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流体力学 有限幅の翼

 皆様おはこんばんちは。
 
 最近,流体力学を再度学び直してみようと思い,記事にしています。
 今回は,第64回目として「有限幅の翼」について紹介したいと思います。今回は,翼の定量評価で使用する各因子(誘導抗力係数,揚力係数と迎え角の関係の2つ)を紹介していきます。


(1)誘導抗力係数CDi


 はじめに,誘導抗力係数CDiを導出してみましょう。ちなみに,誘導抗力Diとは,翼の上面と下面で圧力が異なる流体が流れること(圧力差)によって,「翼両端に一対の渦によって生じる抗力」のことです。図1のように翼幅に沿って無数の自由渦が生じます。
この自由渦は不安定な挙動を示すため,図1のように翼の後方で次第に巻き込まれて1対の自由渦になります。このような翼の後方で下方に向かう速度を誘導速度vと言います。

図1 翼周りの一対の渦の概略図

 先ほど誘導速度vを上手く用いて,翼の揚力Lを求めるために運動量保存側を使ったものを式(1)に示します。

ここで,m:流体質量流量,k:比例係数,ρ:流体密度,b:翼幅,u0:一様流れの流速を示します。k:比例係数は,理論上k=π/4となることを利用すると,式(2)のようになります。(等周定理 (isoperimetric problem):表面積と体積に関する幾何学的関係が関与していますが,筆者にはよくわかりませんでした…)

翼の揚力Lは,別の方法で求めることもできます。求める方法は過去の記事を参照していただくことにして,式(3)に翼の揚力Lの定義式を示します。

2つの方法で翼の揚力Lを求められるということは,式(2)と式(3)は同値と見なすことができます。(中学校時代にやった連立方程式の「代入法」に相当します。)よって,計算を進めると,誘導速度vを式(4)のように求めることができます。

運動量保存側が成立するときの誘導速度vが求められると,次にできることはエネルギー保存側を使うことです。すなわち,運動エネルギーEkの定義式に沿って求めると,式(5)のようになります。

また,翼の下方に向かう流体の持つエネルギーは翼が進むたびに失うことになるので,これは誘導抗力Diと一様流れの流速u0の積は運動エネルギーと等しくなる仕事量となります。よって,エネルギー保存則が成立するので,式(6)のようになり,誘導抗力Diを求めることができます。

翼の誘導抗力Dは,別の方法で求めることもできます。求める方法は過去の記事を参照していただくことにして,式(7)に翼の誘導抗力Diの定義式を示します。

2つの方法で翼の誘導抗力Diを求められるということは,式(6)と式(7)は同値と見なすことができます。また,誘導速度v(式(4))も式(6)へ代入すると,誘導抗力係数CDiは,式(8)のように求められます。

ここで,b:翼幅,l:翼長の積で翼の面積Sを求められます。この関係を利用し,翼の寸法比λを式(9)のように定義します。

よって,得られた翼の寸法比λ(式(9))を式(8)へ代入すると,式(10)のようになり,最終的に求めたい誘導抗力係数CDiを導出できました。


(2)揚力係数CLと迎え角α0の関係(平板翼)


 次に,平板翼の揚力係数CLと迎え角α0の関係を導出してみましょう。図2に有限幅の翼の迎え角の概略図を示します。

図2 有限幅の翼の迎え角の概略図

重要なことは「誘導速度v」です。翼から十分前方の下向きの誘導速度は「0」になります。一方で,翼から十分後方の下向きの誘導速度は「v」となるため,翼付近の誘導速度は「v/2」として考えることにします。よって,2次元翼の迎え角α0は式(11)のようになります。

ここで,αl:有限幅の翼の迎え角,δ:x,y方向の速度における角度を示します。三角関数の定義に戻ってδを考えると,式(12)のようになります。強引ですが,tanδは値がゼロに近くなると,限りなくδの値と同じになるという近似を利用しています。

ここで,誘導速度v(式(4))を式(12)に代入すると,式(13)のようになります。

では,平板翼の揚力係数CLを導出するために,平板翼の揚力Lを求めます。翼の揚力Lの定義式(14)と平板翼の揚力L(式(15))となります。ちなみに,平板翼の揚力L(式(15))の導出根拠については過去の記事を参照してください。

2つの方法で翼の揚力Lを求められるということは,式(14)と式(15)は同値と見なすことができます。よって,平板翼の揚力係数CLは式(16)のように求めることができます。

ここで,式(13)と式(16)を式(11)に代入すると,式(17)のように2次元翼の迎え角α0と平板翼の揚力係数CLの関係式が求められます。

つまり,翼の寸法比λと平板翼の揚力係数CLが決まることで2次元翼の迎え角α0がわかるということになります。
 

(3)揚力係数CLと迎え角α0の関係(円弧翼)


 次に,円弧翼(そりのある翼)の揚力係数CLと迎え角α0の関係を導出してみましょう。平板翼と変わるのは,円弧翼の揚力Lです。円弧翼の揚力Lは式(18)のようになり,導出根拠については過去の記事を参照してください。

2つの方法で翼の揚力Lを求められるということは,式(14)と式(18)は同値と見なすことができます。よって,平板翼の揚力係数CLは式(19)のように求めることができます。

ここで,式(13)と式(19)を式(11)に代入すると,式(20)のように2次元翼の迎え角α0と平板翼の揚力係数CLの関係式が求められます。

このように,2次元翼の迎え角α0と平板翼の揚力係数CLの関係は数多くの実験によって結果が得られています。
 

(4)まとめ

 今回の記事のまとめを以下に示します。
①     誘導抗力係数CDiは,誘導速度vを使って,2次元翼の運動量保存側とエネルギー保存則に基づいて算出され,揚力係数CLの2乗比例し,翼の寸法比λに反比例する関係式が得られる。
②     平板翼および円弧翼の迎え角α0は,揚力係数CLに比例し,翼の寸法比λに反比例する関係式が得られ,実験によって揚力係数CLと迎え角α0の関係が数多く検証されている。

以上です。最後まで閲覧頂きありがとうございました。
次回は,「薄翼の理論」について取り上げます。

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