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流体力学 渦を動かす流れ

 皆様おはこんばんちは。新年,あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。ちなみに,新年のご挨拶が遅すぎませんかという言葉は,スルーさせて頂く方向です。汗

 社会人になり,流体力学を再度学び直してみようと思い,記事にしています。
 第41回目は,「渦を動かす流れ」について紹介していきます。

(1)渦を動かす流れについて

 では,「渦を動かす流れ」について,解説していきます。これまでの渦は,すべて「静止流体中に渦が1個ある場合」を想定していたため,渦が基本的に「動かない」ことを想定していました。
 しかし,実際に渦がぬるぬると動くことは,台風などで皆様は,経験的に理解しているかと思います。流体工学的には,別の渦や流れがある場合に,渦が「動かされる」ことになります。よって,これを数式で取り扱うためには,複素ポテンシャルの考え方を使います。
 複素ポテンシャルについては,過去に記事として取り上げておりますので,確認してみて下さい。


(2)渦を動かす流れの複素ポテンシャル

 それでは,複素ポテンシャルを使って,渦を動かす流れを確認してみましょう。まず,流体中の全体の複素ポテンシャルwをw1~w5まで用意します。ここで,w1~w3を渦の複素ポテンシャル,w4,w5は流れの複素ポテンシャルと仮定します。よって,流体中の全体の複素ポテンシャルwは,式(1)のように表せます。

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 ここで,w1の渦の複素ポテンシャルが動かされると仮定すると,そのときの複素ポテンシャルw(1)は,式(2)のように表せます。

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 渦を動かす複素ポテンシャルw(1)の共役複素速度は,式(3)のように表せます。

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 よって,w1を動かす複素ポテンシャルw(1)をメインに考えると,それ以外の複素ポテンシャルw2~w5のすべてがw1を動かす流れとなることを意味しています。
 そして,式(3)のような直交座標系ではなく,極座標変換をした場合の共役複素速度については,式(4)のように表せます。

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 では,次項ではこれらの式を使って,渦や流れによって動かされる複素ポテンシャルかあら共役複素速度を算出してみましょう。


(3)渦を動かす流れの共役複素速度

 では,渦を動かす流れについての概要と数式を取り扱ってきたので,本項では,以下の例題を考えてみましょう。

【例題】2次元流れの原点に強さQの吹き出しがあり,位置z1に循環Γの渦があるとき,どのような速度で動かされるか。

 では,速度を求めるのに必要なものは,「複素ポテンシャル」です。本例題では,渦の複素ポテンシャルをw1,吹き出しの複素ポテンシャルをw2としたときの複素ポテンシャルwは式(5)のように表せます。

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 ここで,渦の運動を誘発する複素ポテンシャルw(1)は,吹き出しの複素ポテンシャルがメインに寄与するため,式(6)のように表せます。

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 ここで,2次元の複素平面で流れ場が形成されているので,x,yをそれそれ三角関数の定義に基づいて変換すると,式(7)のように表せます。

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 よって,速度の大きさqとその方向αをそれぞれ考えると,式(8)のように表せます。

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 以上のように,渦の運動を誘発する流れの速度とその方向をそれぞれ示すことが出来ました。
 速度の大きさは,吸込みの強さQに比例し,半径rに反比例する関係が得られます。また,方向については,x,y方向の速度によって変わることが分かります。仮に,x方向の速度が大きいと,角度αは小さくなり,y方向の速度が大きいと,角度αは大きくなります。


(4)まとめ

 今回の記事のまとめを以下に示します。
(1)渦が1個のみの場合は,渦は動かないが,他の渦や流れが存在すると,渦が動くことになる。
(2)渦が動くのは,メインになる渦以外の渦や流れのすべてが渦の運動を誘発するものになり得る。
(3)渦が動くことを誘発する速度や方向は,複素ポテンシャルから共役複素速度を算出することで求められる。

 以上です。最後まで閲覧頂きありがとうございました。

 次回は,「渦の層と渦列」について,解説していく予定です。

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