コロナ禍の大学 講義編
大学も例外なくコロナ蔓延の影響を受けている。
今回は,私が勤務する地方大学のコロナ禍の現状について,講義を中心にまとめておく。
大学のコロナ対策
先ず前提として,コロナへの対応はその地域の感染状況に加え,各大学が独自に定める事業継続計画(BCP)によって大きく異なる。
つまり,大学の方針によっては,感染状況が比較的マシな地方よりも都会の大学の対策の方が緩い場合もありえる。
BCPの設定には,その地域での大学の影響力(たとえば,大学の規模)なども関係している。
あくまで,ある地方大学の一例という前提で読み進めてもらいたい。
コロナ禍の講義
遠隔講義
自分の大学では,緊急事態宣言が初めて出された2020年4月から,全ての講義が遠隔で実施されるようになった。
遠隔講義の実施形態は主に2種類あり,①実際の時間割通り行われるLive形式のものと,②予め録画した動画やパワーポイントをいつでもアクセスできるよう提供する形式のものがある。
Live講義にはZoomやTeamsが使われ,臨場感が出るようにスライドやノートに書き込みをしながら講義が進む。
配布資料だけでは理解が難しいのと,時間割通りでないとついついサボってしまうという理由から,学生にはLive形式の方が好評なようだ。
また,理系の学部では実習系の授業が多くあるが,そのような授業を遠隔で実施するのは結構辛い。
昨年度は実験の授業も遠隔で行う必要があり,自分は実験の動画を事前に撮影・編集して,それを流しながら解説するスタイルを取った。
YouTube Liveで実験の様子を実演しながら授業している先生もいた。
今年度は運用が多少柔軟になったので,感染状況が多少悪化しても実習系の講義は対面での実施が認められた。
学生からの評価
遠隔講義に対する学生の評価は,意外と二分されている印象だ。
登校する必要がなく,寝転びながらでも参加できる遠隔講義を歓迎する声は多かった。
すべて遠隔講義となったのを機に,県外から来ている学生は地元に戻り,実家から講義を受けているパターンも多くあった。
一方,講義の質の低下を訴える学生も多くいた。
特にコロナ禍初期では教員側も急に遠隔対応を強いられたことにより,課題を丸投げするだけの教員もいたそうだ。
投げやりな対応に学生の不満は噴出した。
そうでなくても,やはり遠隔での講義は実感としてやりにくい。
PCの画面越しだと学生からの反応が得られないので,一方的な講義になる感がある。
Zoomのアンケート機能を使ったり,チャットで質問を募集したりと工夫もするが,それにも限界がある。
個人的には,対面の方が内容の濃い授業ができると感じている。
新入生の苦労
一番可哀想なのは,昨年度以降に入学してきた学生だ。
彼らは大学の最初の授業から遠隔なので,同級生と出会う機会がすごく限られている。
教員側の能力・努力不足でもあるが,遠隔講義だと特に授業に付いていけなくなるパターンが多くなるので,友人間のやり取りはとても大切になる。
2年生や3年生からコロナ禍に突入した学生は,ある程度人間関係が出来上がった上での遠隔講義なのでそれほど問題ないようだったが,新入生は苦労したようだ。
もちろん大学側も定期的にリモート面談するなどしてケアしてきたが,やはり大学での友人関係の構築は醍醐味の一つなので,その点新入生は気の毒だと思う。
対面講義への移行
コロナの実情がだいぶ分かってきた頃から,対面形式の講義が徐々に認められるようになった。
対面講義では,事前の体温測定と手指消毒はもちろん,座席も距離を空けて配置するよう工夫された。
教室内のCO2濃度を常時計測し,基準値を超えないように換気を徹底することが求められた。
学生も教員ももちろんマスク着用で,プリントの配布も手渡しのリスクがあるので,なるべく減らすようにした。
教室内での工夫だけに留まらず,学生個人の都合にも寄り沿う必要がある。
健康状態によってはコロナをひどく恐れている学生もいるし,家族が医療従事者で気を遣う必要があるというケースもある。
その場合には,対面講義と遠隔講義を同時に行ういわゆるハイブリッド型の講義を実施して対応している。
これから
2021年の10月頃にはコロナも落ち着きを見せ,大学もかなり正常な状態に戻っていたが,年明けからの感染拡大でまた厳格な対応(基本的に遠隔講義)に逆戻りしている。
今後どう変化していくかはまだわからないが,次回はコロナ禍での大学の研究事情について紹介したい。
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