電撃文庫、電子化進んでる?
電子書籍の網からスルリと
「電子書籍元年」から10年余、ようやく電子書籍の時代がやってきた。
2020年末には電子書籍の利用経験がある人が半数以上という結果も出ており、市井が電子書籍に慣れてきたところだろう(Appliv TOPICSの調査より)。
昨年度からの巣ごもり需要、今年春のDMMブックスの祭りなどなど、色んな力を背中に受けて、電子書籍がようやく舞台上に立てたという印象である。
最中、電子書籍化されない本も存在しないわけではない。
例えば、宮部みゆき氏は2019年まで電子書籍での小説の出版を一切しておらず、この2021年5月にようやく代表作『ブレイブ・ストーリー』を電子化するに至った。
氏の作品は、未だ電子化されていないものも少なくない。
また、村上春樹氏の作品(『1Q84』や『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』など)も、昨年2020年12月にようやく電子書籍として配信された。
このように、一般文芸の電子書籍化は著名な作品であってもようやく進んできたところであり、未だ電子化されていない傑作が多数存在することは想像に難くない。
翻ってライトノベルの分野はどうだろう。
デジタルネイティブが読者層であることや、小説家になろう上がりの作品が台頭していることを勘案すると、電子書籍との相性は比較的良い形態であると思える。
というわけで手持ちのラノベを調べてみると、概ね以下のような印象だった。
そもそも筆者の収集していたラノベはかなり偏っているので、どこまで参考になるかは不明だが、電撃があまり電子書籍化していないというのはいくつかのブログでも指摘されている。
というわけで本記事では、電撃文庫を対象に電子書籍化率とその傾向を調査していく。
調査
ラノベのデータといえばラノベの社さん。
TSVに整形したデータまで配布してくれているので、今回はこれを使用する。
現在は2021年3月発刊のものまでが記載されている。
電撃文庫は3,752冊刊行されているらしいので、中々大きなサンプルサイズである。
このデータのISBNを用いて、Amazonの詳細検索機能から、2021年7月末現在Kindle化されているかを確かめる。
本来はラノベに力を入れているBOOK☆WALKERを利用したいところだが、ISBN検索がなく調査に時間がかかりそうだったため断念した。
そのため、以降は電子書籍化率ではなくKindle化率を見ていることに注意。
結果と考察
図は電撃文庫のKindle化率を示したもの。
単純なKindle化率は約69%(Kindle化済み:2,572冊、未Kindle化:1,180冊)という結果となった。
Kindle化の割合は刊行年が新しくなるほど高くなっており、特に1994年から2011年までは1年ごとに約5%、Kindle化割合を増やしつつ推移していることが伺える。
刊行が2004年以降のものは半数以上の作品がKindle化されており、2013年以降は90%代で安定している。逆に言えば一度も100%となった年は無いので、一部の作品が電子化されないことも恒例のようだ。
次の表は2013年以降の未Kindle化タイトル一覧。
目立つのは他媒体作品のノベライズ。
2013年以降もKindle化率100%を達成できないのはノベライズ作品のためと言っても過言ではない。
次の表は「未Kindle化」作品が10以上の作家と、その代表作(主観)のリスト。
とあるシリーズ作者の鎌池和馬が堂々の1位だが、こちらはBOOK☆WALKERで電子書籍化されているので、何らかの思惑があってKindleで出版していないだけであると思われる。
その他、「他レーベルで再刊されているが電撃文庫ではKindle化されていない作品」も未Kindle化としていることに注意。
備考はWikipediaの記述を参考にした。
Kindle化と未Kindle化両方の作品がある著者は、シリーズごとにそれが別れているというのが通例であった。つまり、シリーズの一部のみ未Kindle化というパターンは(外伝を除き)ほとんどなかった。
つまり、未Kindle化のパターンは「シリーズごと未Kindle化」「作者の作品すべて未Kindle化」の2パターンに大別されそうだ。
また、作者の死去は関係がない可能性がある。というか今回調べた範囲ではほとんどが存命であった。
結論
・電撃文庫のKindle化率は約69%
これが多いか少ないかははっきりしないが、過去のブログ記事で散見されるような少なさでは無いと思われる。
・電撃文庫のKindle化率は刊行年が新しくなるほど高い。
2004年刊行のもので5割を超え、特に2013年以降は9割以上となっている。
・(少なくとも電撃文庫では)他媒体作品のノベライズ作品はKindle化が難しい。
近年発刊のものでもKindle化されていないものがあるので、今後もこの傾向が続く可能性がある。
感想
・ラノベの社DBを眺めるだけでも、昔読んだラノベのタイトルがズラッと並んでいて楽しいのでおすすめです。
・ペルソナのラノベがあるなんて知りませんでした。まだ安いので変にプレミアつかない内に買うのがいいのか……?
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