アホなる救世主
母の実母は、夢見ていました。
苦労人の父が、母を教育して淑女にしてくれることを(笑)。
ところが…。
父は、人に何かを強制したりする様な人ではありませんでした。
口癖は、「よかたい!」で、我々母子は放し飼い状態。
でも、要所はちゃんと締めてきます。
自由を手にした母は、自分で髪をカットし始め、ボロボロの服を身に纏う様に…。
そして、言いました。
「不幸な時程、お洒落して見栄を張りたくなるもんなんよ!」
「私は幸せになったから、人の目なんかどうでもええんやわ~!」
(それにしても、極端でないかい…?)
みすぼらしい格好をして実家へ帰る母を、祖母が苦々しく思います。
当初は、父が母に経済的な虐待をしていると疑った程でした。
父は、稼いだお金の全てを母に渡しているのです。
この事を知った祖母は、それはそれで呆れます。
「アンタのお父さんは、アホなんか?」
これを聞いた母は、激怒。
「娘が、幸せに暮らしとるんやろー!」
「何か、文句、あるんかー!」
「あの婆さんは、不幸なもんやから、ずっと人の目を気にしとるやろー?」
「早よ、疲れる人生、止めなアカンでー」
全く分かり合えない親子が生み出す、ヘンテコなドラマ。
その様子を、いつも冷静に見つめる父。
「お父さん、1人だけ大人ぶってからに!」
そう言う私に、父が言いました。
「お父さんは、大人以外の何者でもなか!」
(また、いなされてしまった…)
祖母と母との間に、とぼけた傍観者あり。
破滅的な喧嘩に発展しない様、ゆる~く茶々を入れるのが父の役割でもあります(笑)。
祖母は、生まれたばかりの母を捨ててしまった過去があるため、この母子間にはいつも火種がくすぶっているのです。
適当に喧嘩させたところで、のっそりと現れる父。
笑いを取って事態を収拾。
いつものパターンなのに、すっかり騙される祖母と母(笑)。
「あれっ、何で喧嘩したんやっけ?」
アホキャラ登場は、親子を救うのでした(笑)。
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