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流体力学 クッタ・ジューコフスキーの定理

  皆様おはこんばんちは。
 
 最近,流体力学を再度学び直してみようと思い,記事にしています。
 今回は,第62回目として「クッタ・ジューコフスキーの定理」について紹介したいと思います。今回は,以前に投稿した「ブラジウスの第1公式」を使いますので,まだ知らない方はご確認ください。


(1)クッタとジューコフスキーって2人もいるの?


 これまでの記事でも「クッタ・ジューコフスキーの定理」を当たり前のように使ってきましたが,改めてここで素晴らしい学者(暇人)たちを紹介しましょう。
1人目は,ドイツの数学者であるマルティン・ヴィルヘルム・クッタ (Martin Wilhelm Kutta 1867-1944)です。彼は大学を卒業後に大学の先生として勤務し,クッタ・ジューコフスキーの定理を1902年に導出したそうです。また,定理以外にも常微分方程式を数値解析で解くときに使用する「ルンゲ・クッタ法」も彼の功績の1つとして現在までに知られています。

マルティン・ヴィルヘルム・クッタ (Martin Wilhelm Kutta 1867-1944)
(参考:Wikipedia)

2人目は,ロシアの物理学者であるニコライ・エゴーロヴィチ・ジュコーフスキー(Nikolay Yegorovich Zhukovsky 1847-1921)です。彼も大学を卒業後に大学の先生として勤務し,主に空気力学を研究して現代的な翼理論を確立した功績から「ロシアの航空の父」と呼ばれていたそうです。ジューコフスキーは,クッタとは関係なく独立してクッタ・ジューコフスキーの定理を1906年に導出したそうです。

ニコライ・エゴーロヴィチ・ジュコーフスキー(Nikolay Yegorovich Zhukovsky 1847-1921)
(参考:Wikipedia)

現在の流体力学・航空力学では,彼ら2人の功績を評して「クッタ・ジューコフスキーの定理」とした呼び方が定着しています。今回は,このクッタ・ジューコフスキーの定理をダランベールのパラドックスと同様に,ブラジウスの第1公式を用いて確認してみようと思います。

(2)クッタ・ジューコフスキーの定理


 では,クッタ・ジューコフスキーの定理の結論は,式(1)のようになります。

式(1)のクッタ・ジューコフスキーの定理を導出するためにブラジウスの第1公式を用いて確認します。具体的な設問は以下の通りです。

x軸方向に速度u0の一様な流れの中に半径aの円柱が置かれ,円柱周りの循環-Γの場合,円柱に作用する力を求めよ。

工業流体力学,原田幸夫,槇書店
図1 一様流れ(速度u0)と循環Γの半径aの円柱

この場合,円柱の中心を座標の原点に取ると,複素ポテンシャルwは式(2)のようになります。

さらに,複素ポテンシャルを複素数zについて微分すると,複素速度dw/dzは式(3)のようになります。ブラジウスの第1公式に代入する関係で,複素速度dw/dzを2乗したものを記載します。

ブラジウスの第1公式を式(4)に示します。

ここで,式(3)を式(4)へ代入すると,式(5)が得られます。
注意するべきは,ブラジウスの公式は,式(3)で半径z=aとなる円の外部に特異点(微分不可能な点,すなわち正則でない点)を持たないことが条件です。特異点がないことで任意の閉曲線に沿って積分が可能となるからです。

式(5)を積分するにはあまりにも大変です。そこで,コーシーの積分定理(「単一閉曲線内部に半径rとなる円Kを境界とする2重連結領域」が該当)を使います。

式(6)にコーシーの積分定理を示します。

式(6)を式(5)へ適用すると,式(7)のようになります。

式(7)のy方向の圧力Pyの結果は揚力Lに該当するので,クッタ・ジューコフスキーの定理をブラジウスの第1公式とコーシーの積分定理によって導出できるのです。

(3)まとめ

今回の記事のまとめを以下に示します。
① クッタ・ジューコフスキーの定理は,ブラジウスの第1公式とコーシーの積分定理により導出することが可能である。

以上です。最後まで閲覧頂きありがとうございました。
次回は,「ブラジウスの公式(例題編)」について取り上げます。

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