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ニューヨーク市(NYC)のオープンデータ進捗レポート2022 データ品質向上に向けて

これはQiitaの「CivicTech & GovTech Advent Calendar 2022」の11日目の記事です。

オープンデータに積極的に取り組む海外都市の事例として、ニューヨーク市(NYC)のオープンデータ戦略の今年度の進捗レポートの概要をざっくりご紹介します。

NYC Open Data: 2022 Progress Report

2019年に策定されたNYCのオープンデータ戦略は、大きく3つの目標が掲げられています。
・ユーザーエクスペリエンスの向上
・都市の能力を強化する
・コミュニティを構築する

参考)2020年度の進捗レポートについても、以前こちらにまとめています。
"NYC Open Data for All 2020 Report" ニューヨーク市のオープンデータ レポート 2020のサマリを日本語訳してみた
ちなみに2年前のレポートはPDFで公開されていましたが、昨年度からGithub.ioで見やすいWebページとして公開されており、このあたりも改善を感じます。

今年度の特長として、各組織で任命されているオープンデータコーディネータ(ODC向けの技術マニュアルなどが刷新され、データ品質の向上に力を入れているようです。日本ではまだ設置事例を聞かないオープンデータコーディネータの役割とデータ品質に関する部分を中心に簡単に内容を紹介します。

「オープンデータ技術標準マニュアル」を刷新
 ⇒ドキュメントはこちら(PDF)

2.2 オープンデータチーム
オープンデータチームの役割は、オープンデータ戦略全体の推進、各組織のオープンデータコーディネータ(ODC)との連携や教育なども行う。

2.3  市の組織
NYCオープンデータ条例により、オープンデータコーディネータ(ODC)の設置が義務付けられている。

2.4  オープンデータコーディネータ(ODC)
2.4.1 ODCの責務
・ODCは各機関のオープンデータ推進の責任者であり、一般の方との設定でもある。データに精通していることに加え、行政の透明性に関心があること、組織内にネットワークを持ち、ビジネス慣習に精通していることが求められる。
・ODCの役割は
 - NYC OPEN DATA(カタログサイト)でのデータ公開
- オープンデータ利用者からのフィードバックへの対応 など
- 新たにオープンデータとして公開する組織内のデータを定期的に探索すること。
- オープンデータのステークホルダーと良好な関係を築くこと。

2.4.3 ODC会議
・オープンデータチームは四半期に一度、ODC会議を必ず開催すること。
・オープンデータプログラムに関する新たな情報を共有し、ODC同士の繋がりを作ったり、専門的なトレーニング、利用者を含むステークホルダーを巻き込むことを目的とする。

4.3 ジオコーディング
・コアアドレス情報として、アドレスは番地、ストリート名、地区名等5つのフィールドに分離する必要がある
・緯度経度情報も小数点6桁以上で義務付け

4.4 メタデータ
メタデータが正確で最新であることを確認するのは、OCDの責務。データセットが更新される場合は、メタデータも見直さないといけない。

4.4.2 データディクショナリー
すべてのデータセットに、データをより理解しやすいようにわかりやすい言葉によるデータディクショナリーをつけなければならない。

4.4.3 データ品質
データセットの品質と使いやすさを徹底的にレビューしなければならない。
特に新しいデータセットは公開前に「データ品質標準」に準拠しているか確認する必要がある。

4.6 データセットの公開
ODCはデータセットの公開希望の1か月前にはオープンデータチームに連絡をすること。
すべてのデータセットは公開前に、オープンデータチームがレビューする。

5. データセットのメンテナンス
データを公開することがデータセットのライフサイクルの終わりではない
公開されるすべてのデータセットは正確性、最新性、アクセス性を確保するために、定期的に監視・保守しれければならない。

5.1 統合
データの使いやすさを検索性を高い水準で維持するために、同じデータを含む複数のデータセットは統合するように努力すべきである。
たとえばある組織の年単位の資産台帳ははバラバラではなく、年度をキーに1つのデータセットに統合すべき。

5.2 タイムリーなアップデート
ODCは、そのデータセットが最新のものであり、メタデータの記載されている頻度で更新されていることを確認する責任がある。
データセットのスキーマやカラム構造が今後変更される場合、ODCはオープンデータチームに事前に連絡すること。

簡素化したデータディクショナリ(データ定義書)テンプレートを公開   
 ⇒テンプレ(Excel)はこちら

「データ品質標準」と公開前のレビュープロセスを刷新
 ⇒ドキュメントはこちら(Google Docs)



NHKさんの「全国ハザードマップ」の制作プロセスでも、オープンデータの品質が取り沙汰されましたが、今後、日本の各省庁や各自治体でもデータ品質の向上に向けた取り組みが進むことに期待したいと思います!


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