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流体力学 渦周りのポテンシャル流れ(その4)

 皆様おはこんばんちは。そして,お疲れ様です。


 最近,流体力学を再度学び直してみようと思い,記事にしています。
 第40回目は,前回の予告通り「渦周りのポテンシャル流れ」について紹介していきます。

 

(1)渦周りのポテンシャル流れについて

 

  では,「渦周りのポテンシャル流れ」について,解説していく訳ですが,連載企画となります。最近の筆者自身の流行りという訳でもありませんが,以下に解説していく順番を示します。

(ⅰ)強制渦
(ⅱ)自由渦
(ⅲ)原点より半径における圧力変化
(ⅳ)2次元流れにおける中心静圧
(ⅴ)渦周りの複素ポテンシャル
(ⅵ)渦周りのポテンシャル流れの応用例(ビオ・サバールの法則)

  渦については,過去の記事にて紹介していますので,気になる方はチェックしてみて下さい。今回以降の記事は,数学的な議論がメインとなります。そして,「渦周りのポテンシャル流れ(その4)」では,(ⅵ)渦周りのポテンシャル流れの応用例(ビオ・サバールの法則)を取り上げていきます。

 

(2)ビオ・サバールの法則

 

 その4では,「渦周りのポテンシャル流れ」の知識を総動員してビオ・サバールの法則を証明しようと思います。ビオ・サバールの法則は,電磁気学で取り扱われるため,詳しく知らない筆者ではありますが,今回は軽く紹介したうえで循環を使った証明をしていきます。

 (2-1)ビオ・サバールの法則とは

 

 では,簡単な紹介をしていきましょう。ビオ・サバールの法則は,電流が生じるとその周りに生じる磁場を計算することができる法則を指し,ジャン=バティスト・ビオとフェリックス・サヴァールの2人のフランスの物理学者によって発見されたとされています。ここで,「アンペールの法則」や「マクスウェル方程式」などと言える方がいれば,おそらく筆者と同様かそれ以上の知識をお持ちの方ではないかと思います。

  通常,ビオ-サバールの法則の公式は煩雑にも関わらず,大学・高専の電磁気学では,公式の証明は基本的に省かれることが多いかと思います。その理由は,導出する際に「特殊相対性理論」を用いる必要があるようなのですが,詳しくは知りません(筆者は,過去に相対性理論の講義を受けたことも独学したこともありません…)。

 しかし,静電場の知識(電気素片を用いる方法)だけで証明をする著書もあるそうで,今回の記事はこれを参考に証明したものと考えられます。では,次項から循環を使って,ビオ・サバールの法則を証明していきます。

  

(2-2)ビオ・サバールの法則の証明

 

 では,証明していきます。まずは,証明に必要なモデルを用意します。図1に半無限直線の渦糸を考えたとき,s軸上のA点で終わる循環Γを示します。このモデルから,2つの循環Γ,Γ’を考えます。

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図1 半無限直線の渦糸のモデル

 1つ目は,A点を中心として任意の半径rの球面の循環Γです。これは,A点を中心として球面の表面積に循環Γは均等に分散通過するため,式(1)のように表せます。

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 2つ目は,C点を中心として半径r0の円内を通る皿状の球面を通過する循環Γ’です。そのため,図2のように,図1をs軸と鉛直方向に見たような形になります。

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図2 半径r0の円内を通る皿状の球面

 図2を見ると,皿上の球面の表面積を通過する循環Γ’となります。そのため,図2から三角関数の定義を用いると,式(2)のように表せます。

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 次に,循環Γ’が均等に分散通過する球面の表面積を求めるため,式(3)のように表せます(途中,式(2)を代入します)。

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 よって,式(1)と式(3)から分かるように循環は,それぞれ通過する球面上の面積に比例関係となるため,それぞれを比で表すと,式(4)のように表せます。

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 ここで,ストークスの定理を用いて,式(4)を代入すると,式(5)のように表せます。

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 次に,図3に示すように,図2の角度θから微小角度dθ分だけわずかにずらした三角形を考えます。

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 図3 皿状の球面の直角三角形

 この理由は,いずれの循環Γ,Γ’は球面の表面積を求めるのですが,半径rと角度θに比例関係が成立することによるものです。但し,半径rはC点を中心とした半径r0が定数として与えられるため,角度θを変化させることしか,次の一手がないとも言えます。

 図3を見ると,図2と同様に三角関数の定義に基づいて関係式を導出すると,式(6)のように表せます。

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 次に,式(5)で示したように,ストークスの定理を使って,周速度vθを求めましたが,これについても同様に微小周速度vθを使って書き換えると,式(7)のように表せます。

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 ここで,式(7)に登場するcos項ですが,そのままでは処理することが出来ないため,三角関数の加法定理を利用します。そして,角度θが1よりも圧倒的に小さい場合を想定すると(数学的には,θ<<1と表現します),三角関数のsinとcosは,次のように近似することが出来ます。sin dθ≒dθ,cosdθ≒1と近似が可能となり,式(8)のように表せます。

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 ここで得られた式(8)を式(7)へ代入すると,式(9)のように表せます。

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 但し,式(9)の結果から角度θによる変化が必要となりますが,現実的に循環がどの程度回転するときに角度θが変化することを把握することが不可能です。そこで,半無限直線の渦糸をモデルとして考えていることと角度θが1よりも圧倒的に小さいことから,半径rと半無限直線軸であるsは,三角関数の定義でつなぐことが出来ます。要するに,直角三角形が作れるということです。

 そのため,次に必要な作業は,角度θから半径rと半無限直線軸であるsの関数に書き換えることです。図1に示した直角三角形から三角関数の定義を再び考えると,角度θ,半径rおよび半無限直線軸sの関係式は,式(10)のように表せます。

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 この式(10)を式(9)へ代入すると,式(11)のように表せます。

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 この式(11)がいわゆる「ビオ・サバールの法則」と呼ばれる式となります。見た目が煩雑な式ですが,この式からアンペールの法則(右ネジの法則)などが得られるため,電磁気学では必ず取り扱われる式となります。

 

(2-3)ビオ・サバールの法則からストークスの定理へ

 

 では,ビオ・サバールの法則を導出することが前項でできた訳ですが,ビオ・サバールの法則では,電気素片という電荷のような粒をモデルで考えます。そして,電気素片に電流が流れることで磁場が発生し,そこに磁場の循環のような現象が現れます(いわゆる磁力線がこれに該当します)。そこで,ビオ・サバールの法則からストークスの定理が導出できると,磁場が循環する仮説が正しいことが分かるので,これについても証明していきましょう。

  まず,ビオ・サバールの法則から始めるため,式(12)に定義式を示します。

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 ここでは,周速度vθを求めるために半無限直線軸sについて積分すると,式(13)のように表せます。

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 ここで,前項の図2の直角三角形から三角関数の定義を用いて式変形をすると,式(14)のように表せます。

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 また,図3に示した直角三角形から角度θ,半径rおよび半無限直線軸sの関係式を式変形すると,式(15)のように表せます。

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 よって,式(14),式(15)の結果を式(13)に代入すると,式(16)のように表せます。ここで,注意なのが,半無限直線軸sから角度θに微分記号が変化したことで積分範囲が変わります。具体的には,s;-∞→∞からθ;0→πとなります。

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 積分範囲を変えたうえで計算を進めると,式(17)のように表せます。

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 式(17)がいわゆる「ストークスの定理」になります。これにより,ビオ・サバールの法則のモデルで使われる電気素片は,電流が流れたことで発生する磁力が循環していることが証明出来ました。この循環は,周速度vθと半径rに比例関係のため,ストークスの定理と同様の結果が得られます。

 

(3)まとめ


 今回の記事のまとめを以下に示します。
(1)ビオ・サバールの法則は,特殊相対性理論によらない方法で静電荷の法則による証明が可能である。
(2)循環の定義式からビオ・サバールの法則は導出可能である。
(3)ビオ・サバールの法則からストークスの定理が導けるため,ビオ・サバールの法則の定義で用いられている電気素片は,とある任意の中心点で循環していることが分かる。

  以上です。最後まで閲覧頂きありがとうございました。

 ※以上を持ちまして,2021年の流体力学の記事はこれにて終了とさせていただきます。2022年の投稿につきましては,継続予定であり何事もなく来年の1月14日をもって,2年目に突入していきたいと思います。良いお年を。

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