専門分野を決めたきっかけ
私の所属する大学では、毎年この時期には少しずつ専門が決まってきます。
正確に言うと、3年次以降の専門課程の所属が2年の夏に決まる(このシステムが有名)わけですが、今日はその思い出話を。
高校時代から、比較文学と言う学問ジャンルに関心を寄せていました。もともと文学には興味があって、国語も英語も好きだったのですが、きっかけは高校現代文で扱った2作品。ティム・オブライエンの「待ち伏せ」と中島敦の「山月記」です。
前者は村上春樹の翻訳で読んで、どうしてもよく分からなくて、アメリカ文学なのをいいことに英語版のペーパーバックをAmazonで買いました。今考えると勇気があるなあと。
で、原文を読んだら読後感が違う。特に、1語 辞書的な意味では当てはまらないような意訳になっている所があって、それによって色合いが変わっていることに気づいたんです。
その話を先生にしたときに教えてもらったのが比較文学という分野でした。ちなみに後からこれが翻訳論の問題に近いということを知ったわけですが。
後者は、ありがちと言えばありがちですが、元ネタだと言われている「人虎伝」の話を聞いたのが大きかったです。モチーフをとっているはずなのに全く違う作品になっていることに面白さを感じていました。フランス派比較文学の潮流というか、和漢比較文学の有名な例の一つです。間テクスト性からのアプローチですね。
まあそんなこんなで、私は比較文学を勉強しようと思って大学を決めたわけです。具体的に何がやりたいとかよりもふわっとしたところで。そもそも比較文学を専門にできる大学なんてそんなに多くないんです。だから、志望大学は絞られることになりました。
ありがたいことに第一志望に合格したので晴れて勉強できるようになりました。
で、大学に入って、その手の授業を取りました。前期は文体論から和漢比較文学を行うような授業。後期は翻訳論と、日英比較文学(クロスジャンルという領域をここで初めて知りました)。
図書館で本を読んで、授業を聞いて、レポートを書くのに論文を調べて。自分の読書経験なんかも振り返ってみました。
そうして気づきました。
私は日本文学を他の文学作品との関わりという観点から考えてみたいのだ、と。さらに、近現代日本文学をやりたいのだ、と。文体論の授業が大きかったのかもしれません。
そこから迷いました。比較文学か、国文学か、現代文芸論(翻訳や批評理論)か。
結局比較文学への思いが捨てられず、今の学部にいます。高校からの憧れですから。ですが、実は初志貫徹ではなく、ちょっとずれました。
実は、今の学部には比較文学を専門にするコースと日本文化論を専門にするコースがあります。大学院だと同じなのですが、学部だと別です。
私がいるのは日本文化の方。近現代専門の先生はこのコースにしかいないからです。コースの教授陣に強引なまでの勧誘を受けました(笑) もう一つ、比較文学のコースだと外国文学にかなりのウェイトが置かれてしまっていたからです。
まあ比較文学系統の授業も取れますし、どちらにせよ後悔することはないと思っています。今絶賛考え中ですが、卒論も日本文学と比較文学にまたがるテーマになりそうです。
おそらく、このような形で進路を選択する人間はそれほど多くないと思います。好きや面白いから、段々と具体化して行って、進路を決められたのはよかったです。
きっかけって、すぐ近くに転がっているのかもしれませんね。