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第2回「僕の好きな漫画④ -MIGHTY MARS編-」

前回の「僕の好きな漫画③ -ヨシカワショウゴ編-」に続き、今回は「僕の好きな漫画④ -MIGHTY MARS編-」をお送りします。

「僕の好きな漫画③ -ヨシカワショウゴ編-」は、こちらから↓

今回もお相手は、DJのMIGHTY MARS、イラストレーターの鈴木裕之、デザイナーでベーシストのヨシカワショウゴ、大工の中村信彦の4人です。
前回の「僕の好きな漫画③ -ヨシカワショウゴ編-」では、岩明均寄生獣」を中心に、自身のルーツとなる父親からの影響とグロ表現やホラーとの出会いなどに言及。
今回は、「僕の好きな漫画」最終章!最後は、DJ MIGHTY MARSのマイフェイバリットな1冊でお楽しみください!


SF一大巨編の仕組みを読み解く

鈴木 : じゃあ、次はマイティーの一冊を。

ショウゴ : 最後ですね。

MIGHTY : はい。僕は手塚治虫火の鳥」です。

鈴木 : 巨匠。

MIGHTY : 巨匠中の巨匠(笑)。これは、なんかもう壮大すぎて、SFの聖書みたいな感じやねんけど(笑)。

鈴木 バイブル

中村 : そやねー。けどこんなに出てるんやね。

MIGHTY : 今日、俺ちょっと色々勉強してきて(笑)。

一同  :  笑

中村 : 予習?

MIGHTY : うん。予習してきて(笑)。
手塚治虫は、うちの親がめっちゃ見てたから家に色々本があったんやけど。
「火の鳥」は、1954年から86年まで、手塚治虫の初期から晩年までライフワークとして描いてた漫画です。

一同  :  へー。

MIGHTY : 今、単行本とかで発売されてる「火の鳥」は「黎明編」からはじまって、最後「太陽編」で終わんねんけど、これは「COM」で連載していたものから単行本になってる。

鈴木 : へー、「COM」なんや。

MIGHTY : そう。けど、その前は戦後の漫画雑誌(漫画少年)で連載してて「ギリシャ編」とか色んなシリーズがあるねん。ただその頃の漫画と今の単行本になってる「火の鳥」とは、また内容が違うかったりするねけど。。
とりあえず、火の鳥っていう、フェニックスですね。血を飲むと永遠の命になるという。

鈴木 : 不死鳥や。

MIGHTY : いわば人間の欲望と願いがある不死鳥。これが全部の話にでてきます。
で、単行本になってるのは全部で12のお話があるねん。1巻、2巻っていうのではなくて、例えば、「太陽編」とか「鳳凰編」とか「乱世編」とか「黎明編」とか、12の編がある。
それぞれが一つの巻で完結するお話しになってるねん。けど全部の話は繋がってる。

一同  :  へー。

MIGHTY : 全てに伏線が張られてて、そこがすごい深くて楽しいねんけど。

中村 : 時代は違うんや?

MIGHTY : そう。時代は違うねん。で、一番最初は「黎明編」っていう、卑弥呼の時代の話。

MIGHTY : 「古事記」の天岩戸(あまのいわと)の話。
天照大神(あまてらすおおみかみ)が岩戸に入る話がモチーフになって話が進んでいくねんけど。

MIGHTY : 「黎明編」の次は、「未来編」ていうのになって。
これはものすごい未来の話。「MATRIX」とかにも通じるねんけどコンピューターが全てを支配してるねん。

一同  :  へー。

MIGHTY : 「未来編」は3404年の話。

中村 : だいぶ先やな(笑)。

MIGHTY : そこで地下都市が繁栄してて、超巨大コンピューター、所謂「マザー」みたいなやつらに人間は支配されてる。これが最後に戦争を起こすねんけど。

MIGHTY : で、この未来編の後は「ヤマト編」。
倭建命(ヤマトタケルノミコト)っていう人が主役。これも「日本書紀」の話やねん。

MIGHTY : 主人公(ヤマトタケル)が女装して敵の将軍に気に入られるねんけど、その将軍を裏切って殺すという話が元になってる。これも火の鳥がでてくる。

MIGHTY : 要は、シリーズずっと古代→未来→古代→未来っていう風に続いていくねん。

中村 : ほーほー。

ショウゴ : あ、挟んでいくんや。

MIGHTY : そう。「ヤマト編」の次が「宇宙編」で2577年の話。

MIGHTY : で、一番最初の「黎明編」は、3世紀の話やねんけど、そこから最後3404年の「未来編」まで時代順に並べても読めるわけ。

ショウゴ : あー、はいはい。

MIGHTY : じゃあ全部が伏線として繋がる。
ただ、この2巻にあたる「未来編」は、3404年で一番「未来」の話やねんけど、これの最後が一番最初の「黎明編」に繋がるねん。

中村 : えー!どう繋がるん?

MIGHTY : 地下で繁栄した五大都市で最後、戦争が起こるわけ。
で、最後に主人公のマサトってやつが火の鳥から永遠の命をもらうわけよ。

MIGHTY : 核戦争で世界が崩壊してるねんけど、マサトだけが永遠の命をもらって「これからの命を見ろ」と、「これからの世界がどうなるかを見ろ」と火の鳥に言われるわけ。
で、その後に周りの人は死んでいくねん。マサトは自分でロボットを作って恋人を作ろうとしたり、色んな事をするねんけど、それが全て失敗していって、1000年、2000年経っていくわけ。
で、自分で自殺しようとしても死なれへんわけ(笑)。

中村 : 永遠の命やもんな。

MIGHTY : 最後4000年、5000年経って身体も無くなるねんな。生命体の意識だけになるわけ。

ショウゴ : うわー(笑)。

MIGHTY : そうなると、どんどんアメーバーみたいのが自然からでてきて、そこでまた自然が繁栄してくる。繁栄した中で1回目の世界はナメクジがめっちゃ進化するねん。

一同  :  ふーん。

MIGHTY : ナメクジが生物の長になるわけよ。

ショウゴ : ほう(笑)。

MIGHTY : ナメクジがマサトがいたシェルターに入って、めっちゃ勉強して(笑)。ナメクジの世界になるねんけど、ナメクジ同士で争いが始まって、ナメクジ同士で殺し合って絶滅するねん(笑)。

一同  :  笑

MIGHTY : その後、また何万年も時間が経って、恐竜が出てきて、最後人間がでてきて、この「黎明編」になるねん。

一同  :  ほぉー!

ショウゴ : それすごいな(笑)。

MIGHTY : すごいよね。超壮大な。
まぁ仏教感があるねんけど。「輪廻天性」がある。

ショウゴ : うんうん。そやね。

MIGHTY : で、要はこの「未来編」は一番最後の章やねんけど、一番最初にも持って来れるわけね。「未来編」が一番最初にもなるっていう作りになってる。

一同  :  うんうん。

MIGHTY : で、これを1954年から86年まで32年かけてライフワークとして作ったと。
で、手塚先生は最後に「現代編」を描く予定やってん。

中村 : ほぉ!

MIGHTY : これは何かつったら自分が死ぬ時に一コマだけでもいいから描きたいと。「現代」ていう括りもさ、手塚治虫も亡くなってもう30年以上経つわけで、今現代じゃないやん。

一同  :  うん。

MIGHTY : けど、本人にしたら、死んで地上から離れる時が現代やから、その時に描けたらいいっていうのを角川春樹との対談で言ってたりとか、そういう構想があったと。
死ぬまでこれをやろうとしてたっていう。

中村 : へ〜!

MIGHTY : で、色々見てて面白かったのが、もう最初の段階からコンセプトを決めてて、「未来編」の最後のあとがきで手塚治虫が言うてる事があって、これが凄いなと思てんけど。

「私は、新しいこころみとして、一本の長い物語をはじめと終わりから描き始めるという冒険をしてみたかったのです。最後には未来と過去の結ぶ点、つまり現代を描くことで終わるのです。それが、それまでの話の結論に結びつき、それが終わると、黎明編から長い長い一貫したドラマになるわけです。したがって、そのひとつひとつの話は、てんでんばらばらでまったく関連がないように見えますが、最後にひとつにつながってみたときに、はじめてすべての話が、じつは長い物語の一部にすぎなかったということがわかるしくみになっています。」 手塚治虫

一同  :  んー。。

MIGHTY : 一番最初に描いた「黎明編」の次に、一番最後の「未来編」を描いてるのよね。

ショウゴ : あ~、そういうことね。

中村 : すごい。 

MIGHTY : 最初の構想で、最初とケツを描いてるねん。

中村 : 寄っていってるってことやんな。話が。

MIGHTY : そうそう。ほんで間を締めていくっていうコンセプトでやってる。それを完成させてるって言うのがめっちゃヤバい。

ショウゴ : うん。すごい。

中村 : でも何歳の時にそれを思ったんやろな?若いんやろな。

MIGHTY : 60年代やから若いよね。

中村 : そりゃ凄いな。

MIGHTYサイケデリックで全部のSFの創造の元という感じがするな。

一同  :  うんうん。

ショウゴ : 今聴いただけでめっちゃ面白そう。


創造の源泉 -過去から未来への啓示-

MIGHTY : けど、若い人たちは手塚治虫とか、もう知らんかな?俺ら世代でも、巨匠中の巨匠で。

ショウゴ : そやんね。僕も実際そんなに読んだ事ないかも知らん。

鈴木 : なんか、極端な音楽とか、極端な漫画とかに行く傾向ってあるやん。自分はそれしか聴かへんみたいな。

一同  :  はいはい。

鈴木 : でもなんか1周回って、藤子不二雄とか赤塚不二夫とか手塚治虫とかの方がヤバいみたいな感じある。

MIGHTY : うん。全然ヤバいと思う。

ショウゴ : そやね。ヤバいよね。 

MIGHTY : 全部の要素があるな。
で、実際キューブリック(スタンリー・キューブリック)も「2001年宇宙の旅」元ネタにしてたりとか。

鈴木 : 実際スタッフとして雇おうとしてた。

中村 : え!?手塚を?

鈴木 : うん。虫プロダクションがその時めちゃ忙しくて、僕はスタッフを食べさせないといけないから行けない。みたいな。

中村 : 断ったん?

鈴木 : 断ったら、何か伝達がうまくいってなくて、手塚治虫はめちゃくちゃ子供がいるらしい。って。

一同  :  笑

MIGHTY : 子供が多すぎて(笑)。

鈴木 : 子供を食べさせなあかんから、大変やから断ったって(笑)。「2001年宇宙の旅」とかのデザインも手塚がやってたらまた変わってたやろね。

ショウゴ : 面白いね。

MIGHTY : 「火の鳥」は、もう全部の話が面白いです。一個一個の短編としても読めるし、日本神話とか日本の歴史とつなげてるから歴史もわかる。で、日本人のその当時の考え方とかもわかりそうな感じやな。
俺、「異形編」ていうのがすごい好きで「因果応報」を描いた、室町時代の不思議な話やねんけど。

MIGHTY : 左近介(さこんのすけ)っていう主人公がいて、女の子やねんけど父親がすごい凶暴な武将やねん。で、暴力で育てられるわけ。男と同じ感じで育てられて、侍みたいな感じやねんけど。

MIGHTY : でその親父が鼻のガンにかかって、それを治せる奴がおると。

中村 : ほぉ。

MIGHTY : それが八百比丘尼 (はっぴゃくびくに)ていう和尚さん、というか尼さんやな。
けど左近介は治されたら嫌やねん。そのまま死んでほしいから。

MIGHTY : で、治療を止めるために八百比丘尼の寺まで船で行って殺しにいくわけ。 

ショウゴ : 笑

MIGHTY : で、寺で八百比丘尼を殺すねんな。その後、帰ろうとしたら帰られへんねん。もうその島から抜けられへんくなるねん。その島から出られへん。

中村 : ほぉほぉ。

MIGHTY : 出られへんくなるねんけど、その時にいっぱい村人が「比丘尼様治してください!」って来るわけよ。「治療してください!」って。
で、左近介は自分で八百比丘尼に化けて村人を治すわけ。その治療で使うのが火の鳥の羽やねんな。火の鳥の羽やったら何でも治せるねん。

鈴木 : あー。

中村 : ほぉほぉ。

MIGHTY : で、ずっと島から出られへんから八百比丘尼になって人を治し続ける。戦国時代やから負傷した兵士とかもいっぱい来てずーっと治し続けるわけ。じゃあ途中で妖怪が治してくれってくるねん。

ショウゴ : 笑

MIGHTY : で、妖怪を治したら次、妖怪がブワーって来だすわけ。
異界のやつらも来てしまう。

MIGHTY : で、そういうのを治し続けていったある日、自分の父親の名前を治してくれってやつが来るわけよ。

ショウゴ : あー。

MIGHTY : わかる?自分の親父を治してくれって奴が来るわけ。ずっと時が経っておばあちゃんになってんねんけど。
で、「わかりました。」って言うて会いにいったら自分の父親やねんな。

中村 : 鼻のガンの?

MIGHTY : そう。で、そこに左近介がいるねん。

中村 : ほぉ。

MIGHTY : で、左近介が来て。自分が自分を殺しにくるっていう。

中村 : あー!殺されるんや。

ショウゴ : うわー。

中村 : それすごいな。へー!ほんでその殺した左近介が出られへんくなって、それがグルグル。。

MIGHTY : そう。「因果応報」。そういうのを描いている。そういう話がいっぱい入っている。
SFの話もあるし。今のAIとか。人間と機械が一緒になった人の話。
事故って身体がグシャグシャになって機械と人間の合いの子みたいになったやつが、機械に恋してしまうって言う話があったりとか。

復活編

MIGHTY : 今、都市伝説で語られてる様な事がもう60年代に描かれてる。

中村 : へ〜!それは、手塚治虫の頭の中だけで考えんのかな?オリジナルなんかな?何か引用してるんやろか?

MIGHTY : うーん。。何か変な啓示があったんちゃうかと思ってんねんけど(笑)。

ショウゴ : 笑

MIGHTY : 巨匠と言われている人たちは何かに描かされてるとか、使命を負わされてるっていう話はあるけど。例えば手塚治虫って「鉄腕アトム」で高速道路を描いてるわけ。当時、高速道路なんて無かってんな。その後に出来てん。

中村 : それを見て出来たんかな?

MIGHTY : (現実が)寄っていってるていう説もあるけど。見た人がみんな影響を受けてる。
そうなるっていう。まぁ予知みたいな。「AKIRA」の大友(大友克洋)さんとかもそうやけど。

ショウゴ : あー、そうやね。

中村 : これをマイティが読んだんはいつなん?

MIGHTY : いつやろ?けど最初に見たのは映画なんすよ。
鳳凰編」っていう。

鈴木 : あれな、鼻ぶつぶつのやつの。

中村我王(鳳凰編主人公)の。てんとう虫たすけるやつやんな。

MIGHTY : そうそう。小学校3年の時に映画を見たな。
けど、家にも漫画があってその後に見たんかな?

ショウゴ : あー、家にあったんやね。

鈴木 : 何か「人柱」みたいな話しとかなかった?

MIGHTY : あったあった。奈良時代の。実際の日本の風習とかね。「ヤマト編」やね。

ショウゴ : けどそういうのがバックグラウンドにある感じやね。

MIGHTY : ある。歴史と神話が後ろにあって。

ショウゴ : そこから考えていってんのかな?

MIGHTY : 多分、創作とか創造とかの根本て、昔の神話とかやと思うねんな。俺の見解やけど。

ショウゴ : うんうん。

鈴木 : あれやね、手塚治虫だけの回とかもやってもいいかも知らんね。各漫画家の。楳図かずおとか。

MIGHTY : そうやね。なかなかこれをこの時間でまとめるのは難しい。「火の鳥」は、文庫本みたいなかたちで書店ですぐ買えるので、興味ある人は是非読んでほしいですね。俺も持ってるのは文庫本。
古典ですね。

中村 : そやなぁ。ほんまに古典やもんな。


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MIGHTY : はい。フェイバリット漫画の回終わりましたけども、中村君の「遊人」から始まって「火の鳥」で終わる(笑)。

一同  :  笑

鈴木 : 「ANGEL」から「火の鳥」(笑)。

MIGHTY : この好きな漫画シリーズはまたやりたいですね。

鈴木 : そうやな。これもまた前回みたいな感じで語りきられへんかった。

ショウゴ : 足らん感じやな。

MIGHTY : そやね。あと、見てる人にもお便り、コメントと、メールアドレスも貼っておくのでご意見の他、これやってほしいとか色んなテーマ、感想など募集しています。
はい!では、第2回目はこの辺で。


ー 「めっちゃエイリや〜ん」第2回目は、「僕の好きな漫画」をそれぞれの文脈から語ってみました。
皆さんからのご意見やご感想、メッセージも随時お待ちしております!

eiliyanradio@gmail.com

次回、第3回めっちゃエイリや〜んは「僕の好きな映画」をお送りします!

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