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研究の効率化と教育効果の天秤

実験研究は,①データを計測し,②データを整理し,③傾向を考察し,④結論を導く,が基本的な流れである。

この中で最も時間がかかって作業的な意味合いが強い工程は,②のデータ整理だと思う。

データ整理とは,計測器で計測したデータを我々がわかりやすい形に変換し,統計処理やグラフ化するものである。

同じ系統の実験では,同じような作業を繰り返し行うことになるため,自分がそのような作業をする場合には, Excelのフォーマットを作成したり,プログラムを書いて自動化して効率化を試みる。

ただ,卒業論文や修士論文の研究の場合,学生は各々のやり方でデータ整理しており,これにはメリットとデメリットが混在している。

教育効果

自身の経験も踏まえると,データ整理は試行錯誤の連続だ。

例えば,Excelをどのように工夫すると,欲しいデータの形になるのか,最も分かりやすいグラフを描けるのか,時間を節約し省力化できるのか,自分自身で考えることにつながる。

また,データと向き合うことでデータの特徴自体について考える良い機会となる。

一方,学生が打ち合わせに持ってきたデータやグラフは大抵うまくないことが多い。

そもそも意味のないものだったり,単位が間違えていたり,グラフの軸が揃っていなかったり,「これでは考察できんだろう」というレベルにある。

その度に,それらの理由を懇々と説明し,やり直しを明示することを繰り返す。

こちらとしては研究成果そのものに対して議論を深めたいのに,なかなかその段階まで進めない,というジレンマが生じてしまっている。

同様の思いをしている大学教員は多いのではないだろうか。

ブラックボックス化

解決策として,前述の通り,いっその事フォーマットやプログラムを学生に配布してしまおうかと考えている。

学生からしたら,何かは良くわからないけどデータを突っ込んだらこんなグラフが出来ました,ということになる。

メリットデメリットは自身で整理することの完全な裏返しで,試行錯誤する過程は省かれる代わりに研究自体は進むことになる。

いわゆるブラックボックス化というやつである。

最近の技術の進化の中で,色々なところでブラックボックス化が進んでいる。

私たちが普段使用している家電であっても,それが動作する仕組みや理論について理解している人はほとんどいないだろう。

会社の業務であっても,意味もわからずソフトウェアに値を入力したら答えが出てくるような仕事をしている人は多い。

そんな時代の中にあって,原始的なデータ整理を一から学生に求め,その手法に対してあれこれ説明することは時代遅れな気までする。

今は学生がデータ整理したものとは別に自分でデータ整理を行なっているが,自分が作成したフォーマットを学生に使ってもらうのであれば,そこの負担が大きく軽減されるというメリットもある。


便利になったものを道具として使って,より先の答えを得ることに集中することで成果が得られるのであれば,フォーマット化はありなのではないか。

もちろん自身でフォーマットを作成して効率化できることが一番良いのは間違いないが,卒論や修論の限られた時間の中でそこまで望むのは酷だろう。

来年度からは,少し研究教育の方向性を変えてみようと考えている。

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