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幸せにしてみたくなる人

母の人生。

結婚するまで、不幸続き。

頭のおかしいドケチな母の実父(祖父)は、家族に命じました。

「風呂は、月1回しか入ったらアカン!」

自らお手本となってそれを実行していたのだから、呆れます…。

おかげで、祖父の枕カバーは、いつも黄ばんでいました。

誰も、こんなアホなジジイの言う事など、聞きません。

1週間に1回は、お風呂に入っていたのだとか…。

特に、当時、受付嬢をしていた母とは大喧嘩。

「オマエ~、毎日風呂入るな~!」

「もったいないやろーが」

受付嬢は、清潔感が命。

こんな親父の言う事など聞いていては、職を失いかねません…。

「ジジイ、何言うとるんかー!」

「この家の家計は、私が支えとるんじゃわ~」

「コシャコシャ言わんと、黙っとれ!」

「アホが!」

ぼんくらなジジイは、この時まで、この事を知りませんでした…。

こうして、ようやく毎日お風呂に入れる様になった母。

母の家に、当たり前はありませんでした…。

そんな母が、結婚した相手。

着る物もロクに持っておらず、ガリガリに痩せて、鼻水を垂らしていたそうな…。

自分はそんな感じでも、両親に仕送りをしていたのだとか…。

自分と似た様な境遇の貧乏青年に、親近感を覚えたのでしょうか?

母は、父をいたく気に入ったのでした。

母が結婚してすぐに始めたことは、父に快適な生活を送ってもらうための買い出し。

兄貴のお下がりで、ヨレヨレの下着を着せられていた父。

結婚時の所持金は、たったの3万円。

「私より酷かったわ~」

「辛抱がエエのも、程があるで~」

一生懸命、父に尽くす母。

これに対して…。

「お母さんが(自分に尽くすことで)喜んでくれとるから、それでよかたい!」

などと、ヒモ気質的な発言をする父(笑)。

この父、何故か周りの人達に構われる星の下に生まれたモテ男。

奇妙なムードで人を癒すのでした…。

周りの人達が勝手に幸せになって、父もハッピー。

子供の私には良く分からない、謎の魅力があるのでした(笑)。


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