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色彩を全身で“体感”できたホックニー展

5月は新緑がきれいな季節ですね!
街を歩いていると、イチョウの葉が光を受け青々としていて、眩しい限りです。(こういう時、“緑々している”とは言わないのが面白いですね)

そんな色の話題つながりで、今回は、“色彩の魔術師”と言われる芸術家、ディビット・ホックニーの「美術展体験」について分析していきます。



昨年開催された、待望のデイヴィッド・ホックニー展

昨年の夏に、東京都現代美術館で開催されたデイヴィッド・ホックニー展に行ってきました。
色彩がビビットで気持ちよく、また日常の何気ない風景や自然への愛情が溢れる作品をたくさん目にして、凄くエネルギーをもらえました!

ホックニーは現在86歳で、イギリス出身の現代芸術の巨匠の一人。
1960〜70年代に描かれた風景画や肖像画の傑作ももちろん素敵ですが、彼は2010年からはiPadでも絵を描き始めており、今回、そのデジタルドローイングの作品も数多く見ることができました。

*展示は昨年に終了しています。また近々日本でも開催してほしいですね…


巨匠がiPadで絵を描きあげていく筆跡が、ありありと分かる!

中でも、思わず足を止めて見入ってしまったのは、iPadアプリの録画機能を用いた展示。
真っ白なキャンバスから始まり、線が引かれ、輪郭ができ、色が幾重にも重なり、徐々に絵が仕上がっていくプロセスがモニターで流されています。まさか、巨匠が鮮やかに絵を仕上げていく過程をこんな風に見られるとは…!

筆使いや色の塗り方はもちろん、一度消して描き直している所もそのまま見られて、「あー、あそこは気に入らなかったんだな」と、画家の考えを楽しく想像できる時間にもなりました。

他にも、COVID-19によるロックダウン中にiPadで描いたという、なんと全長90mの絵が会場に張り巡らされていて、絵を見ながら歩くという体験が、四季の移り変わりを感じながら散歩しているようで終始ワクワクしました。

最初は大まかなフレームが描かれていき…
徐々に細部まで細かく書き込まれていく様子が動画見られました!どんな順番でどんなふうに絵を仕上げていくかが見られて楽しい〜


自分の身体で、絵画を“感じられる”ような体験

この体験をCX観点で考察してみます。
絵画の美術展というと、いわば仕上がりきった、額に入った絵を見る場だというバイアスがあるところに、こうしたデジタルツールでの過程が見られる動画や、全長90mという大型展示を体感したことで、私はとても「新鮮(fresh)」な感覚を得ることができました。
もちろん絵画展示としての「静」を感じるフロアもありましたが、「動」を感じるフロアもあることで、全体として五感が刺激される豊かな体験になったのではないかと思います。

全長90mを超える大型展示。春夏秋冬の風景を見ながら、ぐるっと一周。
こんな横長の作品が展示できるのも、デジタルツールで描いた
絵ならではなのかなと。


また、このデジタルツールを駆使した作品展示が、60年以上前から活躍している歴史的な画家の展示会だということで、驚きがさらに大きいものになったのかもしれません。人の年齢や肩書に対する自分のアンコンシャス・バイアスをぶち壊してくれる体験になりました。

何歳になってもチャレンジする心を忘れずに、創造する喜びを感じながら生きていきたいですね…!


(執筆者:エクスペリエンスデザイナー 池田映子)


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