってきた。

「おやおや。こんな真夜中に。寒いからお入り。温かいワインはいかが?」

人形師の男は、ずぶ濡れの少女にふわふわのタオルを手渡し、スパイス入りのワインを持ってきてやった。

「…やめたいんです。人間を、やめたいんです」

どぶを覗き込んだ時のように、少女の瞳には光がなかった。
きっと悲しいことがあって、それが大きすぎて心が壊れてしまったのだろう。

「……どうぞ、こちらへ」

人形師は少女をベッドのふちに座らせると、キスをした。
少女は着ていた服を脱ぎ、ベッドに横たわる。
白い肌は熱がなく、冷え切って青白かった。
その肌に、人形師はグサリ!と長い装飾付きの針を刺した。何本も、何本も。
少女から魂の情報を分けて吸い出すと、新品の真っ白な人形に針を埋めた。丁寧に、丁寧に。

「…目が覚めましたか」
「はい」

人形師の問いに、人形の体になった少女は力無く答えた。

「あなたには新しい名前、顔、生活を用意いたしましょう。さあ、こちらへ。古い肉のことなど、気にしなくていいから」

(旧題「DARKNESS」、原作は2002年ごろ。リメイクは2024.4.14-4:10)

14歳の私は知らなかった。後にポップンミュージックとモロ被りして25年間封印する羽目になると…

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