世界は言葉でできている

私たちは言葉に埋もれて生きている。
言葉によって感動したり、傷ついたり、幸せな気持ちになったり。言葉そのものが自分にとっての宝物になったり、凶器になったりすることがある。

考えることも伝えることも言葉によって支えられている。豊かな言葉を持っている人は思考も表現も豊かになる。生きていれば言葉にならない感情になることもある("小田和正現象"と呼ばれるものだが)。そんなときこそ言葉を聞いて、言葉で考えて、言葉で伝えたい。言葉は人そのものだ。



『世界は言葉でできている』は2011~2012年にかけてフジテレビで放送されていたバラエティ番組。コンセプトや基本ルールを公式サイトから引っ張ってきた。

言葉に「人」が宿る。言葉に「人生」が宿る―。

「言葉」は、その人物の「人生」を映し出す。さまざまな「言葉」が映し出す「人生」を知ることは、自分自身の「人生」を知ること、そして考えることにつながる…。

この番組は、古今東西の偉人の名言の一部が伏せられた出題に対して、「当てる」のではなく「超える」をコンセプトに、現代の「言葉」を操る各界の一流の人々(コトバスター)が挑む新感覚バラエティー。コトバスターたちは早押しで回答、回答するたびにスタジオの100人のオーディエンスが、“心にグッときたかどうか?”を基準に1人1ポイントの持ち点で回答をジャッジ。最後に、偉人本人の「言葉」も100人のオーディエンスにジャッジされ、ポイントを算出するシステム。

公式サイトより https://www.fujitv.co.jp/b_hp/sekai/index.html

コトバスターは目の前にあるPCで回答を入力し、早押しで回答権を得る。そして、「これが私の言葉です」という決まりセリフを合図に、天の声を担当する森本レオにより回答が読み上げられる。

私が特に好きだったコトバスターは
『スカパラ吟遊詩人』谷中敦(東京スカパラダイスオーケストラ)
『名言クォーターバック』若林正恭(オードリー)
『遅れてきた芸達者』ビビる大木

上記のような基本ルールはあるのだが、ポイントによる勝ち負けや、コトバスターが出した回答が元になった名言を超えているかなどは割とどうでもよかった。偉人、有名人の名言やいろんな人が考えた言葉が聞けるということがこの番組の価値。

今日はその番組で紹介された言葉の中で、私が印象に残っている言葉を紹介したいと思う。目次は実際に出題された形式で記載する。(10年以上前の話なので多少頭の中で改変してしまっているかもですがご容赦ください)


「人生とは、○○ではなく、△△だと思う。」 ビヨンセ

「人生とは、何回息をするかではなく、何回息をのむ瞬間があるかだと思う。」
この言葉は、マイケル・ジャクソンが亡くなった際にビヨンセが贈った追悼文の一節。

この言葉も素敵なのだが、コトバスター・谷中敦の回答を紹介したい。
「人生とは、美しいアルバムではなく、撮れなかった写真だと思う。」

人生は写真を撮っている暇もないくらい夢中になっている瞬間が幾度となくある。逆に、記憶や記録から消したいような過去もある。そんな儚い瞬間や美しく整っていないものこそが人生なのだ。

ちなみにこの言葉は、のちにスカパラの『明日以外すべて燃やせ feat.宮本浩次』という曲の冒頭の歌詞として使われている。

「人生は○○と△△と◇◇のことぐらいを考えていればいいんだよ。」 忌野清志郎

「人生は今日と明日と明後日のことぐらいを考えていればいいんだよ。」
忌野清志郎が大切にしている生き方を表した言葉だ。

このお題に対するコトバスター・ビビる大木の回答がこちら。
「人生は昨日と今日と明日のことぐらいを考えていればいいんだよ。」

ほとんど一緒と言っていいくらい似た言葉を回答している。
しかし、この二つには決定的な違いがある。
"過去"が含まれているかどうかだ。
清志郎の言葉は未来志向でありながら、あまり先のことは考えず目の前のことを大切にしようという言葉だが、ビビる大木は過去、つまり昨日のことを考える=反省がないと今日明日がないという言葉だ。

このビビる大木の言葉が私の性格に合っているのか、とても共感して、心に残った。

「死はたぶん、○○です。」 スティーブ・ジョブズ

「死はたぶん、生命最高の発明です。」
この言葉には続きがある。
"死は生物を進化させる担い手であり、古いものを取り去り、新しいものを生み出す。"
発明の天才であったスティーブ・ジョブズが死をも発明として捉え、世界を変えていくものと考えていることを表した言葉。

このお題に対するコトバスター・若林正恭の回答。
「死はたぶん、常に持ち歩くべきものです。」

スティーブ・ジョブズの最高の発明のひとつであるiPhoneにかけている言葉だ。死は、普段の生活では遠く感じられる。でも、いつか死ぬと思っていた生きていたほうが、大切なことが胸にとどまりやすいという若林の考え方。一見すると怖い言葉だが、死を意識するからこそ今を大切に、自分らしい生き方が出来るのかもしれない。

「恋に落ちると眠れなくなるでしょう。だって、○○から。」 ドクター・スース

「恋に落ちると眠れなくなるでしょう。 だって、現実が夢より素敵になったんだから。」
誰しも経験したことのある恋の喜びや切なさを表現した素敵な言葉だなと思う。ドクター・スースはアメリカの絵本作家。私は正直知らなかったのだが、アメリカでは世代を超えてどんな子供でも一度は読むと言われている有名作家だそう。

谷中敦の回答はこうだ。
「恋に落ちると眠れなくなるでしょう。 だって、明かりを消しても暗くならないから。」

さすが吟遊詩人、オシャレな回答である。
一人でいるときも、夜寝る前も、常に相手のことを考えて暗くなることがない。前向きで忙しない恋心を表現した言葉だ。

「"I love you"を訳してください」

最後に私が一番好きだった回答を紹介したい。このお題は穴埋め形式ではなく、自由に考えて回答するもの。「I love you」の日本語訳として有名なものは、夏目漱石の「月がきれいですね」や、二葉亭四迷の「わたし、死んでもいいわ」などがある。

ここでまた谷中敦の回答。
「もうあとには戻れないな」

もう抱いてほしい。

ここまで言葉がなんやかんやと言ってきたが、
最後の最後に語彙力皆無の感想であることをお詫びしたい。



世界は言葉でできている。
共感できる言葉。なにかのヒントになる言葉。
少しでもあなたの胸に残る言葉はありましたか。

今だったらこの人に出てほしいなぁなどと妄想しながら、
特番でもいいので番組が復活することを願っています。