創作のかけら:「そうだったら、いいのにな」
あれは何月何日のことだったのか
なぜ日付を記録しなかったのか
君の光に至近距離で貫かれたことは
はっきり覚えている
しかしその直後
午後
きっと複雑な感情で
君の背中を眺め続けていたのだと
思うのだけど
どういう風に時間をやり過ごしたのか
さっぱり思い出せない
ばっさりと抜け落ちている
けれどそのことを決して忘れたくなくて
消えないうちに何とか家に持ち帰って
夜、自分の部屋の机で
泣きそうな思いで記録した
あの現象を一体なんと書き表わせばよいのか
途方に暮れながら
そして結局
ありふれた短い言葉を
リフレインさせることでしか
表現できない無力さに
その非力さに
絶望して
ノートを閉じた
記録を終わらせたのだ
🟦
ああ
その
「ばっさり抜け落ちた」時間
私が微睡んでいる間に
君が私に
口付けたりなんて
してくれてないかなぁ
だって数時間
すっ飛んでるんですもの
多分そのまま
二人並んでちょこんと座って
いつも通り
「バイバイ」
どころか何にも言葉を交わさないまま
お互い家に帰ったのだとは思うけれど
放課後、君に操られて
連れられて
誰もいないところで
言葉を捨てて
あの蝶の番みたいに
静かに添い遂げることができていたら
そうだったら、いいのにな
そうだったら、いいのにな
そしたら
私の初めてのひとは
君に塗り替えられるのに
なんて不毛
なんて執着
なんて憐憫
また泣いてしまいそうですよ
何度私を泣かせる気ですか
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