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手鏡 おひや
2021年9月6日 22:15
「なあ、祐樹、お前『追憶』もう読んだ?」 俺の席の隣に腰掛けながら、大輔はこちらを見ずにそう訪ねた。 「いや。見てない。お前は?」 俺は顔だけ大輔の方を向いた。大輔はこちらを見る気はないようで、黒板を眺めている。 「実は、昨日寝る前に読んだ」 「ふうん、そうなんだ。実はって何だよ」 「いやいや、何か祐樹さ、あんまり好きじゃなさそうだから」 横目で俺の方を伺う。そうやっ