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女の話

紅茶の香りに満ちた喫茶店から商店街に目をやるとホストが喧嘩していた。
二人を仲裁しているのは僕の知り合いのバイク乗りだった。

隣の席のカップルも商店街の異変に気づいたようだ。
オタク風のメガネが窓の外にスマホを向ける。
「カオリ! これ絶対バズるぞ」
鼻息を荒くする恋人を尻目に紅茶好きはティースプーンを動かし続けていた。

外では腰痛持ち高学歴も仲裁に加わっていた。
それでも喧嘩は治まらない。
しびれを切らした高血圧は喫茶店から飛び出した。
「うちの店の前で騒ぐなゴラァ! 」
雷鳴のような怒号に、通りすがりの視力1.1指名手配犯優勝候補も思わず振り返る。
は気圧されまいと高血圧に詰め寄り、罵声を浴びせた。
「う、うるせえヒゲヅラ! 店に引っ込んでろ! 」
頭に血がのぼった高血圧は「なんだと! 女のくせに! 」と、に殴りかかる。

もう事態の収拾がつかない。
バイク乗りはあきれた様子でママチャリにまたがり、その場を去った。

そして彼女と入れ替わるように、仲裁に加わったのはヒゲヅラだった。
ヒゲヅラ高血圧を羽交締めにし、「女に手を出したらあかん! 」と一喝。
しかし高血圧に対しさらに挑発を続ける。
「ヒゲヅラ!ヒゲヅラ!」
ヒゲヅラは「この婆さんはボケてるんだ。いくらお前がヒラヅラだったとしても相手にするな」と、高血圧を諭した。


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