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童話絵本を出版する話

これは、友達の少ないただの本好き会社員が、
作家としての一歩を踏み出すストーリー。



今でこそ創作活動をしているけど、ほんの数か月前までは物語を書くなんて絶対にやるまいと思っていた。
学生時代に一度だけ書いたケータイ小説。毎日少しずつ書き連ねて、そして、全部消した。

絶望的につまらなかった。こんなものを世に出したら、ビット数の無駄遣いどころか害悪でしかないと思った。
私は、フランケンシュタイン博士にはなれなかった。生み出した“怪物”は、物語の形をした別物だった。

「私には、物語は書けない」

でかでかと心にタトゥーを彫り付け、物語ではないものばかり書いた。
入試での小論文も大学のレポートも、仕事で書いた文章も一定の評価をされたし、不満はなかった。


ある時、ふと怖くなった。
このまま単調な仕事の毎日を続けていくのが、私の人生だろうか。
友人も少なく、孤独感の中で生きていくのだろうか。
時計の秒針の音が妙に大きく聞こえていた夜だった。

思い切って、オンラインコミュニティに参加してみた。

参加したものの、うまく入っていけないまま3週間が過ぎた。
そのコミュニティでは、毎日zoomで話せる機会がある。それなのに、3週間も黙っていた。
結局4週目に入る直前に、私は好きな小説をプレゼンした。
プレゼンというからには、当然パワポでスライドまで作った。

思いの外好評だったこともあり、味をしめた私は、たびたびプレゼンをした。

何度かプレゼンしていくと、
「小説と言えばようさん」
「文章書くのが上手なようさん」
そんな印象を持たれたようだった。
3ヶ月経つ頃には、少しずつ友達ができ、つながりが増えていった。

本の紹介が好評ならと、勢いで選書サービスまで始めた。
さらに調子に乗って、サービスのイメージキャラクターをコミュニティ内で募集もした。

ありがたいことに、数名の人がイラストを描いてくれて、じっと心の奥底に火がついたような気がした。

「このキャラクターたちを死なせたくない」

「このキャラクターたちを物語の世界で生かしたい」

描いてくれた絵描きさんたちにお願いをして、絵本にすることにした。
何度も何度も書き直した。
プロットもきっちり書いてみた。

ダメだった。物語は生まれなかった。書けなかった。
何度も何度も書き直しているうちに、予定していなかった登場人物が出てきた。主人公も勝手に話し始めることもあった。
物語の中に世界が出来てきた。

書ききった物語は、害悪ではなかった。

そうしてできたのが私の処女作『これ よむ?』。

私が作家として生きていくことを決めた一冊。


役に立たない「物語」を失い、実用書ばかりになった世界の片隅、森の奥に住む男の子の家には、物語の本がたくさんあった。男の子は一人ぼっちだったけど、本を開くとそこには、ヒーローも怪獣もお化けも友だちもいた。
ある日出会ったおばあさんに、物語の本を紹介したことがきっかけとなり、男の子は本紹介の旅に出る。
行く先々での出会いが男の子に自信を与え、本をきっかけに出会った人にも変化が起こり・・・。
作者の経験を元にした、「好き」が世界を変える童話絵本。

もうすぐ受注予約開始。よろしくお願いします。




七緒よう

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